亜精霊の仕事

芹意堂 糸由

第1話 プロローグ

 雪の降る夜の市街地の上空にて。

 一人の少年は、不機嫌そうな顔でふわふわ宙に浮いていました。


「なんでだよ」


 少年の蒼い前髪は、微かに右目にかかっています。その奥の目に宿るのは、怒りか絶望か、といったような感じです。


「なんで、俺だけ……」


 少年はまた、吐き捨てます。そして、眼下をちらり。

 雪の降る夜。下の市街地は、延々と降り続ける雪によって美しくデコレーションされています。その市街地を歩く人間は、誰もが笑顔を浮かべていました。


 今日は、クリスマスです。なんでも、人間の大きなお祭りだとか。だから人間は、カップルや家族で楽しいひと時を過ごすんだそうです。

 その人間達の周りを舞っていたのが──


「精霊のやつはいいよな」


 そう、精霊です。精霊も人間にならってこのクリスマスをカップルとかと一緒に祝うのです。


「俺がちゃんとした精霊・・だったらな……」


 少年は、妬みのこもった目で呟きます。

 その目の先には、勿論の精霊がいました。少年の目先にいる精霊たちは、少年の思いなんかつゆ知らず、先ほどと変わらない笑顔を見せていました。


 色とりどりの精霊たちは今も、まるで人間たちのクリスマスを飾るように、美しく踊っています。

 仕事、通りに。


 人間たちを、明るく照らすこと・・・・・・・・・・・・・・


 精霊たちの仕事、活きる意味は、それ唯一なのです。


 そして、そんな精霊たちをうらやむ少年は──


「なんで俺だけ精霊じゃねえんだよ……」


 精霊のなれそこない、なのです。

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