ドアの向こうに。

からあげ餅

第1話 地底人

 俺は、地底人に会いました。


 私は、地底人に会いました。


 彼女はとても、優しくて。


 彼はとても、面白くて。


 ずっと、独りぼっちでした。



 多分、高校では夏休みだ。

 俺は約三か月、学校に行っていない。

 小さい頃からずっとそんな感じだから、もう慣れてしまった。

 夏のジメジメとした暑さと、セミの鳴き声に腹が立ちながら、今日もいつもの場所へ行く。

 菜の花公園の、男子トイレの窓から外に出て、少し大きな穴に入る。

 暗さに目が慣れたころ、俺の目的地に着く。

 厚い銀色のドアに向かって、叫ぶのだ。

「菜緒花ー!」

 しばらくすると、彼女が出てきた。

「何よ、急に。」

 地味な白いワンピースに、白いリボン。それに合うように、真っ黒な髪。


 彼女……北山菜緒花は、地底人である。


 今から一か月前。

 ちょうど菜の花公園の男子トイレの窓が開いていたので、何気なく外を見ていたら、すぐ近くの草原に大きな穴があった。

「なんだよ、これ……。」

 気になったので入ってみると、道があり、どこかにつながっていた。

 暗くてほとんど何も見えない道を、ゆっくりと進んでいく。

 しばらく歩くと、厚そうな銀色のドアがあった。道はそこで終わっている。

 ドアを開けようとするが、開かないので、

「あのー、誰かいるんですかー?」

 と言ってみた。が、ドアは開かない。

 なので、ドアを何度もたたいた。それでも開かない。

「……帰るか。」

 俺は諦めて帰ろうとした、その時。

「あー、もう、何ようるさいなー!」

 という声とともに、銀色のドアが開いた。

 ドアの向こうには、白いワンピースに白いリボンがついたものを着た、黒髪の少女がいた。

「も、もしかして……。」

「君って……。」


「地底人⁉」


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る