「おかしいだろ、絶対」


入る仕事、全部 心霊スポット関連。

盆休みとかも終わってるし、学校とかも始まってるはずだ。


もうさぁ、言っちまえば軽いヤツ。

すげぇのとかは出ねーの。


“髪の長い女” “白いワンピース” “足がない”

“追いかけてきた” “家まで付いて来た”

“憑かれた気がする” “涙が止まらない”

“肉しか食べれなくなった” “フラれた” ...

いや知らねーし ってヤツ混じってね?

けど、ジェイドが神父で話して 慰めるし。


で、みてみたら 本当に軽いの憑いてたりする。

天の筆で出して、泰河が右手で浄化して

朋樹は集団の祓い、ジェイドは場所の浄化。


絶対、いちいち行くハメにはなるんだよな。

で、『この程度ならなぁ... 』って

報酬 少なくしちまう。


一回なんか、ジェイドが その少ない報酬を

『寄付しないか?』とか言い出しやがって

『うん、そうだな』って言った朋樹を

オレと泰河が必死で宥めた。


これ、ボティスが遊んでるよな。オレらで。

神使の方が天使ボティスに左右されやすいっぽい。

あいつ たぶん、“働け。だが俺の服は高い” って

言いてーんだし。


おまけに、こういう細かい仕事の時こそ

榊が 扉 出しゃあ早いのに

『儂は、沙耶夏とゾイとおる故』ときた。

『“じょしかい” というものよ』だってよ!

急に オンナノコかよ!

ゾイだけじゃなく、たまに浅黄 混じってんだぜ。

ジョシカイって言葉コトバ言いてーだけだろ。


ボティス...  月夜見キミサマ 出させねぇつもりだ。

本当に早く喚んで、直接 文句言わねーと気が済まねー。


「次 どこー?」


今日は、朝からもう7つ目の仕事だし

バスん中で ゲンナリしながら 朋樹に聞く。

泰河もジェイドも運転する気なしで

全員 後ろにいるし。


朋樹も缶コーヒー、ずっ とか啜って

「オレなんで、これ買ったかな? まじい。

キライなのに」って、スマホチェックする。

うん。それは、ボティスか疲れか わかんねー。


「学校だな。人体模型が動くし

ピアノが鳴るし、絵が動いて、階段が増えて、

鏡に死ぬ時の自分が映って、トイレには女の子がいる。七つ目はわからん」


ふざけんな...  七つ目知ると ヤバイ系かよ。


「一応、その学校の校長からの依頼だとよ。

夜 学校入ったりして、面倒くさいんだろな」とか

ため息ついて、朋樹がスマホ投げる。


「だいたい、階段 増えたからって 別に良くね?

五十段くらい増えたらイヤだけどさぁ」


「怪異の内容が やたらベーシックだね。

僕でも知ってる。あいつ、教会の本棚の

“学校の七不思議” 読んでたからな... 」


「棄てちまえ、そんなの」


「どーするよ?」「行くのかよ?」とか

ぶつぶつ話し合って

「とりあえず 飯 食ってから考えよーぜ」って

なったのに、七つ目なんだよ って気になる。


ダイニングバーで、泰河が

鶏軟骨揚げとか、唐揚げとか 手羽グリルとか、

チキンソテーとか オーダーしやがって

オレ軽くキレたし。

そしたら、ジェイドが「まだ暑いね」って

マリネばっか 四つも取りやがってさぁ!

腹立つよ、オレ!


「ちょっと! おまえら 何考えてんだよ!」


「悪ぃ。七つ目が気になって

メニューが 一部しか入ってこねぇ」


「七つ目は オレも気になってんだよ!」


「でも、知ったら死ぬんじゃないのか?」


朋樹が「“行け” ってことだろ」って

マリネのセロリつまんで

「女の子って、セロリ好きな子 多いよな」とか

どうでもいいこと言い出すけど

ボティスも セロリ好きだ。マリネが特に。

切れてると 機嫌 悪くなる。

作っとかねーと うるせぇんだろーな...


「しかも、カトリック系の高校なのにな」


おい 待てよ...


「高校で七不思議 ってあるのか?」


「ねぇよな普通。小学校だろ」


「... なんてとこ?」って、一応 聞く。


明月あかつき。私立だな。共学らしい。

めずらしいよな、別学イメージなのに」


朋樹が答えると、ジェイドが オレを見た。

くそ、あいつ...  妹のリンのとこだ...


「偏差値、70?」


うん、そ。もちろん オレの母校じゃない。

オレとリンじゃ、およそ倍は違うんだぜ!

ジェイドやヒスイは、リンくらいなんだけどー。


「オレ、ヘンサチってイマイチわかんねぇ」


オレ、泰河すきー。


ジェイドが「知りたいのか?」とか聞いて

泰河は「全然」って、鶏ばっか食う。

オレも鶏ばっか食うし。


「朋樹も変わらないだろう?」


「でもオレ、泰河と同じとこ行ったしな」


けどクラスは違ったらしい。特進てヤツ。

へー すげー。


オレと泰河は、つまんねーから

七つ目を予想する。


「踊る銅像じゃね?」

「歩くだろ。空かずの部屋とかさ」

「あっ、“ドアん中 塗り込められてる” とか?」

「いつの間にか 知らない子が混じってる とか」


竜胆リンドウに聞いてみたらいいじゃないか」


あっ、そうか。


で、リンに電話して

「なあ、おまえんとこさぁ、学校の七不思議とかあんのかよー?」って聞いたら

『ニイ、いくつだったっけ?』とか 言いやがる!


