26


「うおお!!」「リゾート!!」


寺院から 駐車場に戻って、バンに乗って少し走って。森じゃね? って 感じの所に入ると

ヴィラが いっぱい並んでる場所に出た。


バン降りたら、アコが 鍵持って来てくれて

案内された 部屋... つーか、家に入る。


したらさぁ、まず、すっげー 広いリビング。

木造のヴィラで、もう いかにも南国! って風な

焦げ茶のフローリングと、天然木の柱。

ゆったりした 緩いカーブ、アイボリーのL字ソファー は、テラスに向いてるんだけど、

テラス側には 壁がない。

ま、木枠のガラス戸は付いてるんだけど。

そのままテラス。で、専用プール。

なのに、エアコン付き。

冷風は逃しまくるけど、日本よりカラッとしてるし、朝は 肌寒そうな気がする。


「これ、一戸一戸、全部にプールあんの?」

「ぽいな... 森っていうか、ジャングルに向いてるから、他の部屋とかプールは見えねぇけど」

「プールで遊んで、そのままリビングか?」

「そういう感じなんだろうね。

案内のパンフレットには、プールに四角い籠を浮かせて、その上にワインや食事が乗ってる」


すっげー...

日本のビーチの方で、オレが泊まってる部屋だって、すげーよなぁ って思ってたのにさぁ。


リビングの左側には、壁で 半端に区切ってある

バスルーム。

バスタブには、一面 花びら浮いてるし。

オレらじゃ キツいし、後でミカエルが入るんだろうけどさぁ。

バスタブから 少し離れて、トイレがあるんだけど、屋外で かよ... 解放的過ぎぃ。


ソファーの背面側の壁には、ベッドが二つ。

右側に、バーとダイニングセット。


寝室が二つ。なんかムードある ベッド二つずつ。

テラス続きのバスルームとは 別に、バスタブとトイレ、シャワーブースがあって、かなり ホッとしたんだぜ。


「なんと、このような... 」


四郎は、南国系の でかい葉っぱの鉢とか

寝室の透かし扉とかまで、丁寧に見て

緊張気味に ソファーに座ってみてる。

オレらも、バーカウンターの上に置いてある

盆の水に浮いた花 見たりとか

冷蔵庫開けてみたり、ベッドに転がってみたりしてるけどさぁ。


「アコやシェムハザが居ないと 利用出来ないけど

レストランは 三つあるね。

マッサージもやってるし、ヨガのスペースもある」


ジェイドが パンフレット見て言ってるけど

ヨガなんか、これだけ広さあれば 部屋で出来んのに、文化 違うよなぁ。


サロンとサプッを外したら、やっぱり結構

解放された感があった。慣れてねーし。


「あっ、“Wi-Fi 無料”」

「四郎、スマホ ちょっと貸してみ」


便利だけど、この辺でリゾート感 薄れるんだぜ。

泰河も朋樹も設定してて

「今度、ヒスイ連れて来よう」って 言ってるし

泰河も「バリにいる って入れとくかな」って

朱里ちゃんに連絡してるけど

リラ子は、楽園マコノムだもんなー... 寂しいんだぜ。


「涼二は、信じぬのです」


リョウジくんに、ゴア ガシャ遺跡の写真送った

四郎が、返ってきたメッセージ見ながら言うけど

“海の洞窟 抜けたらバリ” って言われても

そりゃ、まぁなぁ...


「猿の寺院で撮った写真を送ったら?」


隣に座ったジェイドが言ってる。

オレも座るけど。


「しかし、姉様方と撮ったものは

私のスマホではないのです」


「じゃ、“写真くれ” って

シイナかニナに 言えばいいじゃん」


女子おなごとメッセージなど... 」


カタっ。


「えっ、四郎、学校の友達とか どうしてんの?

女のコもいるだろ?」


「個人的な やり取りなどは致しません。

男児であれば、幾人かと 交換しておりますが... 」


「でも 女のコに、連絡先は聞かれるんじゃないのか?」


ジェイドも聞くと

人伝ひとづてに聞かれた事は 御座いますが

そう、会話を持った事も御座いません方でしたので、お断り致しました」って 答えてる。

まじめー。


けど、ミカエルとか泰河が

ゾイや朱里ちゃんと、どんな話するのかは

気にしてたんだよなー...

好きな子はいる って事なんかな?

あんまり聞かねーどくけどー。


「じゃあ、ジェイドが言ってやれよ。

“四郎に 写真送ってくれ” ってさ」


バーで、ビール開けながら 泰河が言って


「そうだな。交換したのか?」って

朋樹が聞いてみてる。


「いや?」


おおぉ...  疑問形で返しやがって...

ゴア ガシャで、長く二人で居て

オノボリサンシャツ買いにも行ってたのに

なんでだよ...


