8. サンタもカフェにやってくる

「高木くん、天井、お願いね〜? アタシや佳奈ちゃんじゃ届かないの〜」

「はい〜! 了解です〜」

「佳奈ちゃんケーキの方はどうなってる〜?」

「もうちょっとで焼けま〜す」

「オッケ〜。よし、と。これでおおよそ準備完了かな」

 今日はクリスマスである。誰が決めたかクリスマス。お店も綺麗に飾りつけて、実におめでたい気分。あたしは、11月も半ばからクリスマスっぽい街並みが嫌いだ。こういうものは、花火のように一瞬だけ華やぐから価値があるのだ。お誕生日会を1週間もやるかっ。七夕が1ヶ月もあるかっ。ひな祭りが毎日続いたら嬉しいかっ(ひなあられは紅茶に意外と合うけど)。そういうわけで、ナップタイムのクリスマスは2日間だけと決めている。イヴの朝にオーナメントを飾って、クリスマスの夜か、翌日の朝には外してしまう。それでこそクリスマスのありがたみがあろうというもの。

 だからこそ、品揃えも多少大盤振る舞いにできる。クリスマス2日間は、佳奈ちゃんが腕によりをかけた特製クリスマスケーキが用意されている。傑作だ。たぶん丸ごとサイズで出されても、残さず食べちゃうかもしれない。しかも、今日だけは客のテーブルで切るのだ。2分の1サイズまで自由にサイズを決められてお値段据え置き。最大サイズで切ると多少採算的にはキビシイのだが、まあクリスマスだからいい。紅茶ももちろん普段とは違うのが用意されている。あたしが手ずからブレンドした、その名も“サンタクロース”が出荷されるのはこの2日間だけだ。ナップタイムのブレンドレシピのうちでもトップシークレットにあたるこいつは、木くんにさえ美味いと言わせる代物だ。かなり高価な葉っぱも使うのだが、クリスマスだから、いいの。この2日間はお祭りである。

  あたしたちはそれぞれクリスマスっぽい格好でバシっと決めている。佳奈ちゃんはかわいい白のセーターにベージュのズボンを合わせており、グリーンのベルトをアクセントにしている。エプロンもクリスマスカラーのものを用意してきており、実に佳奈ちゃんらしい。対照的にあたしは赤いシャツに赤いスカートで、グリーンっぽいエプロン。高木くんはグリーンのスーツに赤の蝶ネクタイで、まるでホテルマンのようだ。木くんの掃除までもがクリスマス。雑巾は紅と緑の綺麗な特別製だし、モップだってリボンで美しく飾られている。もちろん、床は磨きに磨いて美しくなっているのである。これだって、連日続いたら嫌になるに決まっている。2日間だからこそ、木くんの執拗なぞうきんがけに鷹揚な気分でいられるのだ。嗚呼、偉大なるかなクリスマス。キリストが偉いかどうかはともかく、クリスマスを発明した奴はノーベル賞ものだ。偉いっ。あたしの特製ブレンドをご馳走してやるから、うちの店に名乗り出なさい。

 店も朝から繁盛だ。なんといってもみんな家でじっとしている気分ではない。常連はもちろん、カップルだの夫婦だのが入れ替わりどんどんやってくる。こんなに人が多いとちと落ちついて飲めないのが残念と言えば残念だが、まあそれもクリスマスだから仕方ない。普段は午後9時で閉めるのだが、今日は11時までやる。暗くなってくれば、客足も減ってちょっと落ちつくだろう。照明も少し落としてムーディにやるつもりだ。


 ところが、午後を少しまわって、これからお茶の時間に入ろうかという頃。オーブンの前でだくだく汗をかきながらケーキを作っていた佳奈ちゃんが、次の粉を混ぜようとした時のことだ。

