第5話討伐隊

ブロングスは木陰で元の姿に戻ると門のところまで帰り、残っていた調査隊の者に

「腕に自信のある者を集めよ。狩りに行く。悪魔の実力を存分に見せてやりたい。この際、身分は問わぬ。」

と伝えて、やはり訓練されているのか、ものの十分もしないうちに三十名の悪魔がブロングスの元へ馳せ参じたのでした。

ブロングスは一人一人をじっくりとにらむ様に見つめますが、数人程度は臭う者たち、つまり最下層の身分の者たちでした。しかしその様な事など今は気にせず、ブロングスは皆の前へ歩み出て、いつもより低い声で言いました。

「余はこの国の老婆に問うた。この国における幸せの秘訣は何であろうかと。答えるにそれは不必要なものは持たぬ事であるという。だが実態はどうであるか。この貧しさを見ても明らかなように持たぬのではなく、持てぬのだ。」

誰一人ブロングスの目から、視線をそらす事なく、瞬き一つしません。

「では持てぬ理由は何だ。それはあの山に住む黒き大蛇に生け贄を取られ続けているからだと言う。」

そこまで言ってブロングスはニヤリと笑います。

「さて悪魔にとっての最高の喜びは、幸せの絶頂にいる者を絶望へと突き落とす事なのは言うまでもない。しかるに余はその大蛇を倒し、まずこの国の者に本当の幸せを教えてやる事にしたのだ。」

皆の者は黙ってブロングスの言葉に頷いていたのでした。ブロングスは、腕利きを三十人も狩りの部隊として引き連れて行く必要はないと考えていました。奴等さえいれば、いか様にでも勝てよう。

ブロングスは大幅に人数を減らす事にして、専ら自らを護衛する用に、最も腕のたつ者たちを四名と、臭いのする者を三名連れて討伐に出掛けて行ったのです。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る