「だって、“教会に居る” って言ってあるし

スマホは繋がらなかったし。普段、用事ないだろう?」


おう、繋がらなかったのは 忘れてたぜー。

無言の間が空く前に

「... けど、あいつら 見えるしな、いろいろ」と

朋樹が言う。


「おう、こないだも 闇靄吐いてる人たちを

建物に入れてくれて、助かったしさ」

「連絡先は交換しといた方が いいかもな」って

泰河とオレも、交換方向へ持っていく。


「ああ、それは そうかもね。

じゃあ、聞いといてくれ」


ちっ...

ジェイド、結構 面倒くさがりなんだよな...

「泰河、僕もビール」って、左側の壁に付いてる

テレビ 点け出したし。


「あっ、リョウジからメッセージ入ってきた。

“バリ島にいるって本当ですか?

洞窟から出たって、四郎がギャグるんですけど” って。“本当だぜ” って、入れといてやるよ。

“迷い込んだ” ってさ」


ビール持って来た 泰河が、四郎を撮って

リョウジくんに送ってると

「そうです、リョウジから 姉様方に連絡して頂けば... 」って 言い掛けて

「いえ!」って 方向を変える。


「では 私が、兄様方の連絡先を

姉様方に送るとしましょう。交換されておいてください」


緊張気味だけど

“兄様方の御連絡です。

各々おのおの、御登録 御願い申し上げます。

少々 面倒で御座いますので、兄様方には、

姉様方から 御自身の連絡先を 御伝えされるよう

御願い致します。

更に、共に撮りました写真を送付して頂きたい。

宜しく御願い致します”... って

漢字多めのメッセージ送ってる。

結構、お願い多いし。


「泰河、僕も ビールって言ったのに」


ジェイドに 泰河が

「あっ、そうだったな」って答えてるけど

朋樹が取りに行くし

「オレもー。四郎のジュースもー」って言って

「おまえも取りに来いよ」って言われる。

四郎が消えて、冷蔵庫前に顕れて

取りに行ってくれたけど。


「あっ、ニナから。... と、シイナから」


泰河に届いてるし、オレもWiFi設定したら

すぐ届いた。

“届いた?” “登録しといて” って。

ユーゴと めいちゃんで登録しといてやろ。

朋樹、ジェイドって鳴ってるけど

返事してるし、まぁ 大丈夫だろ。


「お前達」


シェムハザ登場。まだサロン巻いてる。


「おう、シェミー」

「すげぇとこ 取ってくれてありがとうな」


「もう少し山間に寄るか 海際の方が

景観も良く、ヴィラのグレードも上がるが

明日の 車での移動を考えるとな... 」


納得いかねー風に答えてるけど

オレらは、全然 充分なんだぜ。


「一度、城に戻って

日本の珊瑚礁と洞窟を見て来るが

ヴィラの中央にある 壁の無い東屋のようなレストランに、食事を用意させてある。

榊とボティスが先に向かい、神隠しをした。

ニナとシイナは、アコが連れて行っている。

お前達も行って来い」


そういや、夕飯早かったから

軽く腹減ってるけど、至れり尽せりだよなー。


「うわ、マジかぁ」

「本当に ありがとう」


「しかし、少しシロウを借りる。

ミカエルがいない。俺とアコでは、対処出来んものが出る恐れもあるからな」


「えっ、四郎の飯は?」

「城で軽食を取らせて行くが、お前達が戻る時に、シロウの分は ルームサービスで届けるよう

術を掛けている」


サービスは 完璧に行き届いてるんだぜ。

「水着を置いていく」って、城で洗ってくれてたやつ 取り寄せたし。


「シロウ、城で」


シェムハザに呼ばれた四郎は

「はい。兄様方、行って参ります」つって

開けちまったジュース持って

シェムハザと消えたけど

「なんで 城に寄るのに、四郎を連れて行くんだろう? それなら、僕らと食事を取らせてから

日本に行けばいいのに」って

ジェイドが 首傾げて、そうだよな... ってなる。


けど「四郎が かわいいんじゃねぇか?」

「おう、こないだも城に連れて行ってたしな」って 落ち着いて、レストランに向かうことにした。


円形に並ぶヴィラの中央に、レストラン二つと

カフェがあって、カフェは 遅くまで開いてるっぽい。


シェムハザが言ってとこは、でかい東屋みたいになってて、すぐに分かった。

奥の壁だけが 一面あって、キッチンに続いてるらしい。

壁に空いた、ドアの無い 二つの丸太の枠の入口から、料理やドリンクを運ぶ人達が出て来る。

店員は 全員、制服のスタンドカラーシャツの下に、サロンとサプッを巻いてる。


周囲にあるヴィラとは、少し距離を取ってあって

デイゴ、プルメリア、ナンヨウザクラ、シダノキ、デザートローズ、ハマユウ... 熱帯っぽい木々が植えてある。ジャングルの中のレストランって雰囲気。