「弘美さん弘美さん、ちょっと粉とってくれます?」

「あ、はいはい」

あたしはキッチンの棚をのぞき込み、小首をかしげた。

「あら。こっちのは棚のがもう無いわ。佳奈ちゃん、そっちのの開き戸の中からとってくれる?」

「えっ? こっちにはもうないですよ?」

「は?」

一瞬、あたしと佳奈ちゃんは顔を見合わせた。奇妙な沈黙……フロアの方で有線放送の“きよしこの夜”のコーラスが流れているのが聞こえる。Silent night……Silent night……

「……」

「……」

「……だって、だってよ? あたし、こないだ、こっちの棚のを使うようにして、開き戸の方は予備にしよう、って言ったじゃない? だから、当然こっちの棚のがなくなったらそっちの開き戸に予備が残ってるはずよね?」

「……先週、そっちの棚のがなくなった時に『やっぱりいちいち棚に移すのはめんどうくさいから、開き戸から直接使って。新しいのは注文しとくから』って言ってませんでしたっけ」

「……」

「……」

「……ははは」

「あはは」

「あっはっは」

「ははははは……」

あたしたちは黙り込んだ。トマトの形をしたキッチンタイマーがカチカチ言うのが、うつろに聞こえた。静かに、あきらめたように佳奈ちゃんが言った。

「弘美さん……注文してないんですね?」

「い、今やりますっ」

あたしは脱兎のように裏口へ走った。仕入先に電話をかける。そこは食料品の卸しを手広くやってる会社で、あたしのOL時代のちょっとしたコネで紹介してもらったトコだ。電話口で担当者の橋口さんを呼び出すとすぐに出てきた。

「電話変わりました、橋口です」

「あ、ナップタイムの須藤ですけど」

「はい、どうもお世話になってます。どうしました?」

「うちのケーキで使ってる粉ですけど、ちょっと足りなくなりそうなんですよ」

「え? こないだの電話では、年内は大丈夫そうだって言ってませんでしたっけ」

「そ、そうでしたっけ?」

あたしは3日前の何も知らないあたしを呪った。このたわけっ。うつけ者っ。無知っ。棒っ。ナスっ。あたしはそらとぼけた。

「い、いやそのそれがなんと申しましょうか……あ、そ、そう、クリスマスのスペシャルケーキがあんまり好評で、粉がもうほとんど残ってないんですよ。在庫あったら、急いで持ってきていただけます?」

「う〜ん……」

橋口さんはうなった。この人のクセだ。マズイことがあると2秒くらい黙り込む。考え考え、口を開いた。

「あるかなァ。なにせ年末であまりたくさんは在庫を残してないし……ちょっと倉庫をあたってみます。あったらすぐ届けさせますよ。ありったけ。」

「よろしくお願いします。お手数ですけど……」

「はい、じゃまた後で」

チリン、と小気味いい音を立てて受話器を置くと、あたしはキッチンに戻った。高木くんも話を聞いたのか、心配顔だ。

「どうでした?」

「在庫あったら持ってきてくれるって」

佳奈ちゃんが粉を混ぜながら、聞いた。

「もしも来なかったら、どーしますぅ?」

「……きっと来るわよ」

「もしも来なかったら、どーしますぅ?」

「……た、たぶん来ると思います」

「もしも来なかったら、どーしますぅ?」

「……何もかもクリスマスが悪いのよっ」

あたしの一言に、佳奈ちゃんと高木くんがハモでツッこんだ。

「クリスマスは無罪、弘美さんは有罪っ!!」

「す、すみません」



 心なしか、今日はケーキのオーダーが異常に多いような気がする。常日頃の佳奈ちゃんのケーキへの期待感がクリスマスで加速されているのだろうか。一つオーダーが来るたびに、あたしは身を切るような思いでケーキを切った。みんなが笑顔であたしを困らせようとしてるような気もする……。

 2時間もすると粉の残りも心もとなくなってきて、あたしたちはキッチンで緊急会議を開いた。ケーキはストップにするか、それともどこかで出来合いのケーキを買ってくるかだ。

