第12話 ある日の商店街
私は歩く。歩く。歩く。
ひたひたと、はだかの足で歩く。白いワンピースを着て、長い髪をなびかせながら。
果物屋で大きな銀色の魚がもっと大きな黒い熊を売っている。――「高いよ高いよ! 買ってみろ! 食ってみろ!」
散髪屋でタオルが客の首を絞めてハサミは力なく落ちた手から指を切り落とす。――「だらしねえなあ、こんなに指を伸ばして。一月に一度は切らねえとな」
宝石屋で店員は見る客来る客全てを泥棒だと思っている。――「あんたも泥棒お前も泥棒。……なんてこった。俺も泥棒だ」
金魚屋で金魚屋は魚に食べられる。――「こうしてちゃんと餌やらなきゃな。ようしようし。腹一杯食え」
動物屋で動物たちは煙草を吸って一休み。――「ああ、ああ。こんな風に一服出来なきゃやってらんねえ。いっそ店長に毒盛るか」
商店街は賑やかだ。その中を私はひたひたと歩く。はだかの足は不思議に痛くない。痛くないのは夢だから。
(ここから先に、何があるのかしら)
遠くに何かがぼうっと見える。私の初夢は果てがない。
《了》
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