アニキの説教

なぁ坊っちゃん。

こんなとき、ただ聞いてるだけじゃダメなんだぜ。

「早く過ぎ去らないかなー」なんて思いながら聞き流したらダメだ。

“なんで俺がわざわざこんなことを言ってるのか”ってことを考えながら聞けよ。

言わなくてそれで済むことなら俺だって言わねぇんだ。


俺が今言ってるのは「それはやめとけ」ってことだ。

理由は簡単なんだぜ。

「お前の身が危険だから」だ。

坊っちゃん、まだ女とキスもしたことねぇのに死にたくはねぇだろ。

そんなんじゃあ“人生”ってもんを味わったことにはならねぇよ。


お前に考えてもらいたいのは“なんで俺がわざわざこんなことを言ってるのか”ってことだ。

答えは二つある。

一つでもいいからわかるか?


「お前だって死にてぇわけじゃねぇだろうと思うから」。

これが一つだ。

俺の親切心ってことだな。

実際のところ、かまわねぇんだぜ。

お前が死んだところで俺は困らねぇし悲しくもねぇんだ。

なのに、俺はお前のことを勝手に“思いやって”言ってやってるんだ。

そのことに気づいたら、お前だって少しは感謝するぐらいのもんじゃねぇかと思うんだけどな。

ありがたいとも思わねぇってんなら、どうぞ勝手にしたらいいよ。


「お前にここで死なれると困るから」

これがもう一つだ。

坊っちゃん、俺にも仕事や生活ってもんがあるんだ。

お前にここで死なれてみろ、俺の仕事は台無しだろうが。

お前がどうなろうとかまわねぇが、これは俺のために言ってんだ。

俺を困らせたくてやってるのか?

ただ何も知らなかっただけなんじゃねぇかって俺は思ってるんだけどな。

お前だって俺のことを少しは“思いやって”くれるんじゃねぇかと思ってるんだぜ。

だけど「知ったこっちゃねぇ」ってこともあるよな。

そしたら俺にだって手がないわけじゃねぇんだぜ。

そんなときの準備ぐらいはしてあるんだ。

そのときにはお互いに厄介なことになるってことぐらいは知っといたほうがいいぜ。


さぁ坊っちゃん、わかってくれたかい?

お前には頭も心もあるって俺は思ってるんだけどな。

賢くて優しい子なら、こんなときわかってくれるもんだ。

それでもまだどうしても「やる」ってんなら坊っちゃん、方法は二つだぜ。

俺を説得するか、張り倒すか。

“今のままで俺がわかってくれる”なんてことを期待しちゃいけねぇよ。

そんなふうだったらどうやって“世の中のバランス”ってもんがとれるんだい?

お互いに“思いやって”いこうや。

ここはお前のもんじゃねぇし、俺のもんでもねぇんだぜ。

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