第13話 ある日の公園

 私はぺたぺたと湿った音を立てて歩く。ぺたぺた鳴るのは裸足だからだ。

 私ははだかの足が良いと感じるままに歩いた。大学のキャンパス、河原、商店街、最後に公園。公園にはいろんな人がいた。

 風船売りは近寄ってきた子どもを片っ端から捕まえて風船に入れている。――「ほらほらどんどん入れ。どんどん空に飛ばしてやるから」

 たこ焼き屋は凧を探しに空を泳いでいる。――「ガキどもめ。もっと低く飛ばせ。たこ焼きが出来んだろうが」

 アイスクリーム屋は凍っている。――「トンカチで叩いて崩してシャーベットにしてくれ。イチゴ味だよ」

 たい焼き屋は鯛だ。――「ああ、あ。人間どもめ、おこがましい。鯛を焼こうなんて。しかし俺もこんなに美味いのかな」

 傘直しは持ち込まれる靴や傘を片っ端から食べている。――「怒らないで、怒らないで。ケツから出てきたら新品同様になってるから」

 母親たちは刀を持ってチョンマゲを結い、焼き打ちに行く。――「旦那の会社を訪れて、社長にウチの旦那の給料を上げるよう頼むわ。そうじゃなきゃ打ち首よ」

 子供たちは砂場で訳もなく穴を掘る。――「この中は未来に通じてるんだ。覗いてみな」

 どれどれ。私は穴を覗きこんだ。すると後ろからクスクスと笑い声がした。突然どんと尻を突き飛ばされ、私は不思議の国のアリスよろしく、穴の中に果てしなく落ちていった。

                                  《了》

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