劉裕論8 武周 朱敬則 2
ある者が問う。
「先の歴史において、敵を倒し秀俊を得る、このような奇跡を、
君子は答える。
「確かに、多くの秀俊は得た。しかし、彼の前に大敵はいなかった。例えば、
これに対し、
また
むしろ宴会をしながら戦略を練り、千里の外を見通し、作戦決行の期日を探っていた。そして寸分の手落ちなくやってのけた。これだけ緻密な作戦を、過去の君子たちはなしえただろうか?
ただ、その業績において禮樂や文明を充実させるいとまが無く、世の教化、徳の奨励などについて盛んとなったとは言えぬ。これらを総じれば、劉裕様が
或問,前史云:「克敵得雋,奇跡多於魏武,此確論乎?」君子曰:「得雋雖多,前非大敵。若乃黃帝斬蚩尤,高祖制項籍,光武抗尋邑,曹公挫本初,此是奇跡也。至若慕容超政不在躬,奴仆下品;姚泓宗枝猜貳,借手於人。盧循祅寇之餘,譙縱新造之國,因釁取亂,何足可稱?至乃潛算樽俎之間,明見千里之外,揣機料日,不爽錙銖,亦古之誌士,何以加焉?但禮樂文明,日不暇給;垂風邁德,盛所未能。人望不逮於建安,天命乃光於魏武。」
或るもの問うらく、「前史にて云いたる、敵を克し雋を得るは、魏武に奇跡多し、此れ確かなる論か?」と。君子は曰く:「雋を得ること多かりしと雖ど、前にては大敵なるに非ず。乃ち黃帝の蚩尤を斬り、高祖の項籍を制し、光武の尋邑に抗い、曹公の本初を挫けるが若きは、此れや是が奇跡なり。慕容超は政を躬らにせず、奴仆下品にし、姚泓は宗枝に猜貳し、手を人に借るに至るが若し。盧循は祅寇の餘、譙縱は新造の國、釁に因りて亂を取る、何ぞ稱うべくに足らんか? 至乃ち樽俎の間に潛算し、千里の外を明見し、機を揣ね日を料り、錙銖に爽えず、亦た古の誌士なれば、何ぞを以て加えんか? 但だ禮樂文明は日に暇給せず、風を垂れ德を邁んとし、盛んなる所未だ能わず。人望は建安に逮ばず、天命は乃ち魏武に光る」と。
奇跡多於魏武
天命乃光於魏武
が対句的に機能してるんだろうなぁ、という感じなんですが、このパート全体を読むと「劉裕は人為で確実な地歩を築いた」ように見え、「曹操には奇跡と呼べるべき事項が多かった」ように見えるので、「より天に愛されていたのは曹操」という認識として取れそうなのだけど、どうなんだろう。
ネタバレしちゃうと、朱敬則は劉裕について「智士」という言葉を用いている。途中で微妙に詩経を引用してきたりとかもあるので、やはり徳盛んなるものこそが天下の主たるべし、という感じであり、ここでも「徳はやや足りなかった」としている。となると、やっぱり曹操のほうが……なのかなぁ。ちょっと早々に結論づけるのはこわい。
朱敬則の曹操論を読んできましたが、知者だけど猜疑心が大概やばかったよね、みたいな感じで書かれてるんですよね。だから大きな領土は確保できたけど……みたいな感じ。うーん、これ朱敬則の文章全部拾ってこないと話の全貌見えなさそうだなぁ。北斉だけ三代拾ってるあたりとかも重要っぽいし。
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