第2話 えんとらんす せれもにー
朝、目覚まし時計の音が鳴り響く。周りにとっては小さすぎる音だから、鳴り響いてもないか。
ネコは耳が良い。小さな音でも反応してしまう。私もネコの特性を持っているため、全ての機器の音量は
最小限に抑えている。
布団から出る気になれない。
だけど、お母さんの応援もあった
せいか、毎日する二度寝をすることもなく、ひょっこりと起きた。
顔を洗い、朝ご飯を済ませる。
いつもならここでゲームをプレイ
するのだが、今日からは制服を着る。これが毎日のルーティーンになる
なんて夢にも思わなかった。
慣れない手つきで制服を身に
まとう。4月だというのに、まだ
冬かというぐらいの寒さ。
道に迷うかと思って、登校時間の
一時間前に出たのだけど…、10分も
かからずに学校に着いてしまった。
教室にただひとり、自分の名前の札が置いてある、右側の一番前の席に
ちょこんと座った。
しばらくして、教室の扉が開いた。
(出た、カワイイ系女子だぁぁっ!
こんな子と目を合わせるなんて、
身体が石化でもするんじゃないか…。この子はパスでいこう…)
そんなことを思いながら顔を
伏せた。
さっきの子の席が気になり、横目で探すが見当たらない。どこに行ったのかと顔を上げる。
「おはよっ」
私の目には視野に入りきらない
ぐらいの大きさでさっきの子の顔が
映っている。
「ひゃっ!」
私は飛び上がり、その反動で椅子
ごと後ろに倒れ込んだ。
「いてて…」
「ごめんなさい!大丈夫?」
ふわふわした言葉と共に手を差し
出してくれた。さっきまで思っていたこととは反対に、友達になりたいと
思った。第一印象はよくしなきゃ…。手をとると同時に、
「あっ…ありがとう…ございますっ」
「そんなに堅くならないでよー」
彼女は手を引きつつそう言った、
笑いながら。
(やってしまった…第一印象最悪
だぁ…。今まで、ろくに他人と話してなかったんだから、そりゃそうなる
よぉ…)
私は立ち上がり、彼女は微笑み
ながら言う。
「可愛いねーそういうの好き
だよー?」
今までの私にとって思いがけない、
天使のような一言だった。これが私と彼女との出会い。いつの間にか他の
生徒達もぽつぽつと席についていた。
「私、
あなたはー?」
「私の名前は…白神乃彩…ですっ…」
「のあちゃんかぁ、これから仲良く
しよーねっ」
(顔、近い近いっ…!こんなに
近寄られたら…私…っ!)
私は感情を抑えきれなくなった。
そこから何時間か記憶がない。
私が目を覚ました時には、家の天井が目に映っていた。
やってしまった。そう、猫化して
しまったのだ。入学式という一大
イベントを逃した後悔と共に、どこかなんとなく恥ずかしい気持ちで、
今日という日が夏かと思うほど暑く
感じた。
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