第4話結婚のアイデア

翌日の昼の十二時、あの草原の約束の場所でモグラを待っていました。その日はなぜだか、少し太陽の光がきついような気がして、麦わら帽子の様なつばのある帽子でも被っていたい気がします。時間を多少過ぎた頃、モグラが今日も土の中から現れます。

「やあ、こんにちは。モグラさん。」

「ええ、こんにちは。少し遅れてしまいました。ごめんなさい。」

老人は昨日と同じようにモグラを捕まえて、手で包むようにして持つと言いました。

「モグラさん、私はあれから宿に泊まったのですが、そこで聞きましてね。なんとここから、少し行ったところに魔女が住んでいるらしいんです。」

モグラはキョトンとして言います。

「魔女ってなんですか。」

「魔法という不思議な力を使う女性です。どんな事でもたちどころに可能にしてしまうのが魔法なんです。」

モグラは目をキラキラさせて老人の瞳を覗き込みながら、言葉を待っているようでした。

「それでね、はっきり言ってしまうとこのままじゃ、モグラさんのお嫁さんになってくれる人間の女性を探すのは、とても難しいと思うんです。ですから人間ではなくてモグラのお嫁さんを見つけるのはどうですか。」

モグラはなあんだと、つまらなさそうな顔をしながら言いました。

「僕は人間の女性と結婚したいんです。そりゃ僕にだって結婚してくれると言ってくれるモグラの女の子はいますよ。でもそれじゃあ駄目なんです。」

「まあまあ、落ち着いてください、モグラさん。大事な事はここからですよ。モグラの女の子をお嫁さんにもらったら、魔女に頼むんです。その子を彼女自身が望む時は一時的に人間の女性に変身できるようにして下さいって。もちろんモグラの女の子がそういう魔法をかけることに納得してくれたらですけどね。」

老人は正直に言ってこんな酷いアイデアしか出せない自分に、少し自己嫌悪していたのですが、モグラは頭を二、三度掻きながら

「なるほど、確かにそれは妙案かもしれません。それじゃあ僕は地中に戻って女の子を連れて来ます。」

とずいぶんあっさり決めてしまいます。

「ただ、そういう事ですと少し時間を下さい。彼女たちを探し出して来ないといけませんので。また明日待ち合わせという事でお願いします。」

老人は少し残りの時間の事も気になりましたが

「それで大丈夫です。今日と同じ時間に会いましょう。」

と言いました。

老人は宿に戻って、ベッドに寝そべりながら天井を見ていました。なんと言ってもこの世界は老人が作り出したものです。簡単な世界観と、モグラの嫁探しというストーリーの始まりだけ作って、この世界に飛び込んで来たのです。

そのような事をとても楽しんでいる自分というのは、恵まれていると同時に、やはりなぜだか少し罪深く感じるのでした。こんな事を考える日は現実を思い、やるせなくなります。まだ時計の針は夕方を刻んでいましたが、さっさと寝てしまう事にしました。

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