劉裕論41 明末 王夫之 9下
ああ! 君主は礼をもって励まし合い、情をもってむつみ合うことを人に求める。間違っても小人どもがこぞりあって、それを「雄」であるだなどとは語らぬ。
自らの抱く怒りや憂いを他人にも同じく抱くようにせよ、だなどとは、父が子に抱かせることすら難しかろう。そんなことにすら気付かず、愚者は声を大とし、それを他者に求めるのだ。その声に仮に誰かが渋々応じたとて、本当にそれは頼みとするに足りるだろうか? もしそのあたりもわきまえず、怒りや憂いに基づいて他者を損ねようとするものがあれば、妄執の人というべきであろう。妄執の人は、放っておいても滅ぶ。そのような者が、どうして他者の危地を救いえるだろうか?
他者を頼みにしておのが都合を失念したり、損なうのは、どちらも愚行である。論語でも
また
明察なるものはこの点によく通じている。そのため自らをどう高めるかの判断を自らの責任において選び取り、他者の援助がなかろうと、恨みに思うことはない。故に自立し得るのだ。このような言葉もある。「他人を父と仰いだところで、必ずしもこちらを顧みようか他人を兄と慕ったとて、必ずしも我が言葉を聞き入れてくれようか?」他者がこちらを援助しようと思ってくれるかどうかは、情勢によって変わる。これこそがものの道理である。それを得られなかったと恨んだところで、もはや遅きに失しているのだ!
嗚呼!君子之所望於人者,以禮相獎、以情相好已耳,非若小人之相倚以雄也。己所怒而欲人怒之,己所憂而欲人憂之,父不能得之於子也。愚者不知,呼籲而冀人之為我怒、為我憂也,弗獲已而應之,安足恃乎?若其不揣而為人憂怒以輕犯人者,則必妄人也。妄人先以自斃,而奚以拯人之危?齊桓次於聶北,能遷邢以存之,而不能為邢與狄戰;吳為蔡請全力以攻楚,而夫概先亂吳國,蔡亦終滅於楚;恃人而忘己,為人恃而捐己,皆愚也。君子不入井以望人之從,則不從井以救人,各求諸己而已矣。嵇叔夜不能取必於子,文信國不能喻誌於弟,忠孝且然矣。顏淵曰:「夫子步亦步,趨亦趨,己瞠乎其後矣。」子曰:「當仁不讓於師。」學問且然矣。況一己之成敗利鈍而恃人之我援哉?明者審此,自彊之計決,而不怨他人之不我恤,而後足以自立。「謂他人父,亦莫我顧,謂他人昆,亦莫我聞。」情也,勢也,即理也。不得而怨,何其晚也!
嗚呼! 君子の人に望む所。禮を以て相獎め、情を以て相い好すのみ。小人の相い倚るを以て雄とせるが若きに非ざるなり。己の怒る所にして人の之に怒らんことを欲し、己の憂う所を人に之を憂えんと欲すは、父にても子に之を得らしむ能わざるなり。愚者は知らず呼籲し、人の我が為に怒り、我が為に憂えんことを冀うなり、已むを獲る弗く之に應ずるも、安んぞ恃むに足らんか? 若し其を揣らずして、人が為に憂怒せるを以て輕に人を犯す者、則ち必ずや妄人なり。妄人は先ず以て自ら斃ず。奚ぞを以て人の危きを拯けんや? 齊桓の聶北に次すに、能く邢を遷をし以て之を存ぜしめ、而も邢が為に狄と戰うに能わず。吳の蔡が為に全力を以て楚を攻むべく請い、而して夫概の先ず吳國を亂し、蔡は亦た終に楚に滅ぼさる。人を恃みて己を忘れ、人を恃み己を損なうを為すは、皆な愚なり。君子は井に入りて以て人の從を望まざれば、則ち井に從いて以て人を救わず、各おの諸もろを己に求むのみ。嵇叔夜は必を子に取る能わず、文信國は弟に誌を喻す能わず、忠孝すら且つ然れり。顏淵は曰く:「夫子步さば亦た步し、趨さば亦た趨し、己、其の後にて瞠たり」と。子曰く:「仁に當りては師に讓らず」と。學問も且つ然れり。況んや一己の成敗を利鈍とし、人の我を援くを恃まんか? 明なる者は此を審らかとし、自彊の計を決し、而して他人の我を恤えざるを怨みず、而る後に以て自立せるに足る。「他人を父と謂うも、亦た我を顧る莫く、他人を昆と謂うも、亦た我れ聞く莫し」。情なり、勢なり、即ち理なり。得ずして怨むは何ぞ其れ晚きや!
(安帝19-2)
大テーマ「独立独歩の思考マジ尊い」、これについてはまぁ、諸手を挙げて大賛成。けどうさんくせぇ、論調がうさんくせぇよ
論の進め方的には結構緻密だなぁ、そうちょいきっちり読み込めれば「論理展開」的な意味では学びをたくさん得られそうだなぁとも思うんですが、ちまちま飛び出してくる引用たちの用いられ方がマジでやべー。「虚偽罪だけど愛国無罪」みたいな印象すら受けます。
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