第3話 にゅー ふれんど

 寂しそうな音で目を覚ました。

いつの間にか寝てしまっていた

ようだ。

 何度も鳴り続けるインターホンの

合間合間に聞いたことのある声が

聞こえてくる―


「のーあちゃーん、いますかー?」

(ふわふわしたこの声…華咲さん

だっ!どうしよう…悪いこと

しちゃったかな…)


 焦りながらガチャガチャと扉の鍵を

開ける。ドアロックをかけたまま扉を

開け、少しできた隙間から覗き、私は

びっくりした。そこに居たのは大量の猫をまとった華咲さんが――。一旦

閉め、再度確認のためドアロックを

外し、今度は扉を大きく開けた。

やはりそこにいたのは華咲さんwith

大量の猫。


「みんなー、着いたから降り

なさーい」


 野良猫達はその言葉に従っている

のか、ぞろぞろと華咲さんの身体から

降りていく。いや、むしろ従って

いた。まるで彼女の家で長い間

飼われていたペットのように。


「き、今日は、ごめんなさい…」

「もー、心配したよー?のあちゃん、

トイレに行ったきり帰ってこないん

だもの。入学式が終わっても

いないし、心配で先生に聞いたら、

のあちゃんから早退連絡が来てるー、

なーんてびっくりしたよー。友達の

私にも言わないんだからっ」

(ツッコミどころがいっぱいあり

過ぎて、どこから言えばいいの

やら…)

「あ、あの、さっきの猫達は…?」

「さっきの子達はねー、私が歩いて

いるとさっきみたいに、なぜか

集まってくるの。登校のときも

大変だよー、特に夏なんかはねー」


 上品に笑いながら彼女は言った。

当たり前のことみたいに言うけれど

スゴい特殊能力…。言われてみれば、

登校してきてすぐ、汗だくだった

ような…。


「のあちゃんはお家で何か

飼ってるのー?」

「い、いえ、別に…?」

「そっかー?おかしいなぁ…ネコの

においがするけど…。気のせいかー」

(多分それは私そのもののにおい

です…)

「そうそう、のあちゃんっ!

のあちゃんがいなくなった時、薄い

煙が出て、床に落ちてたん

だけどっ」


 手に持っていたのは、私の制服…。


「うあっ!あっあのっこれはっ…!」

「大丈夫だよー、白猫に盗まれたん

でしょう?制服の中から出てきてすぐ逃げていったけどねー」


 華咲さんがド天然のおかげで

助かったというか…複雑になったと

いうか…。それよりトイレ行ってて、制服を猫に盗まれる私とか、

華咲さんの中での私ってどう

思われてるのっ!?


「私そろそろ帰るねー?のあちゃんのこともっと色々知りたいっ!また家に来てもいいかな?」

「は、はいっ…!」


 急な質問に思わず返事をして

しまった。でも、私もこの子の

こと色々知りたいかも…。

 椅子に座り一息ついて思い出す。

彼女の口から出てきた『友達』という言葉。新鮮な響きで胸いっぱいの

感情を、そのまま画面の中に

ぶっぱなした。

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