第6話杖の効力
ハンスはカエルをつまむと虫とりカゴに入れ、もう何も言わずただ黙っているだけの来賓客に言いました。
「あともう一人話しをしたい者がおる。それはゲルムだ。そこの席に座れ。」
と言ったのでした。すっかり青ざめてキョロキョロとトンボでも目で追っている時のような視線をするゲルムは、ゆっくりとした足取りでやって来て、言われた席に座ります。
ゲルムはハンスの国の大商人です。多数の王族や貴族と太いパイプを持ち、外国からの商品の輸入において大きな財を築いているのでした。
「ゲルム、お主には実にたくさんの苦情が舞い込んできている。ずいぶんと国中で粗悪品を高値で売りつけているらしいではないか。」
怯えたゲルムは
「それは、その……。」
と言うのが精一杯です。
「お主のやっている事にはもう目をつむってはおれぬ。牢獄へ行くが良かろう。だがその前にお主に訊いておこう。粗悪品を高値で売りつけてきたな。」
こうでもしないとゲルムは国中の貴族と関係を持っているので、彼らを後ろ楯に、いかようにでも言い逃れしてしまいます。
「あ、あの、陛下、それはですね。私はこの国の発展に貢献して……。」
「どうなんだ、ゲルム。」
ハンスはここぞとばかり厳しい声で言います。うつ向いたままゲルムは
「は、はい。その通りでございます。」
と言うのでした。
「さようか。連れて行け。」
ゲルムはすぐに両脇を兵士に抱えられ、食堂から連れられて行きました。
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