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『
トールに聞かれて、朋樹が 蔓を伸ばしてる。
ミカエルが、コーヒーにガバガバ 焼きメレンゲと
マシュマロ入れだして
『美味い?』って聞く ヘルメスに頷いてる。
ロキも『俺等も やってみよう』だし。
『ソゾンは、“ヴァナヘイムや
オージン等の創造物ではない” と 言っていたな』
薄い四角の高級チョコを 指に摘んで、ベリアルが言うと、メレンゲだけ コーヒーに入れてみてる
トールが
『だが、俺等が生まれた時には もう
ヴァナヘイムや
『アースガルズに、アース神族しか入れないように、ヴァナヘイムや
ロキも言う。
『どこにある?』と、ベルゼに聞かれて
トールは、『
立てた人さし指を、上に向けた。
『オージン等の創造でないのなら、
別界から干渉してきた ということか?』
カップ持って、ベルゼが聞いてるんだけど
『サーミの人たちの、ラップ神話は?』って
口 挟んでみる。
北欧には、フィンランドの “カレワラ” っていう
神話か 叙事詩か... っていうのもあるけど、
ラップランド... ノルウェイやスウェーデン、フィンランドやロシアに跨がる、サーミの人たちが暮らしている地域にも、ラップランド神話 っていうのがある。
冬に会った バスク神、シュガールとマリが属する
フランスとスペインに跨がる バスクの人たちの
バスク神話... みたいな感じ。
ラップランド神話は、北欧神話とは別系統らしいんだけど、ソゾンが アジ=ダハーカを “トナカイで
『太陽の娘が死に、太陽の国が 女不足になった時
太陽の息子が、嫁探しの旅に出る... ってやつか?』
おっ! ロキが言ってるし、詳しく聞いてみると
『太陽の息子は、巨人の国に辿り着いて
巨人の娘を妻にするんだ。
“北の死の家の 霜の巨人と、太陽の男の子孫”... って いうやつに合致する。
“北の死の家”...
『
さらっと言ったボティスに
『うん、そーだよな!』って 同意したら
うるせぇ って 眼ぇ流されて
『ラップランド神話には、精霊も出てくるようだからな』って 付け加えて、メレンゲ食ってる。
『精霊が、
『へぇ... “
泰河の椎茸観的な妄想にも、火が点きかけてるっぽいんだぜ。
『でも、“太陽の国” って?
ソールが馬車で 太陽を引いてるんだろう?』
ジェイドが言うと、ベルゼの眼鏡かけてる 朋樹が
『ソールは、太陽の運行を司ってるんじゃないのか?
太陽が昇らない... ってこととも取れる』って
言ってて、“そうそう” って 頷いちまうし。
『太陽と雪の中の暮らしだし、白夜と極夜もあるもんな。
融合した部分があるのかもな。
サーミの人たちも、キリスト教に改宗させられてるし』
これは、自然信仰っていうか 精霊信仰で
ノアイデが、トランス状態になるのが良くない... と されたことも あるようなんだよな。
太鼓や歌だけでなく、茸でトランス状態になったりしたっぽいし。
『ヴァン神族や
マシュマロコーヒーの後に、コーヒーお代わりしてる ミカエルが言うと
『可能性はあるだろう。類似点も多い。
全体でなく、一部の者達が
『サーミの神話では、太陽神である女神に
“冬至に 白い牝トナカイを 生贄として捧げる”... という儀式も行っていた』って 付け加えてるし!
出たぜ、トナカイ。
サーミの人たち... ってところで 出てんだけど、
アジ=ダハーカの饗し とも、繋がった気がするんだぜ。
あの巨人たちのことを思い出すと、胸 疼くけど。
ついでに
『ハンマーを持った雷神が 金のトナカイを仕留めると、太陽と月が隠れて 世界が終わる... という伝承もあるようだ』って 話してるけど
トールは『ほぼ 俺だな』って、マドレーヌ食ってる。
『なんかさぁ、だいぶ 繋がってきたよなぁ』って
言いながら、つい あくびしたら
『少し寝ろ。ミカエル』って、シェムハザが
指を鳴らした。
眠りに落ちたような気がして、気付くと
テーブルの上のコーヒーは、インディアンコーヒーに なってて、バルフィの皿もある。
『あれ?』
朋樹とジェイド、泰河も、ほけーっとしてて
『アムリタで割ってある』って
勧められたコーヒーを 飲んだけど
一瞬 眠った気になった 今の間は、一時間だったらしく、その間に ミカエルが癒やしてくれてて
身体、すげー ラク。
『幾度か やっているが... 』
『
言われて
『はあ?!』『どうなってんすか?!』って
かなり焦るし!
