第7話 凍った小鳥

 かきごおり屋が、しゃりしゃりと氷を削っている。白く細やかなリボンになって、氷はするするとガラスの容器にたまっていく。

 私はかきごおり屋の手元で回っている大きな氷の塊を一心に見つめていた。

 ――氷の中に黄色い小鳥が入っていたからだ。今にも飛び立たんとするポーズをとっていて、目はガラス玉のようだ。

 かきごおり屋は、気付いているのかいないのか、平気な顔でそんな氷を削っていく。小鳥はどんどん削り口に降りていく。足が、刃に当たる。

 ――小鳥が削れていく。白い足から長い尾、おしり、お腹、顔、くちばし。削れて、色のついたかきごおりが出来ていく。

「はい、お待ちどお」

 かきごおり屋はガラスの器を私に渡した。

 かきごおりは赤く、血のように赤く、私は食べようとしても食べられなかった。

                              《了》

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