第6話 人形

 人形たちが騒ぐ。うるさく泣き、かしましく話し、騒がしく踊る。そんなあなたのお葬式。

 あなたはきれいな彫り物をした木の棺に入っていました。とても青白く、力の抜けた、いつもとは違う顔のあなた。あなたはいつも笑っていましたね。冗談を言ってくれましたね。私を幸せにしてくれましたね。

 そんなあなたがこんな顔をして、一言も話さないとはどういうことなのでしょうか。それに、あのうっとうしい人形たちは一体何なのでしょうか。

 人形たちは、ひじとひざが球体で出来ており、口は四角く、およそ人間ではないように見えました。私は彼らが嫌いだったのです。昔から。

 昔から? おや、私は彼等の事を知っているようです。そうだそうだ。彼らはあなたが作った人形たちでした。あなたは人形作りでしたね。そうそう、あなたは人形をよく作って売っていました。

 からころからころ。ああ、またです。この音が耳につきます。私はこの音が嫌いです。しょっちゅう聞こえてきて、耳が痛いのです。

 あなたはこんな私の他愛のない相談を真剣に聞いてくれましたね。そして、「大丈夫、すぐに直してあげるから」と言ってくれましたね。

 おや? 直してあげるから? 何なんでしょう。その言葉は。その、物に対するような言い方は。

 ああ、ああ、そうでしたね。私もあなたが作った人形でした。私のひじにもひざにも球体がある。からころからころ鳴るのはそのせいです。ただ、口は四角くありません。口はいつも微笑んで、動かないのです。そう、私は喋れないのです。

 私はあなたが作った中で最もすばらしい人形でした。孤独なあなたの恋人として、私はあなたに愛されました。

 あなたは相変わらず青白い顔で寝ています。人形たちは騒ぎます。

 私はどうすればいいのでしょう。あなたのために作られた私は、これから誰を愛せばいいのでしょう。夜を、どう過ごすというのでしょう。

「僕が君を買ってあげる」

 誰かが言いました。ええ、ええ、そうしましょう。あなたではない誰かについていって、彼と夜を過ごしましょう。私はそのために作られたのだから。

 あなたは許してくれるでしょう? だってあなたは死んでしまったのだから。

                                  《了》

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