感覚的には、ジャタの洞窟から入って
“長い まる1日” なのに!
『各森や、
飛ばしている。
混乱せんよう、感覚的には 一日に繋げているが』
よく解らねー 説明は、師匠なんだぜ。
泰河は “あぁ... ”って、何か思い当たるみたいだし
『しかし、ジャタの洞窟から 戻れば
洞窟に入ってから 二日程の経過... となるが』って
言われて、ますます 解らねーんだけど
師匠は “限られた部分” の、時間を調節出来るっぽい。この場合は、“神隠しの中” だけ。
『オレ、師匠と修行した時
絶対、半年か 一年やってたんだよな。
けど 二週間しか経ってなくてさ』
『なんでだよ?』
『いいって、泰河。余計 解らねぇしよ』
『まだ、ピンと こないけど
僕らが寝ていた間の移動は... ?』
『トールやミカエル、ヴィシュヌとガルダ、
ハティやシェムハザが、肩に抱えた』
うわっ、オレら カッコ悪ぃ...
『私もでしょうか?』って聞く 四郎に
『うん』『意外と重さあるよな』って
ヘルメスやロキが答えて、ショック与えてる。
ボティスは、狐榊班だったらしく
『ラクだった』つってるけど、おまえは 寝ねーのかよ...
ベルゼやベリアルに『仕方ないだろう』
『人間だからな』とか 肩 竦められても
雪山抜けた洞窟で、“よゆー” とか
何だったんだよ... って 思うんだぜ。
『
『俺等でも、
何日も掛かる』
ロキとトールも言ってるけどさぁ。
『こちら側には、気になるものは無い。
個人宅の中までは 蔓は入れぬであったが... 』
『
あまり、気配って気配も感じないんだよな』って
首を傾げながら、裏の扉から侵入させた蔓を
地面に潜らせていく。
だって、不必要を削ぎ落とした 死人だもんなぁ。
『私の虫たちは、まだ調査しているようだが... 』
ジャタ島での飯の時に、青唐辛子 食った時と同じ顔で、バルフィを摘んでる ベルゼが言ったけど、
ちょうど 透明蜻蛉が 一匹 戻ってきた。
ベルゼが出した、白手袋の人差し指に とまって
複眼を ベルゼのワイン色の眼に向けてる。
あの眼って、一万から三万個 あって
一個 一個は、六角形なんだよなー。
40メートル先の蚊とかも見える っていう高性能。
『... 平原や
これといったものは 無いようだ』
蜻蛉に ベルゼが頷くと、水色の翅で飛んで
陽炎みたいになって消えた。
『今のトンボ、どこに行ったんだよ?』
ブロンド睫毛の碧眼を レヴォントゥレットの雲に向けた ミカエルが聞くと
『あの雲から作ったから、あの雲に還った。
“水蜻蛉” だ。移動や調査範囲は、空の下のみ』
らしいんだぜ。洞窟とか 建物内はダメっぽい。
『きれいだし、面白いね!』
『術? でも 生物作っちまうなんて すげぇな。
バアル ゼブルだもんな』
ヘルメスやロキが感心してて、ミカエルも たぶん
蜻蛉が きれいだと思ったんだろうけど
褒められは しねーし、『ふうん... 』つってる。
さっき、雲に戻った蜻蛉と一緒に
向こう側の平原や墓付近の調査をしていた蜻蛉たちも 一斉に戻って来て、水色の翅と透明の身体を煌かせながら、レヴォントゥレットの雲に溶けていった。
『ファンタスティックを目指してる?』
もう やめろって、ジェイドぉ...
