No.4


そんなときに見たのは職場の人とのSNSのやり取りでした。

あなたがいじっていた携帯をたまたまひょいと覗いただけだったのです。

たったそれだけだったのですが、私の不安を煽るには充分すぎるくらいでした。

結婚しよう。好き。

そんな言葉を冗談ぽく言い換えた相手からの文字が連なっていました。

彼女にあなたが告白されたことは知っていたので、尚更でした。

業務連絡ではない内容を個人的に連絡を取っていること、彼もはっきりしない返事(さすがに告白はハッキリ断ったそうですが、あまり事を荒立てたくないがために普段のやり取りでは受け流していたそうです。)に私は打ちのめされました。

彼女は(年齢的な意味で)大人で彼と対等に付き合えて、可愛くて、長い時間彼と一緒にいて、私の知らない彼を知っている。

そのことに、気が狂うほど嫉妬と劣等感を感じてしまいました。

私はそれほどあなたに依存してしまっていたのかも知れませんね。

本当にたくさんたくさん迷惑をかけました。ごめんなさい。


ただ、あなたがたくさんの幸せを教えてくれました。

どんな私も受け入れてくれて愛してくれる人がいること、頑張りは誰かが必ず見てくれいてること、そしてつらくなって助けを求めれば助けてくれる人がいること、当たり前だけれど私にとって当たり前でなかった、私が心から求めていたものをあなたは与えてくれました。

私はあなたに何を与えられたでしょうか。

そんな偉そうなことはいえませんね。

私はあなたへの愛をどう表現すればいいのか分かりませんでした。

精一杯あなたへ伝えてるつもりでしたが、時々私の力不足で不安にさせてしまいましたね。

そんな私の不器用な愛情表現をあなたはなるべく汲み取ってくれて、ありがとうと言ってくれましたね。

あなたを少しでも愛せたのなら、あなたが少しでも愛や幸せを感じられたのならこれ以上嬉しいことはありません。

あなたは人には言わずひとりで無理をすることが多々あります。

ボロボロになりながら笑っている、弱音を吐かない、そんなあなたがいつも心配でした。

それでも月日が経つうちに、本音を話してくれるようになり、私はあなたの役に立てているような気がして嬉しかったのです。

不思議なもので、あなたに出会って今まで無色透明いえ、黒にも近かった私の世界は変わりました。

詩的に言うと無限に色が広がる鮮明な、美しい世界に変わりました。

あなたと過ごす時間はどんなものでも幸せで、ときにはぶつかることもありましたが、それさえも私にとっては幸せのひとつでした。

今までの人生で、人と自身の弱いところを晒して本音でぶつかるということが無かったからです。

私にとってあなたが今まで経験したことでさえも、あなたが初めてでした。

私には、あなたしかいなかったのです。


ただ、そんな幸せな時間の中でひとつだけ悲しかったことがあります。

ですが残念ながら、その事実を、現実を今私のどんな力を持っても覆すことはできません。

いえ、気持ちでは誰かを葬り去るという方法を選んだとしても、どんな方法を使っても覆したいのです。

しかし、あなたの気持ちはどうでしょうか。

周りの人はどうなるでしょうか。

そんな理性が、私を自分勝手な悪人という道を歩むことを踏みとどまる手助けをしてくれています。

私はあなたの世界を壊したい訳ではありません。

これもエゴで自己満足だとは重々承知していますが、私にとってあなたが幸せであることが第一なのです。

私にとっての幸せです。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る