第2話 川沿いの少女

 少女は河辺に一人で暮らしていました。

 ひとりで小さな田畑を営んでいました。


 自給自足とまではいかなくても、少女の生活はとても自立したものでした。そして彼女は、そんな生活を気に入っていました。

 そんな少女のいい天気の朝のことです。



 少女は薄明の頃、いつも通りに、川へ水を汲みに行きました。季節では春ですが、少女の肌はささやかな寒さを感じていました。

 自分の体の大きさには少し大きめに見える桶を持って、少女は川へ向かいます。中途、少女の裸足が通ったところで、小さな虫が跳ねました。


 少女は若葉色の薄着をまとっています。足を見ても瞭然りょうぜんですが、端から見れば、少し寒そうな格好に見えます。少女はそんなことを分かってか分からずか、くしゅんとくしゃみをしました。


 桶に半分ほどの水を入れると、少女はそれを横に置いて、顔を洗いました。

 一通り髪も揃えると、少女は家に戻ります。水が入った桶を家の隅に置き、少女はベッドに腰掛けます。


 少女の家は、小さなもので、間取りなんかはありません。一つのフロアーに、ベッドと台所と水道と、その横にかなりのスペースをとる食糧庫があります。それだけの“家”です。


 今日は市場にでも行こうかしら。一番近い市場でも歩いて二十分ほどかかるので、買い物に行くタイミングは大切です。帰りに雨でも降ろうものなら、“えらいこっちゃ”なのです。この季節、この辺りでは突然の雨も多いので、賭けもありなのですが。

 「どうしようかな……」迷っても特に良い方向にいくわけでもないけれど、少女はつぶやきます。


 さて、と。最後に市場に行ったのは一昨日。食糧の残りも少ない。さっき見た空には雲ひとつ浮かんでいなかった。そして、今日は木曜日。こんな好条件があったどろうか。その心は、状況が市場へ行けといっている!

 少女はそう解釈すると、今日は行こう、と決めました。


 すくっと立ち上がると、ベッドの布団をたたみました。

 それから若葉色のパジャマを脱ぎ、いつも着ているチュニックワンピースを羽織りました。色は淡い紫です。


 少女が市場へ行くことは、買い物をしにいくだけではありません。それだけでは少女のお金がなくなります。だから、売るのです。少女もつくった野菜を。

 少女は食糧庫から一束の葉菜類と、一袋の果菜類を取り出して、ショルダーバッグに入れると家を出ました。


 家を出て、五分ほど川沿いへ歩いた頃。

 少女は、出逢い、見つけます。

 それは彼女にとっても、見つけられた“それ”にとっても、ラッキーなことでした。


 少女は川沿いに、精霊の姿をした生き物が、ぼろぼろで倒れているのを見つけました。



 亜精霊と、少女の出逢いです。

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