「これはもっと大きな何かの始まりに違いないよ」

クラレンス・クレモンズは、彼の最後になったツアーの最終公演の帰りの飛行機の中でこう言った。

「これはもっと大きな何かの始まりに違いないよ」。



生命は、いつもその想いを胸に抱いている。

我々は、生きることに懸命に取り組んでいて、人生の終盤に差し掛かってみても、終わりは見えそうにない。

あれほどのことを成し遂げたブルース・スプリングスティーンとクラレンス・クレモンズのコンビにしてもそうだ。


そうして、刹那の夢のようだった人生を振り返りながら、それでもまだ始まりに過ぎないと感じる。

数億年の生命の連なりを経て、なお、始まりに過ぎないと。



現代日本の若者たちが、どんなに人間的に優れた人格を形成しつつあり、それが新しい成熟に向かっているとしても。

その素晴らしさを先行世代は理解できず、閉塞感だとみなしてなんとか活性化しなければならないと、焦っているにしても。

それでも、まだ始まりに過ぎないと。

そう感じることで、この体と命に、また少し、気持ちよく馴染める気がするよ。

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