自尊心、虚栄心、謙虚、尊敬

※これは2012年、私が25歳の時に書いた文章です。


他人と付き合うときに、礼儀としてわきまえるべきなのは、こちらも一人の立派な大人の人間として相対することだ。

礼儀であると同時に、円滑な関係を築くための必要条件でもある。

こちらがきちんと自分を整えて、相手に向けて提示するからこそ、相手はそれを受け止めて、互いの応答の交換を始められる。



以前、テレビ番組でDa PumpのIssaが「モテるために心がけていることはありますか」と問われて、「常に、自分の好きでいられる自分でいるようにはしている」と答えていた。

それを聞いて、さもありなん、と俺はうなずいた。

This is the way it is.

自分で自分を好きでいられなければ、好きな女のコの前に出たときに、きちんと落ち着いて自分を提示できない。

自分に不安があっては、自分の落ち度が気になって、堂々とふるまえないのだ。

そんな卑小な人間に、他人としては魅力を感じないだろう。

まずは、自分で自分のことを愛し、尊敬して初めて、他人に愛され、尊敬される。


ところが、それはなかなか難しい。

というのは、たとえばIssaほどモテるオトコであれば、自分のことを好きなオンナがいるというだけで、もはや自分に満足してしまう可能性があるからだ。

途中で他人にオッケーを出されてもなお、自分のオッケーを出すまで粘りぬくというのは、俺にとってはけっこう難しい。

結局、他人との好意的な関係を取り付けるためにやっているのだから、オッケーを出してもらった時点で目的を果たしているのだし、やめてしまってもいいのではないかと考えてしまう。

しかしこの場合、たしかにその時はそれで支障なく円滑に進むのだが、その先でつまずく。

やめてしまった自分を見られて、一度は出されたはずのオッケーを取り下げられてしまうのだ。

オッケーを出した時点の水準を保ちつづけることを期待して出されたオッケーなのだから、それを維持しなければならないのだ。

ということはつまり、他人のオッケーを参考にしつつも、やはり基準を自分の中につくって、そのレベルを保ちつづけるしかない。

それをできるIssa、かっこいい。




ある時に、自分の基準を見失い、他人のオッケーも全然取り付けられない自分に気づく。

そういう時に、心の強い人ならば、自分を見つめ直し、一から鍛えなおすつもりで、生活を整えて築き直すことができる。

しかし心の弱い人は、さしあたってとにかく取り付けられそうなオッケーを探す。

「あなたはとっても素敵だよ、今のあなたも好きだよ」と言ってくれる声を。

しかしまぁ、そういう人を失っているから迷っているわけで、迷っている人に魅力を新しく発見して声をかけてくれる人は、基本的にいない。



Lil' Wayneの新作ビデオの「Love Me ft. Drake, Future」は、そういうことを言っているのではないかと思う。

といって、歌詞を見たわけではないから、フックの歌詞をなんとなく聞いた感じと、ビデオの雰囲気で言っているのだけど。

彼らがオンナを基本的に「ビッチ」と呼ぶのを、俺はよく理解できる。

なぜビッチなのかといえば、一度は自分に惚れたくせに、「もういいや」ってなったら、あっという間に他のオトコに目を向けられる、気持ちの軽さがビッチなのである。

オンナのそういう態度に、オトコは心底から傷つき、ショックを受ける。

逆に言えば、今は俺に惚れてるこの女のコも、昔は別のオトコに愛を向けていたはずだ。

そんなのは普通のことだから、女は基本的にビッチなのだ。

ホーアとかは呼ばないけど。

オトコだって浮気者だし、軽いから、そういうオトコを罵る言葉が欲しければ、つくってください。(もうある?)



元カノだとか、自分のことを好きだった女のコとか、自分が好きだった女のコとか、ちょっと気になってた女のコに、彼氏ができた話だとかを聞くと、俺は心の中で小さく「ビィッチ!」とつぶやく。

結婚したとなれば、なおさらそうだ。

彼女たちは何のルールも破っていないし、思うように生きているだけで何の落ち度もない。

そんなことは完全にわかった上で、俺が腹をたてる理由は何にもないと完全にわかった上で、「ビィッチ!」とつぶやく。

ずっと俺を愛しぬくわけでもないくせに、ずっとそのオトコを愛しぬくわけでもないくせに。

どうせ俺も同じなのだから、お互い様なのだけど、理屈じゃなく感情で「ビィッチ!」と小さくつぶやいて、すぐに自分を取り戻す。

「素敵な人? 好き? よかったね」と微笑んで、心から祝福して、それで終わり。

これも結局、俺がきちんと自分を愛せていないから湧いてくる、卑屈な気持ちなんだろうとわかってはいるのだけど。

それでも、ね。

可愛い女のコが、素敵な女のコが、俺じゃないオトコを選ぶというのは、なんだか寂しいような、取り戻せない何かを失ったような。

クソっ! 小せぇオトコだぜっ!!

と、近頃はこういう生活です。



でも、そういうビッチの中の一人でも、俺を愛して、「あなたは素敵だよ」って言ってくれたら、オトコの幼稚な自尊心は慰められる。

っていう歌だろうなぁこれは、と勝手に理解して、勝手に共感しています。

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30代。日々の出来事。良識派。 kc_kc_ @ndounganye

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