第2話 ただの人間

「そういえばさ、何であの時地底人って言ったんだ?」

 俺と菜緒花は銀のドアの前の床に座って雑談中である。

「そりゃあだって、あんたが私ん家の地下室のドアの向こうにいたんだもん。」

「いやいや、外歩いてたら地下道見つけて、そのまま歩いてたらここに着いたんだよ。俺地底人じゃない、ただの人間。」

 一か月前。ここで俺と菜緒花は偶然出会った。

 その後お互いどういった暮らしをしているのか気になり、こうしてドアの近くで雑談をしている。

 ちなみに、菜緒花は父と二人で暮らしていて、父は夜遅くまで帰って来ないらしい。自称人間だが、車もテレビも知らないというので、怪しい。

 俺は両親共働きで家にほとんどいない。高校一年だが、不登校である。菜緒花と違って車やテレビなどは知っているし、スマホも持っている。それを知らない菜緒花は、俺が地底人だと思っているらしい。

「はいはい。それで、あたし最近変な夢見るんだよね。なんかね、誰だか知らない人の後ろをついていく夢。」

「へー。前世で何かあったんじゃないか?」

 何度も同じ夢を見る、というのは、だいたい前世で起こった出来事か近々怒る出来事だと言われている。

「あんたさ、あたしを連れてどこかに行こうと考えてないよね?」

「は?何でだよ。まずどこかってどこだし。」

 菜緒花は少し考えて、

「地底人の世界。」

 と言った。

「だから俺人間。地底人はお前だろうが。もう俺帰る。」

 俺は立ち上がって早足で家に帰った。



 私、菜緒花は自室に戻った。

 特にすることもないので、絵を描くことにした。

 何時間かした後つまらなくなり、日記を書くことにした。


 今日は、地底人とあたしの変な夢の話をしました。

 地底人は今日も、自分が普通の人間であると言っていました。


 時間が少し経つと、お父さんが帰って来た。

「今日は、何をしてたんだ?」

 お父さんは少し疲れた顔で、私の部屋に入ってきた。

「今日はね、絵を描いてたの。」

 地底人のことは、お父さんには秘密にしている。

 私は日記を引き出しにしまい、眠りについた。

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