暗黒自動販売機

第1話暗黒自動販売機

真夜中の自動販売機の噂が、学校で流れた。

わたしの住む団地の向かい側にスーパーがある。そのスーパーの前にある4台の自動販売機の１つが、噂の自動販売機なのだ。

真夜中に、その自動販売機でオレンジジュースを買うと記憶喪失になるとか、廃人になって最後は自殺するという事だった。

わたしも友達も信じなかった。

ある日、仲の良い先輩が度胸試しとばかりに友達数人で、真夜中に噂の自動販売機でオレンジジュースを買いに行った。

数日間が過ぎたある日、先輩に異変が起きた。

先輩は部活中、いつものようにわたしと雑談していた。

いきなり先輩の顔が歪み、別人のような顔になったかと思うと何やら呪文のようなものを叫びながら体育館から飛び出して行った。

その日、先輩は帰って来なかった。

先輩が見つかったのは、それから１週間が経過した頃だった。先輩は、変わり果てた姿で発見された。

しばらく、先輩は病院に入院する事になった。

先輩は…死んだ。

病院のベッドの上で目をカッと開いて、息を引き取っていた。先輩の目は、恐怖で真っ赤に充血していたらしい。

先輩と一緒にオレンジジュースを買った人はいたのに、先輩だけが死んだ。

わたしには、分かっていた。

何故、先輩だけが死んだのか。

それは、先輩が人を殺した事があったからだと思う。先輩は、幼い頃にまだ一歳にも満たない、弟を窒息死させていた。それを、先輩は死んだ時の顔のようではなく、笑顔でわたしに話していた。

わたしは、団地の部屋の窓から自動販売機を見る。わたしは買わない。

何故かって？それは、わたしも人を殺した事があるから…。

わたしの殺した人の目は、少しだけ赤かった気がする。