Fake3:授業

「今日からギターの授業やるよ〜」


移動教室。音楽の授業だ。

今日からギターの授業が始まるって前に先生言ってたっけ。


「私がお手本を見せてもいいんだけど、やっぱ経験者に見せて欲しいよね…誰かギター弾ける人いない?」


女子達がざわつき始める。


「水谷くんとか出来そうじゃない?」

「わかる〜!!何でも出来ちゃうもんね!」

「どう?水谷くん弾けるんでしょ〜?」


水谷くんが困ったように笑う。その笑顔も素敵。


「いやぁ…基本なら少しは出来るけど…そんなに弾けないよ」

「あら、水谷くん弾けるの?じゃあちょっと弾いて貰えないかしら」


やった。水谷くんのギターが聴けるんだ。


水谷くんが前に立つ。先生からギターを受け取ってゆっくりと弾き始める。

あ、この曲って…


「あ!この曲って『pineapple』の曲じゃない!?」


pineappleとは最近流行りのバンドだ。


「へぇ〜!水谷くん『pineapple』好きなんだぁ!」

「私も聴いてみよっかな〜」


水谷くんが弾き終わると大きな拍手が起こった。

先生も満足そうだ。私も水谷くんのギターが聴けて幸せだ。


「ありがとう水谷くん。それじゃ─」

「先生、俺も弾けます」


手を挙げたのは宮川だった。


「あら!宮川くんも弾けるの?じゃああなたにも弾いてもらってもいいかしら?」

「いいですけど、僕も弾ける曲は『pineapple』の曲しかないですよ」


お前も弾くの?水谷くんのギターだけで十分なんだけど。


「それに…彼女にもいい所見せたいじゃないですか」


………はぁ!?!?何言ってんのあいつ!バカじゃないの!?


クラス中にざわめきが広がる。


「えっ彼女!?」

「あいつ誰と付き合ってんだよ!!」

「おい雄飛裏切ったなお前〜!!」


「僕の彼女は…櫻井 香織さんです」


さらにざわめきが大きくなる。しかもあいつと仲良しで私の想い人の水谷くんまで嬉しそうにしてる。


「えっ!?香織ちゃんと!?!?」

「うっそ!意外!!」

「櫻井さん、地味にモテるらしいからな〜!雄飛、取られないようにしろよな!」


1人だけこの流れについていけない。


「ちょ、ちょっとあんた!何言って…」

「香織」


はぁ??私いつ呼び捨てでしかも下の名前で呼んでいいって言った?????


「聴いてくれよ、『pineapple』の曲」


こうしてあいつの演奏が始まった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る