第6話戦いの前
その山まで行くのにだいたい半日は必要でしたが、その日は風が乾いていて空は高く澄み渡り、その先に引き伸ばされた、色の薄れた世界が広がっていそうだとブロングスは思いました。
戦闘に長けた悪魔は元来無口な者が多い事もあり、おしゃべりな一行とはなりませんでしたが、皆慣れているので特に気まずくなる事もありません。
最初、草花の枯れかけた草原を、子供の猫くいたずらの絵の様な色彩の悪さだと含み笑いをしながら歩き続け、その後ほとんど流れのない川を朽ち果てた橋を横目にして渡って行きました。それから先も、どこか無機質な感じのする平原をずっと歩いて行きます。そうしてすっかり深夜になった頃、無言のまま目的の山に到着しました。
クスノキやら何やらの木々が揺れる音に、深夜の不気味さも相まって悪魔にとっては本領が発揮出来そうです。しかしブロングスは山に入って少しのところで
「今日はここまでとする。それぞれ警戒を怠らず、夜を明かせ。漆黒の闇で奴に襲われる事がないよう、一人ずつ交代で見張るのを忘れるな。」
と言ったのでした。この日ブロングスは何不自由なく、朝をむかえたのですが、この程度では誰一人疲れている者はいなさそうでした。さてまだ山に入ったばかりのところ、さっそく登っていくのかと思いきやブロングスは
「ここで待つ。」
とだけ一言いました。いくら大きな蛇と言えど山のどこにいるかなんて分かりませんから一人が
「陛下、探しに行かれないんでしょうか。」
と訊きました。ブロングスは肩をすくめた後
「必要ない。奴はじきに現れる。」
と言って臭う三人の方をちらっと見たのです。
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