第5話 ドアの向こうには。

 菜の花公園の、少し大きな穴に入り、地下の暗い道を走る。

「菜緒花、早く。早く開けろ!」

 すると、勢いよくドアが開いた。

「ちょっと、何?あんた一週間何してた?もうすぐお父さん帰って来るんだから話は短くしてよね!」

 俺はホッとした。菜緒花はまだここにいた。

「なあ、すまないけど、部屋の中に入るぞ。」

「え、ちょっと待って!」

 中に入ると、階段がすぐ近くにあったので、階段を登った。

 すると小さい部屋に出た。部屋にはベッドと勉強机と木でできた椅子。あと小さい本棚があった。

「ねえ、勝手に入らないでよ!お父さん帰ってきたらどうすんのよ!」

 俺は菜緒花の言葉を無視して、白いドアを開けた。

 すると、天井がガラス張りの大きな部屋に出た。

 少し大きな机と二つの椅子、そばにはキッチン。天井から漏れる月の光に照らされて、輝いていた。

 他にドアが二つあり、一つはトイレや風呂場に繋がっていて、もう一つはどうやら菜緒花が『お父さん』と呼ぶ人の部屋らしかった。

 奥まったところに、一つの茶色いドアがある。

「そこは、開けちゃ……。」

 俺は迷わず、ドアノブをひねる。

「だめ!」

 俺は、勢いよくドアを開けた。

 俺も菜緒花も、声を失った。

 二人で、立ち尽くしていた。



 ドアの向こうには。



 家が建ち並んでいた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る