「よそのケーキを売るってのはマズイんじゃないですか? だってやっぱりうちのオリジナルを食べに来てくれるわけじゃないですか。それこそ赤字になっちゃいますし」

と木くん。佳奈ちゃんがそれに異を唱える。

「でもでもぉ。ケーキがないクリスマスなんて、お盆のないお正月みたいなもんですよぅ。ね、弘美さん」

言ってることは明白に間違っているが、言いたいことはよくわかる。

「やっぱりクリスマスのカフェでケーキを食べるってのは、一種の様式美よねぇ」

「そうですよ。お盆のないお正月なんて意味ないですよぅ」

佳奈ちゃんはブンブン腕を振りながら力説する。うー。どうすべえか。あたしが決めかねていると、裏口からチャイムの音が鳴った。小麦粉の補給部隊だ! 我らが橋口さんはやってくれたのだ。

「来たわ!」

「来ましたね」

「あーあ。来ちゃいましたね」

「……佳奈ちゃん、楽しんでない?」

あたしたちは元気を取り戻し、勢いよく動き始めた。

「佳奈ちゃん、そっちのオーブン見ててくれる? 今ちょうどタルト・フランボワーズ突っ込んだとこだから」

「はぁい」

「高木くんは、お茶を入れて、裏口に持ってきて。配達の人に出してあげたいから」

「1人ですかね?」

「たぶん。多かったらまた追加する」

口早に高木くんに言いおくと、あたしは裏口に小走りに急いだ。裏口に手を伸ばした時、控えめにもう一度ベルが鳴った。

「はぁい、今開けます」

あたしは急いでドアを開けた。そこに立っていたのは……見事なまでに、サンタクロースだった。


 びっくりして凍っているあたしをよそに、サンタクロースは玄関の前でニコニコと100万ドルの笑顔をきらめかせた。

「Merry Christmas!」

サンタクロースは肩にかついだ袋をどっしりと床に置いて、にっこりと笑って言った。

「小麦粉を持ってきました」

あたしはようやく事態を理解した。配達の人が今日だけこういう格好で回っているんだ。

「ごくろうさま〜、とりあえず中に入ってくださいな。その格好で配達じゃ、大変でしょう」

「いやいや、子供たちが喜ぶならね。それにあなたとおそろいだ」

そういえばあたしのドレスも赤いので、サンタとおそろいのように見える。ニコニコしながら、サンタは袋をかついで、裏口の中にまで運び込んでくれた。大きな袋に4つ、5つくらいある。これだけあれば、しばらくもつだろう。

「高木くーん? まだ?」

「はいはい、今……行きます」

高木くんがひょっこり顔を出した。手には紅茶セットのトレイを持っている。

「お一人でよろしかったです?」

「グー。あ、粉の袋、持って行ってくれる?」

高木くんは粉をかついでよろよろと引っ込んだ。ちょっとは鍛えなさい。

「お時間さえよろしかったら、一杯いかがです?」

「お……助かります。寒いですねえ」

サンタは玄関先に腰を下ろして、手袋を外すと紅茶を飲んだ。初めて気付いたのだが、外国の人だ。ヒゲもつけヒゲじゃなくて、本物の白いヒゲ。これほどサンタらしいサンタを初めて見た。

「これはずいぶんおいしいお茶ですね」

「クリスマスのスペシャルなんですよ。このブレンド、あたしが作ったんです。」

サンタは目を細めておいしそうに紅茶を飲んでいる。よく見ると結構なお年寄りである。この寒い中、配達の仕事は大変に違いない。目が合うと、サンタはニコニコと笑顔でたずねた。

