第6話本当の姿
長い廊下から階段を下り一階まで来ると、小さな物置部屋に入って行きました。
「もう自由に歩き回れる頃だろう。自分の足で歩け。」
近衛兵たちはショメルを立たせました。その部屋にはなぜか大きな本棚があり、兵士たちはなんとか二人がかりでその本棚をズラしていきます。すると地下へ続く階段があるではありませんか。ショメルは前後を近衛兵に囲まれながら、階段を下りていきました。
階段を下りきったところに、ひどく重たげな鉄の扉がありました。近衛兵はその扉をうなりながらなんとか開けたのでした。
扉の向こうは地下とは思えない明るさでした。そして城全体よりも広いと思われるスペースで、ずいぶん高い所から眺めない限りどのくらい広さなのか分からないほどでした。ですがそれ以上に目につく事は人の多さです。人以外の夢の国の住人もいますが、それは少数でした。
皆回転するローラ付きの台に向かい合って座り、その台が続いていくだけ、びっしりと肩を狭めて座っていました。ローラの上に何か物が流れて来ます。座っていた人々は物が自分の前に来ると何らかの作業をする、その繰り返しの様です。まるで精巧な機械の部品になったかのようです。
近衛兵はショメルの表情を見て楽しそうにした後
「お前に言っても分からないかもしれないが、ここは工場という所だ。夢の国の住人たちが必要としている物を作っている。お前も驚いただろうが、皆あのローラの付いた、ベルトコンベアーと言う台について仕事をする。一人一人がするのは簡単な作業だ。お前もさっそくやってもらうぞ。」
ベルトコンベアーは一つ一つが、どこまで続いているのか分からないのですが工場内に十本はあるようです。それぞれ違う仕事をしているのでしょう。皆あくせく働いています。ただ少し気になったのは人間ばかりが仕事をし、人形やトランプやミニカーといった元より夢の世界にいた者は、ただ眺めているだけに見えたことでした。
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