フィフス・ディメンション

図書館には本が並んでいる。

俺は図書館に行くと、活力が湧いてくる。

立ち並ぶ本たちが語りかけてくるものはなんだろう。

俺の知らない世界。

俺の行かなかった場所。

俺の生きなかった時代。

俺の出会わなかった人物。



ある背表紙に引かれ、手に取る前にじっと見つめる。

まだ読んでいない本、見ていない世界が、その直方体の中に秘められている。

広大な世界を秘めた一冊の本が、書棚に延々と連なっていく。



俺は図書館を歩くと、あらゆることを知りたくなる。

好奇心、探究心、向上心、冒険心が湧いてくる。

自分はこれから何を知り、何を見て、何を思うだろう。

広がっていく未来が楽しみになる。


自分も何か、そこに付け加えたくなる。

未来の誰かに、何かを見せてやりたくなる。



図書館は、そこに集まってきたすべての本たちによって形づくられている。

膨大な、洗練された、知識と知恵たち。

確実に、一人の人間の人生の範疇を大きく超えている。

それらを一人でつくることも、一人で読みつくし、知り尽くすこともできない。

そして、そこに俺も小さな何かを残したいと思う。

誰かがつくり、残してきた何かから、何かを受け取り、何かを付け加え、誰かに向けて残していく。

それを思うとき、自分は単なる個体としてだけではなく、「人間」という種に属しているのだと実感する。

大きな命の一員になれることを、誇らしく、頼もしく、ありがたく感じる。



図書館は、国を超える。

世界中のあらゆるところで書かれた書物たちが、そこに集まり、一つの図書館をつくり上げている。

図書館は時代を超える。

2000年前に書かれた書物も、昨月書かれた書物もある。

まさに四次元。

摩訶複雑怪奇な世界の光景がくり広げられる。

さらにそこに、もう一つの深み。

人の心という無限に奥深い次元が足される。


3:図書館という現実空間。

3:ワールドワイドな土地の広がり。

4:文明史を総べる時間の広がり。

5:人の心の奥深い広がり。


立ち並ぶ本たちが綾なす、言葉の五次元。

図書館は、命をささげるのに値する。

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