2-18.
と、こんな感じの流れが俺が前代未聞のクソみたいな面倒事に巻き込まれることとなるまでの経緯だ。
厳密に言えばこの後も荒川輪子は多少ゴネていたのだが、スバルとテラサキも加勢に入ってくれやっとのことで折れてくれたのだった。荒川輪子は最終的に憎き敵と共同戦線を組まざるを得ない展開に陥った女戦士のような顔で、
「そうまでしてあたしを止めたんだからね。途中でやめるとか言ったらタダじゃおかないから。覚悟しといてよ。二度と学校に来れなくなるどころじゃ済まなくなるよ」
そう脅し文句を吐き、俺を後戻りできない状況へと追い込んだのだった。この女子はその気になれば本気で言ったことをその通りに実行しそうなくらいこれまでの経験で身に染みてわかっている。つまり、俺はそう言われてしまった以上、自分も言ったことをきちんと実行せざるを得ないのであった。自分の尻は自分で拭けだぁ? うるせー。
テラサキはもう見捨てるしかないと思っていた生徒をクラスメイトが必死に助けようとするという友情劇に感動したのか最初の暗い表情はすっかり捨て、部活動を作るための条件等々を語ってくれた。
それによると、まず部活動として成立するための最低条件が部員数が四人以上であること。それを満たした上で活動目的や具体的な活動内容を記した申請書類と人数分の入部希望書を生徒会に提出し、承認されれば晴れて新生部活動の成立というわけだ。聞こえだけならとても単純明快、簡単な仕組みだ。しかもテラサキ曰く、今年から共学化に合わせて部室が増設されたということだったから、承認までのハードルはそこまで高くないだろうと。
また、部室なら他の部活動でも用具をたんまり室内に保管しているということもあるし、自転車を置いておいても問題はないそうだ。そうとなればさっさと部員だけ集めてしまえばいい。俺は一番手頃そうなところからすぐ隣にいた女子に話を持ち掛けたのだけど、
「あっ、私は部活するつもりはないの。受験に向けて勉強しないといけないし」
スバルは非情にも拒否するのだった。てっきりスバルも仲良く新しい部活に参加するという流れだと思っていたのは俺の勝手な妄想だったらしい。
となれば、集めるべき部員はあと三人。申請書なんてどうとでもなるはずだから、部員さえ集めてしまえばこっちの勝ちだ。こんな面倒な事はちゃっちゃと終わらすべく俺は荒川輪子とスバルに心当たりを尋ねたのだが、ふたりとも思い当たる節は全くないという。オーノー。ワッザファッ●。
自転車が好きな生徒か……。俺も荒川輪子やツーと出会って初めて自転車が好きという概念を獲得したくらいだったからな。そうそうその辺に転がってるもんでもないか。
嫌な予感がした。今日の掃除当番が休みだから代わりを任されたくらいの軽い気持ちでいたのだけれど、本当に俺は、そんな軽労働だけで事を終わらせられるのだろうか?
とにもかくにも、こうして荒川輪子と俺の自転車部作りは始まったのだった。
さーて。
これからどんなことになるのやら……。
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