『多少』
目指してんのかぁ...
メルヘンで ファンタスティック...
『“蝿の王” などとも 呼ばれる私は
最近では、髑髏が描かれた翅を持つ 蝿そのもの で
表されている。
疫病神と
ワインの眼を ミカエルに向けると
『うん、
でも 呼び名は、父が言ったんじゃないぜ?
預言者が言い出したんでもないし』って 返してて
『だが、ユダヤのラビだった』って なってるし。
『でも、あのイラストは クールだ。
“地獄の辞典” だろう?』
神父の言葉なんだぜ。
『おお! その本ならば、シェムハザに御借り致しました! 私も “格好良い” と... 』
預言者も
“そうかな?” って 顔になってきた。
ボティスも頷いてるし。
眼鏡朋樹に『どう思う?』って 聞いて
『オレ、シャツ欲しいっす』って 答えられると
『何色が?』って なってきてるしさぁ。
オレも欲しいけど、ミカエルが
『お前等、俺のシャツ 持ってるだろ?!』って
やっぱり 怒るしー。
『ドレスシャツの襟に付いている、などは?』
『カフスボタンなど... 』
シェムハザとハティが、案 出してきたけど
泰河が『おっ』て、バルフィ食いながら 空に向く。また蜻蛉が 報告に戻って来た。
指先の蜻蛉の 透明複眼と見つめ合った ベルゼが
『... 死者の軍が控える館に、蛇が出入りしているようだ』と 言って、蜻蛉を 空へ放した。
『カフスならば、私も付けられる。
イラストは、ティーシャツの図柄と カフスで。
では、森へ行こう』
ベルゼも皇帝も、シャツの胸元は
フリルとかリボンで わさわさしてるもんなぁ。
カップとかテーブルとかが 送られて、
水蜻蛉たちが レヴォントゥレットの雲に還るのを見送りながら歩いて、楡の木の 巫女の墓を越え
奥の森へと 向かう。
『
泰河が、周りを見回しながら言う。
まぁ、木しかないんだけど。
死者の館は、巫女の墓の場所からも見えてたし
すぐに着いた。グレーの外壁の建物。
ヘルの
石造りの城 って感じ。
『死者といっても、自然死の者は少ない。
戦死者だが、オージンが気に入る程 強くなかったり、敗戦した側の者達が多い』
扉の無い入口は広く、中の広間には 赤い絨毯が敷かれてる。
シルバーの鎧を着けた霊が、奥に見える階段を昇って行った。霊 っていっても、実体があったし。
『蛇は見ないな... 』
『水蜻蛉は、建物内は見れんからな。
だが、複眼の記憶から
この入口から 黒蛇が 這い出てきたのが見えた』
アジ=ダハーカの蛇っぽいよなぁ...
『じゃあ、行くぜ?』って 言う、仕事着に翼付きミカエルに、ぞろぞろ ついて行って 中へ入る。
『そう広くはないが、分かれて見た方が
効率は良くないか?』
トールが言うけど、
早くも『地下がある』と、下り階段の位置を探し当てた。
『地下には、死者兵達の訓練場があると聞く』
みたいだし、広間の右手にある 扉の無い 入口から
石壁の通路に入って、広間を囲み込むように 裏側の位置まで進むと、通路の床に 四角い穴が唐突に開いてて、下へ降りる 石の階段がついてる。
『あっ、蛇!』
階段を、黒蛇が昇ってきて
ブーツの足の横を 這って通り過ぎていく。
アジ=ダハーカは ともかく、蛇は居るっぽい。
二人くらい並べるけど、蛇が出て来た時に避けることも考慮して、一列で降りると
そのまま、地下の訓練場に着いた。
『これは?』
石壁と石の床の 広い訓練場の中央に
氷の柱が立っていた。直径2メートルくらい。
中には、黒髪の女がいる。
氷の柱の 周囲には、黒蛇が群がってる。
『ヘル!』
ロキが駆寄ろうとするのを、トールが止めた。
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