「南国... 」

「もう 帰りたくなくなるね」


榊が 一度、神隠しを解いて

右端の方に でかいテーブルが 忽然と顕れた。

テーブルにはもう、料理の大皿何枚かと

ビールやワインが載ってる。


「おおっ?!」

「なんだ、おまえら! かわいいじゃねぇか!」


「ほほ。そうであろう?」


シイナもニナもだけど、榊も

サロンの さらっとした生地のワンピースに着換えてて、ますます南国感が増してるし。

「意外だが、華やかではある」って

ボティスも言ってるけど、女のコ混じると違うよなぁ。ニナは もちろん、シイナとかでもさぁ。


「着換えを買って来たんだ。

お前達の分も、部屋に置いとく」


アコも相変わらず、オレらを甘やかすんだぜ。


「まぁ、リゾートマジックも入ってるよな」とか、憎まれ口叩きながら 向かいに座ったら

馬子マゴにも衣装 って言うしね」って

ジェイドが被せてきやがって

「いやっ、そんなことないぜ!」

「マジで かわいいじゃねぇか!」って

泰河と フォローしようとして 嘘っぽくなる。


「別に いいんですけどー」

「うん、分かってるってば」って なったから

朋樹が「シイナ、こっち座れよ。

バラけて座ってもらった方が、眼に入るし」つって、「そう!華だからな!」って

移動したシイナの隣に、泰河も座る。


「おまえたち、やけに浮かれてないか?」


不審がりながらも、ニナと榊の間に

ジェイドが座ったので、良しとする。

「浮かれるだろ そりゃ」

「バリの夜だぜ?」って 騒いで

ボティスのゴールドの眼に牽制された。


「じゃあ 俺は、珊瑚礁とか見て来るけど

俺が戻るまで、お前等が シイナ達と居てくれ」

とか 言う。


「なんで?」って聞いたら

「さっきの悪霊みたいな奴が 怖かったみたいなんだ。俺が戻ったら、朝までみとくから」ってことらしい。アコは、サテ 一串持って消えた。

うん、怖いよな。花火ん時も 緑女見てるし。


「榊を派遣してもいいが」って

ボティスが言ってるけど

「昨日も、榊ちゃん 借りちゃったし」

「バリだし」って、二人の方が 気が引けてる。


「おう、構わんぜ」

「アコが迎えに来るまで、部屋に来たらいいじゃねぇか」


朋樹と泰河が言って

「うん」「じゃあ... 」ってことになったし

「その代わり、おまえら

花風呂入るとこ見せろよ」つって

もう、見事に 無視されてんだけどさぁ。


で、飯 食い始めたら、シイナに

「シロちゃんは?」って聞かれて

「シェムハザたちと仕事。移動出来るから」って 説明して

「そうなんだ。そうだ、写真 送っとこ」って

今 送ってた。


テーブルの上には、海老のサラダとか

骨付き羊肉の煮込みとか、どこででも出そうなやつから、ナシゴレンやミーゴレン、鳥のサテ、

すげー 量の揚げ野菜が添えられたスープカレーとサフランライス。インドネシアっぽいものが並んでて、どれも美味かった。

飯物 多いと、やっぱり嬉しいし。


「むっ... ?」


食後に、ぼんやりした店員が

フルーツ盛りと揚げバナナ、コーヒー持って来てくれて、フルーツ摘んでたら

榊が、向かいに座るオレらの後ろに 眼をやってる。


振り返ってみたら、ポロシャツに黒いハーフパンツの男が居て、他のテーブルを見ながら

なんかブツブツ言ってる。


見られてるテーブルは、オレらの斜め奥で

旅行者らしき女の人 二人が座ってて、笑いながら食事してた。


「何だろ?」

「バリアンじゃないのか?」


バリアンって、白魔術ホワイトマジックとか 黒魔術ブラックマジック使うヤツだよな? バリの呪術師みたいな。


「なら、呪詛?」

「観光客に?」


ブツブツ言ってる男が、ハーフパンツのポケットから 卵を出した。

ただの卵に見えたけど、男が割ると

中から 青い気体が落ちて、蛇の形になった。


眼のない青い蛇は、口から 先が割れた舌を見せると、斜め奥のテーブルへ這い向かう。


「呪詛掛けだ」


朋樹が、半式鬼を おっさんに飛ばし付けて

床には 白い鳥の式鬼を飛ばして、蛇を両断する。


呪詛掛けしていた男は、何が起こったのか分からずに、キョロキョロと周りを見た後

またブツブツと 何か言い出した。


二つになった青蛇の尾が、まだ 斜め奥のテーブルに 這いずって行くし、朋樹が炎の蝶で燃やすと

頭の方が いきなり飛んで、オレらのテーブルに乗る。


ジェイドが「ニナ」と 蛇から離そうと立たせようとしたけど、蛇は ニナの腕に噛み付いて消えた。

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