『さて。本番だ』


エレベーターん中で シェムハザが言うけど

オレは、ずっとさっきんとこに いたかったぜ。


オレの金じゃないけどさぁ

カジノで 金 落とすより、女の子に落とす方がさぁ...  エレベーターが開く。


うわ! やったぜ! バニーちゃんだー!!

猫耳ちゃんもいるぅー!!


ジェイドと朋樹は、ゲームテーブルの方に

目がいってるけど

オレと泰河は 再び色めき立って、ガシっと握手する。いい!


ここもまず システム説明される。

現金をチップに交換するのは、各テーブルで。

ドリンクは無料。

バニーちゃんたちが、トレイにドリンク乗せて

うろうろしてる。


『200ずつ』


ジェイドがケースから出して、オレらに配るけど

もう、金に見えねぇ。悪魔って怖ぇ。


『残りとゴールドは泰河だ。

言っておくが、勝っては危機に陥らんが

負けたらハティに、魂で借りを返せ。

ドリンクを受け取ったら、クリップから

チップに 一枚ずつ渡せ』


「... 魂?」


『契約書を預かっている。

大丈夫。死後、親しい者に会えないだけだ』


どうしろってんだよ...

いや、冗談だよな?


で、ここでマネークリップか。

もう忘れてたぜ。


上の女の子、8人も降りて来たし

ジェイドと朋樹に任せて、一人だけ連れてく。

ボブのあんまり目立たない子。

さっきもいた気はする。

でも下着にブーツだぜコラ! なんかいい!


「遊ぶの 何しよかな? オレ 弱いんだけどー」

「うん... 」


えー、話 下手っぽい。かわいいけどさぁ。

ま、ゲームするんだし、いいかー。


「名前なにー? オレ、ルカ」

「リン」


うわ、呼びにくっ! リンと同じかよ?

今ちょっと、ボティス感じたぜ。


気を取り直して、ゲームテーブルは

ルーレットが 二台、ポーカー 二台、バカラ 二台

ブラックジャック 一台。周囲には スロット。


休憩用テーブルの近くには、ダーツとかもある。


「ブラックジャックしよーと思ってたんだけど

バカラかなー。考えなくていいしー」


バカラテーブルに行って、最低賭金ミニマムベット

でかい方を選ぶ。


椅子に座って、テーブルに 100置く。

当然 注目されるし、隣に立つリンちゃんも

上の店で見てんのに、また目を丸くする。


「全部、一枚 一万のチップでー」


わがまま言ってみるけど、やっぱり通った。

バニーちゃんから シャンパン 二つ受け取って

抜かり無くクリップから 一枚 抜いて渡した。

よし。“なんだこいつ” みたいな視線 浴びてる。


バカラは、オレは賭けるだけ。仮想ゲームだ。

プレイヤーとバンカーの、どちらが勝つかに賭ける。いや、二組のカードテーブルに置いて

どっちもディーラーがやるんだけど。

仮想の二人のどちらかに賭ける ってゲーム。

勝敗もシンプル。

簡単に言えば、カード合計が9に近い方の勝ち。

運だけのゲームだな。


オレはプレイヤーのみに、チップ20枚ずつ賭け続けた。勝ったり負けたりしてたけど

だんだん負けが込んでくる。

やっぱりなぁ。腕のいいイカサマディーラーだ。

普通は 一回ずつ新しいカード開けるんだけど

ここ、何度か カード換えねぇし。


「... どうして、バンカーには賭けないの?」って

遠慮がちに リンちゃんが聞く。


「だって、確率は 50パーセントなんだぜ?

どっちでも同じだよー」


するするとチップ無くして、またテーブルに 100置いて、どんどんプレイヤーに賭けて

シャンパン飲んで あくびする。


「あーあ、すっちまった。けど楽しかったし。

オレのツレんとこ行こうぜ。こづかい もらおー」


オレ、いつもより輪をかけてバカっぽいよなー。


歩きながら「わざと 負けたの?」って

リンちゃんが聞く。


「いや、勝ちたかったんだぜ。

そしたら、デートに誘えたのにさぁ」


「あはは」


あまりに 社交辞令 過ぎたか?

いうか、彼氏いたら困る感じのこと言ったよなー。ごめん とも言えんしなぁ。


「ルカくん、モテるでしょ?」

「ぜーんぜーん」


無難に返してきたよな。

口下手そうで、そうでもないのかもなー。


ちょっと見てたら「ん?」って見上げてくる。


「かわいいよな」

「嘘ばっかり... 」

「コンパクトな胸が」

「えっ!... もう! 気にしてるんだけど!」


ぺし て 小さく 腕 叩かれる。

ふうん、かわいーじゃん。


「ね、お友だちの人でね

一人 ちょっと、大人の人いるよね?」


「えっ?」


シェムハザか?


