第3話 勇者、世界に宣戦布告する。

 王城を占拠した勇者タケルは王座に座り捕らえた姫を膝元に座らせて葡萄酒を注がせていた。


「タケル様、これを……」


 震える指で注がれた葡萄酒を手にするとそれを一気に飲み干した。


「やっぱ、あのくそったれから奪い取った酒は格別だな。あんな経済も分かってない。奴隷制度はガンガンやって侮蔑し国民をないがしろにしてこんな王宮でふんぞり返ってるやつなんてとっとと殺すに限るな」


 足元に転がる王の首をみてそれに景気よく蹴りを入れた。

 それを気持ちのいいほど鈍い音を立てながら上空に舞い上がり壁にぶつかってつぶれた顔になって転がり落ちた。


「こんな王様は世の中にいたら駄目だな。異世界からちゃんと勉強してきた俺の方がよっぽど賢い。死んで当然。なんでこんな馬鹿が世の中納めちゃったんだろうね。あーかわいそう。こんな王様より俺の方がえらくね? そう思うだろ。姫様よ」


 王の転がる首を見て顔を青ざめた姫様は泣き出しそうな顔を浮かべながらゆっくりと勇者タケルを見た。だけど、その顔をどうしても直視できずに視線を逸らす。


「……はい」


 勇者タケルは逸らした視線が気に入らず、指で顔を向けさせ無理矢理、視線を向けさせた。


「やっぱ姫様はかわいいね。大丈夫。俺はかわいい至上主義だから君を大事にしてあげるからね」


「こわい……」


 姫の一言に勇者タケルはため息一つ付けると姫を自室に戻るようにガチャ階級SR級のミカエルにエスコートを頼んだ。


「やっぱ、この世界は色々駄目だわ。政治も社会も全部腐敗だらけ。貴族は自分達の至福を肥やし、国民をないがしろにして飢饉対策は焼き討ちとかマジないわ。俺がここに来た頃にお世話になった村なんてあっという間に灰にされたしな」


 勇者タケルは思いに耽ながら最初にガチャで産み出したR級のシルフに声をかけた。

 だけど返事はない。先ほどの惨状をみて血の気を失せているようだ。


「だから、これからこの世界をもっと良くしようと思う。手始めに世界征服してみるか」


 こうして世界は魔王の時代が終わり、新たな暗黒時代の幕開けとなったのである。

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