「どうです。クリスマスを楽しんでますか?」

「ええ、そりゃもう。ケーキも粉が足りなくなるほど大繁盛で、お店に来る人も楽しそうですし」

「それはよかった」

「でも、雪が降ってくれるといいんですけどね、せっかくのクリスマスだし。でも東京じゃ、なかなかねぇ」

「いや、今日は雪になりますよ」

「ほんとに?」

「さっき雲の上を通った時ね、ヒゲが凍りました。ヒゲが凍る時は、きっと雪が降るんです」

そんな冗談を言いながら、おじさんは寒さでパリパリいう白ヒゲをこすりながら、ふぉふぉと笑った。あたしも笑った。

「あ、でも、雪が降ったら配達が大変ですね」

「いえいえ。うちの国はもっと寒いですから、寒さには慣れてますよ。それに……」

「それに?」

「ソリは雪の方が調子がいいんです このへんは雪が少なくてかえって苦労します」

サンタはまた愉快そうに笑った。あたしはこのおじさんが気に入った。

「ちょっと待っててください」

紅茶を飲むサンタにそう告げ、キッチンで“サンタクロース”ブレンドの小さな缶をとって戻る。

「これ、クリスマスのプレゼントに」

「いや、お気遣いなく。サンタがプレゼントをもらったなんて噂が広まったら、世間体が……」

“世間体”なんて単語をよく知ってるもんだ。外国にも世間体なんて概念があるんだろうか?

「その紅茶のブレンド、“サンタクロース”って名前なんですよ。だから、持ってってくださいな」

「おお、ワタシの名前がついているわけですね」

「幸せを配るお茶ってわけですよ」

サンタは嬉しそうに缶を受け取った。

「まだ配達があるんですか?」

「はい。今晩はこれから世界中の子供たちにたくさん届けます」

冗談とも本気ともつかない笑顔でサンタはそう言った。もしかしたら、おもちゃの配達でもあるのかもしれない。紅茶を飲み終わってしまうと、サンタはよっこらしょとたち上がった。紅茶の缶を振りながら、またにっこりと笑った。

「素敵なプレゼントをどうもありがとう。MerryChristmas。また来年」

「メリークリスマス。ご苦労さま」

あたしはサンタを笑顔で見送って、ドアを閉めた。さ、キッチンに戻って佳奈ちゃんを手伝わなくちゃ。あたしがそう思った時、裏口のそばの電話が鳴った。電話の主はやっぱり橋口さんだった。

「どうも。あの、粉なんですが、やっぱりどこの倉庫も都合がつけられなくて……地方から回してもらえるかどうか手配してるんですが、どう急いでも26日……つまり明後日くらいになっちゃいそうな……」

あたしは、目が点になった。連絡ミス?

「だって、今届けてもらいましたよ?」

「え? そんなはずはないですよ?」

「だって今、サンタの格好した……」

「え、ちょっと待ってくださいよ。それは何か別の……だってうちの配達員がそんな格好してるわけないじゃないですか」

……そりゃ、セイロンである。あたしだって最初はそう思ったのだ。それによく考えてみれば、その日だけ外国人の老人を都合良く雇えるはずもない。電話口で橋口さんが何か言っているのが聞こえた。

「……とにかく、じゃ、粉は手に入ったんですか?」

「え? あ、ええ、とにかく粉はあるみたい」

あたしは電話を握ったまま、さっきの袋のひとつの口を開けてのぞきこんだ。やっぱり間違いない。ちゃんとした粉だ。

「ええと、どうもごめんなさい。なんか……その、混乱しちゃって」

えへへと笑いながら、あたしはなんとかとりつくろった。橋口さんは電話口で笑った。

「まー、この時期はどこも忙しいですからね。うちもしっちゃかめっちゃかですよ。何がなんだか……」

「忙しいのに手間かけて、ごめんなさいね」

「いえ、うちもそろそろ仕事納めです。ようやく落ちついてきましたよ。……それじゃ、また」

あたしたちは電話を切った。あたしは首をかしげたまま、ちょっと裏口を開けて確認した。さっきのサンタは跡形もなくいない。そりゃそうだ。

 橋口さんが届けたのじゃないとすると、あれは誰だったんだろう? 全然知らない人? もしかして後で法外な値段を要求されるとか……しかし彼の素性がなんであるにせよ、あの笑顔に悪気があるとは思えない。ただのコスプレ好き? しかし、偶然にしてはタイミングがよすぎる。うちが粉不足だと知っていなければあんなタイミングで来れたはずはない。それどころか、橋口さんに頼んだ後でなかったら、いくらあたしだって疑っただろう。

