Fake4:一緒に帰る

「なあ香織、悪かったって」

「………」

「機嫌直せよ」

「うるさい…」


澪と一緒に帰ろうとしてたのにこいつが昇降口で待ち伏せしてたせいでこいつと帰るハメになってしまった。澪は澪で「おじゃま虫は退散〜〜!」なんて言って先に行っちゃうし。


「皆の前で言ったことは本当に申し訳ないと思ってる。だから…」


もう許してくれ、ってか。

私が怒ってるのはそこだけじゃないんだよ。


「あんたさぁ、私がいつあんたに名前で呼んで良いって言った!?1回も言ってないでしょうが!しかも呼び捨て!!」


ぽかん。とした表情でこっちを見る恋人(仮)。


「え…呼んじゃダメなのか?」

「ダメに決まってんでしょ!大体ねぇ!私あんたのこと好きじゃ…」

ない、なんて今はまだ言ってはいけない。上げて落とす作戦なんだから。


「…あんたのことは好きだけど、皆の前でいきなり名前なんて呼ばれたら照れるじゃん…」


最後にバカ、と小さく呟けば、こいつは顔を真っ赤にして


「お前、可愛すぎ…」


と私の抱きしめようとした。


「だからこういう所でやんないでって言ってんだろ!!やめてよ!」


公共の場だぞ、ここは。


今のところこいつ、私の演技にまんまと引っかかってんな。

こいつを裏切ったときの反応が楽しみだなぁ。

なんて言って落としてやろうかな。「元々遊びだった」?「水谷くんと仲良いから水谷くんに近づけると思った」?

私が何と言おうとこいつは絶望するに違いない。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る