第3話ハンスの企み
アンソニーが帰った後、ハンスは杖をどう使うべきか悩んでいました。出来るだけ分かりやすい形で力を示さねばな。
玉座に座り足を組んだハンスは、両手をパンパンと打ちならして大臣を呼びます。昼下がり、遅れて食事中だったのか、口に食べ物を詰め込んだまま大臣はやって来ました。ハンスの前まで来て一瞬ギロリと睨んだ様な仕草をして、たっぷり三十秒は咀嚼した後、言います。
「お呼びでしょうか、陛下。」
どこまでもノロマな男だ、ハンスはそう思いながらも
「嘘をついた者をカエルに変える杖を手に入れた。この杖の恐ろしさを国民に知らしめてやりたい。最も効果的な方法を考えよ。」
と少し低い声で言いました。大臣は嫌らしくにやつきながら
「それでしたら簡単な事であります。これからは嘘をついた者は罰すると布告を出すのです。そして一ヶ月ほど経ったら会食と称して国中の有力者を城に呼び、陛下、自ら質問をしていってはいかがでしょう。嘘をつく者がいればカエルになる。有力者がカエルにされれば国民も杖の力を恐れるでありましょう。」
ハンスはなるほどなと手を叩くと
「それでどんな質問をすれば良い。」
と言いました。
「密偵を放ってはいかがですか。有利な質問が出来ることでしょう。」
ハンスはそのような事は良くない事ではと思いました。しかし国の為にやる、いたしかたのない事だととも思いました。ハンスはいくぶん迷っていたようですが
「よし、そのように手配いたせ。」
と言ったのでした。
大臣が用意した密偵は優秀なもので報告は頻繁に入って来ました。どれも有利に使えそうなものばかりです。
その中でハンスは誰を食事会に呼ぼうか考えていました。窓辺に立ち、食事会まであと何日かを数えるハンスは、じっと嘘つきの杖を眺めていました。当然のことながら嘘つきの杖は何も語りませんでしたが、手の中のひんやりとした感触とまっすぐな木目が声にならない言葉で語りかけてきそうでした。
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