 あたしはなんとも複雑な表情をしたまま、キッチンに戻った。

「あっ、弘美さん!」

キッチンに入るなり、佳奈ちゃんが目をきらきらさせてこっちを見た。

「どうもありがとうございます!」

「え?」

「プレゼントですよ、プレゼント。これ、ずっとずっと欲しかったんですよ、ミツユビオニトカゲの写真集。どうしてこれが欲しいって分かったんですか〜? 誰にも言ってなかったのに」

「え? え?」

ミ、ミツユビ……な、何? あたしは目を白黒させた。佳奈ちゃんは不思議そうに聞き返した。

「だってこれ、弘美さんが入れたんでしょ? 粉の袋に一緒に入ってましたよ。To KANAってカードもついてたし」

 佳奈ちゃんは言いたいことだけ言うと、上機嫌にケーキの粉を混ぜ始めた。あたしは佳奈ちゃんと粉の袋を交互に見比べた。粉……袋……サンタのおじさん……サンタ? プレゼント?

 あたしは袋に近付くと、中をのぞきこんでみた。小さな長靴が入っている。取り出して振ってみると、コトコトと音がした。小さなカードがつけてあって……To HIROMIとだけ書かれている。あたしの? 手のひらの上で長靴を逆さに振ってみると、古ぼけた鍵が落ちてきた。どこかで見覚えがあるような……そうだ、昔、持っていた鍵にそっくり。宝物だったのにどこかにいっちゃって、どうしても見つからなくて……これがここにあるはずはない。だってあれを無くしたのは子供の頃で……あのおじさんがホンモノだったならともか……。

「まさか……いやでももしかすると……しかし……」

考え込むあたしに、佳奈ちゃんが無邪気に声をかけた。

「弘美さん、弘美さんってば。写真集のお礼に、今度プレゼント持ってきますね」

「そ、それは……それはあたしじゃないわよ。……うん、きっと、サンタクロースね」

「またまたまたぁ。弘美さんったらトボけちゃって。サンタさんがミツユビオニトカゲなんて知ってるわけないじゃないですかぁ」

あたしだって知らないわよっ。その時樫山さんがキッチンに顔を出した。

「こんちわー。来たわよー」

「あ、樫山さんだぁ」

「いやー降ってきたわよ。外。積もるわねこりゃ」

「え〜! 雪ですか!?」

「予報では降らないって話だったのにねぇ。」

窓の外を見ると、たしかに白いものがこんこんと舞っていた。この調子なら、明日までには積もるかもしれない。

「ホントだ。道理で、サンタのヒゲも凍るわね」

「もー。弘美さん、さっきからサンタサンタって、信じてるんですかぁ?」

「うーん……そうねぇ。今日くらいは信じてもいい気分かな。だってあたし、サンタにプレゼントあげたもん」

「え〜〜なになに? なんですかそれ。ホントにあげたんですか? 何をあげたんですか?」

「サンタの世間体に関わるから、それは秘密♪」

「え〜。ズルイズルイズルイ〜」

「ズルイズルイズルイ〜」

「樫山さんまでやらないでよ……」

その時、高木くんがフロアから戻ってきた。

「弘美さん、セット二つ追加です……わ、樫山さんいらしてたんですか?」

「あたし? さっき高木くんの目の前通ったじゃないの」

「そうでしたっけ? ちっとも気付きませんでした」

「高木くん、高木くん、弘美さんったら、プレゼントのことトボけてばっかりなのよぅ。サンタのプレゼントだなんて言ってさ〜」

佳奈ちゃんがふくれっつらでスネる。

「照れてるんだから、そっとしておいた方がいいんじゃないの?」

「別に照れてなんかないわよ……そういえば、高木くんは何をもらったの?」

「またまたまた。自分で送ったくせにぃ」

佳奈ちゃんがふくれる。ホントにあたしじゃないんだけどなぁ。

「おかげで、すごくはかどりますよ。ますますやる気が出ました」

「な、なに? 何なの?」

「掃除用具一式」

「……それは絶対あたしじゃない」

サンタさん……どうしてそういう余計な真似を……。



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