「どれのこと? オレら 四人だよ」


休憩テーブルで飲んでる ジェイドと朋樹のとこに

向かいながら聞く。シェムハザは 泰河のとこだ。


「嘘。ほら、あのヒゲの人の後ろにいる人」


シェムハザだ。


「見えんの?」って聞くと

リンちゃんは、あー... って顔した。


「うん... 」って言うけど

この子、みえる子で

人との区別が出来ないっぽい。


「ゆーれーとかも見えんの?」


「見えるけど、それは人じゃない ってわかるよ。

あの人は? キレイだよね」


えー...  悪魔って言いづれぇよなぁ...


「堕天使」


うん、これだ。悪魔よりソフトな感じする。

実際 間違ってないし。


「本当に?!」

「うん」


ビックリしてるけど、喜んでんなぁ。

猫耳ちゃんから、またシャンパン受け取って

チップ払う。


「でも、ルカくんの方が カッコイイよ」

「うわっ、愛想笑う気にもなれねぇし!」


「なんで?」とか言うけど

だって、あれはシェムハザなんだぜ。

ボティスなら まだ信じたけどさぁ。

いや、今はもう そーでもねぇけどー...


女の子たちが キャーキャー騒ぐ、ジェイドたちのテーブルから ちょっと離れたテーブルに着いて

「シェムハザー」って呼んだら

泰河の後ろから すぐに消えて、近くに顕れた。


シェムハザは、リンちゃんが見えてないと思ってるから『泰河が面白い。お前も見に来い』って

オレに言う。


「“シェムハザ” って、人と結婚したグリゴリ?」


おっ、詳しいじゃん。

シェムハザが驚いて、リンちゃん見る。


『彼女は見えてるのか? ただ姿を消してるんじゃなくて、術を掛けているのに』


「そうみたいなんだよなー、すげぇよなー」


リンちゃんは、シェムハザに

「本物なの?!」とか聞いて、かなり嬉しそうだ。やっぱりな感じだぜー。


『そう。性懲りもなく、また人を娶ったが』と

シェムハザが指を鳴らすと

下着だったリンちゃんは、シンプルなドレス姿になった。もう。余計なことすんなよなー。

コンパクトな乳も隠れたしよー。


「えっ、すごい... 」


『一応、城主だ』


へえ...  いつも気前いいけど

プレゼントは、プライドみたいのもあるんだな。

オレも ふうん... って見てたら

『悪魔だからな。そういうものだ』って答えた。


『天使や悪魔に詳しい?』


「あ... うん、多少は...

本物には、はじめて会ったけど... 」


『こういう場に似合う天使は?』


あっ、そうか!... って思ったけど

「えっ? あ... なんか 誰かいた気はする」って

リンちゃんも忘れてるみたいだ。


『思い出したら教えてくれ。

一緒に 泰河を見よう。テーブルに来い』


またシェムハザが消えて、泰河の後ろに立つ。


「行く?」って 言ったら頷くし

ルーレットの方に近づいてみるけど

よく見ると、なんか ちょっとした人だかりになってる。これ、泰河を見てるんだよな?


「ごめん、オレ そいつのツレなんだよね」って

リンちゃん引っ張って、人 割って入って

泰河の隣に行く。


泰河の向こう側には、リンちゃんと同じ店の子が二人いるけど、すげぇ心配気味に 泰河 見てる。


「よう、ルカ」


まだチップはある。

ただ、ジュラルミンケースは空だ。

マジか こいつ...


玉 投げる前に、ディーラーが緊張気味に

泰河を見る。


泰河は、黒8 一目賭けだ。

チップを何十枚... いや、百超えかも を 置く。


『最初は一枚だった。二枚、四枚と

倍に増やし続けている。ずっと8に 一目賭けだ』


マジかよ...


涼しい顔でシャンパン受け取って

クリップから 一枚 抜いて渡して

“やらねーのか?” って眼を、ディーラーに向ける。


たぶん、最初はディーラーも

“いいカモだ” って思ったんだろうけど

泰河は、ジェイドとオレのツレだ。

ヴィタリーニ家は、出資者の 一人だし

ジュラルミンケースは空だし

泰河は引かねーし、困ってんだろな...


けど 一目賭けだと、配当は36倍のはずだし

勝たれるのもマズイよな。


ディーラーが、意を決したように

回った盤に玉を投げた。


「負けだ」と、泰河が アッサリ言って

ディーラーが固まりつつも、ホッとしている。


でも「チップが足りねぇ。きんでもいいか?」とか聞き出した。

残りのチップじゃ 今の倍に出来ん、ってことか。


キャスター付きのケースには、インゴット。

一本1キロのやつだから、たぶん 一本 450万くらい。ハティの練金だけどさぁ。


「いや... 」と、掠れた声で

ディーラーが断ろうとするけど

周りからは、歓声が上がる。


「私では、返答しかねますので... 」って

細い声で答えてた時、支配人だか何だかの

やばそうな 和服のじいちゃんが

黒服の警備みたいのを、三人 連れて来た。


一応、オレが「ヴィタリーニ家の者です。

大叔父の代わりに来ました」って、握手する。


「遊んで 頂け」と、じいちゃんが言って

ジェイドの方へ歩いて行く。


ディーラーが唾飲んで頷くと

泰河は 8のマスに、インゴットを 一本 置いた。

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