ジェイドが代わって

「それが 真面目な話なんだ」って言ったら

『あるよー』って 答えやがった。


「おっ、妹美人だよな」って 朋樹。

うん、まぁな。

「ルカと ちょっと似てんのにな」って 泰河。

うるせー。


『やだ似てないし』


「おまえ... 」


『何故か、高等部に噂あるんだよねー。

肝試しデートのためっぽい』


オレ、この辺りは平気へーき

こいつの男、大学生だし 遠距離だしさぁ。


『で、最近立った噂 っていうのが変だよね。

デートのために、誰か流したのかな?』


そ。ボティスがな。


「そうかも。で、竜胆は僕と行くんだろ?」


『うん、ジェイドがいいー。

従兄弟って 自慢したぁーい』


うわ ジェイド、“見ろよ”って顔しやがった。

こいつ最近、高校くらいん時の表情かお

よくするんだよな... 悪ぃツラしやがんの。


でもオレ 負けねーし!


「おまえ、オレの自慢しろよ!」


『うるさいからイヤ』


もう 唐揚げ全部食うぜ オレ。


「七つ目って何?」と、朋樹が聞く。


『五コしか わかんない』


こいつ意味ねー。




********




けど学校だ。私立 明月学院。

もう帰宅してた学院長 呼び出して、話ししたけど

またさっさと帰りやがった。怖がりっぽい。


とりあえず、宿直の人に 鍵 開けてもらって

警報装置とか切っといてもらう。

宿直の人も「終わったら教えてください」だし。


案内役に 一緒にいるのは、リン。

リンの友達のマユちゃんとミサキちゃん。


オレ、会ったことあるのに

二人は ジェイドと朋樹にキャーキャー言う。


リンは ともかくとしてもさぁ

オレ、つらくね?

けどまぁ “友達の兄ちゃん” だしな。


泰河のことは、なんか怖がってるっぼい。


「おまえ、ガラ悪ぃもんなぁー。

フマジメなヒゲだしさぁ」


「あ?」


そしたら「あんまり変わらなくない?」

「寄り 似てるよね」とか 言われて


「なんだとコラ!」って言ったら

さっきと違う キャーキャー言いやがる。

オレ、ガラ悪くねぇし!

どっちかと言えば、かわいいタイプじゃねーかな。って思う。昔よく言われた。うん、昔は。


でさぁ、三人共

「ジェイドと朋樹と行く」って言うんだぜ!


「おい! 案内はよ?」

「人数割り おかしいだろ!」


「おまえら、七つ目 探せば?」

「六つは解決しとくよ。朋樹が」


うわぁ...  いや別に、高校生とか いいんだけどさ

オレと泰河の この負けた感...


「リン、いいなぁー... 」 

「ふたりとも、彼女いるんですかー?」


「こいつの妹と付き合ってるよ」

「いるけど、たまに竜胆とデート」


ジェイド、さらっと嘘つきやがった。

それでもキャーキャー言われながら

校舎に入っていく。残るオレら。


「行くか... 」

「おう... 」


なんだろう。ヤツらの背中が遠いぜ。



オレらは、とりあえず 銅像 見に行った。

校庭にあるのは、“考える人” だ。全然 普通。


「全裸でマジメな顔だぜ。

裸の時に、どうしたら こうなるんだよ?」

銅像これ 見た方が 考えるよな」


懐中電灯で、下から 顔 照らす。動く気配 無し。


ん?


考える人って、口に手の甲 充ててんだけど 

気づいちまった。


「これさぁ、顔 泰河に似てね?」


「はあ?」


泰河が銅像の正面に立って、顔を見上げる。


「... えっ?」


おっ。本人が思った以上に

似てたみたいだな。


銅像が急に顔を上げた。閃いたのかよ?

顎ヒゲがある。あいつ、やりやがった。


銅像は立ち上がり、台座を飛び降りると

すげぇ しなやかなキレで踊り出す。

股間には、楽園のアダムとエバの絵画みてーな

葉っぱ付きだ。考慮してやがる。


「おい! 普通歩くだろ! 歩けよ!」

「あいつ、動画でダンス観てたからな... 」


うまいなぁ。リンがダンスやってるから

オレも たまにステージ観に行ったりするけど

流れるように指先まで しなやかだ。ジャズだな。


「なかなかだ」


泰河だ。言わされてるじゃん。

すぐにハッとして「おまえ 拘束しろよ!」って

キレてやがる。


仕方なく、地の精で拘束したら

泰河が すぐに、右手で 銅像の額 掴んだ。


「あーあ... 」


銅像からヒゲなくなって、元の顔になると

考える人スタイルになって 地面に転がる。

葉っぱは落ちなかった。


「“あーあ” じゃねぇよ。どうすんだよ、これ」


転がった銅像は、ちょっと傾けてみたら重いし

「良くね?」

「じゃあ、他の見てみるか」と、銅像は放置して

校舎に向かうことにした。



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る