応援コメント

「紫微垣」苻堅載記2」への応援コメント


  • 編集済

    こんばんは。
    1は氷月さんがやられたので、2は私めがやってみました。
    『晋書』の漢文はやはり綺麗ですね。なお、「聽吾死問,汝使即尊位」の「使」は衍字のようですね。削除して読み下しております。

    台湾中央研究院 漢籍電子文献
    http://hanji.sinica.edu.tw/

    超便利ですよ!



    堅大怒,召慕容暐責之曰:
     堅は大いに怒り、慕容暐を召して之を責めて曰わく、

    「卿父子幹紀僭亂,乖逆人神,朕應天行神,盡兵勢而得卿。
     「卿が父子の幹紀は僭亂にして人神に乖逆せり。朕は天に應じて神を行い、兵勢を盡くして卿を得る。

    卿非改迷歸善,而合宗蒙宥,兄弟布列上將、納言,
     卿は迷を改めて善に歸するに非ず、しかして合宗は宥(赦)を蒙り、兄弟は上將、納言に布列す。

    雖曰破滅,其實若歸。奈何因王師小敗,便猖悖若此!
     破滅を曰うと雖も、其の實は歸するが若し。奈何(いかん)ぞ王師の小敗に因り、便ち猖悖すること此の若からんや!

    垂為長蛇於關東,泓、沖稱兵內侮。
     垂は長蛇(蟠踞と同義?)を關東に為し、泓、沖は兵を稱して內に侮る。

    泓書如此,卿欲去者,朕當相資。
     泓の書は此くの如し、卿の去らんと欲さば、朕は當に相い資すべし、と。
     ※卿の~以降は書の文面ですね。訳文が正です。

    卿之宗族,可謂人面獸心,殆不可以國士期也。」
     卿の宗族は人面獸心と謂うべく、殆(ほとん)ど國士を以て期するべからざるなり」と。

    暐叩頭流血,泣涕陳謝。
     暐は叩頭して血を流し、泣涕して陳謝せり。

    堅久之曰:
     堅は之を久しうして曰わく、

    「《書》云,父子兄弟無相及也。卿之忠誠,實簡朕心,
     「『書』に云えらく、『父子兄弟は相及ぶなきなり』と。卿の忠誠は實に朕の心を簡(緩)にす。
     ※簡心は「明らか」の意でよさげです。訳文が正です。訓読は「心に簡なり」ですかね。

    此自三豎之罪,非卿之過。」
     此れは自ら三豎の罪にして卿の過に非ざるなり」と。

    復其位而待之如初。
     其の位を復して之を待つこと初めの如し。

    命暐以書招喻垂及泓、沖,使息兵還長安,恕其反叛之咎。
     暐に命じて書を以て垂および泓、沖を招喻し、兵を息(罷)めて長安に還らしむれば其の反叛の咎を恕さんとす。

    而暐密遣使者謂泓曰:
     しかして暐は密かに使者を遣りて泓に謂いて曰わく、

    「今秦數已終,長安怪異特甚,
     「今、秦の數は已に終らんとし、長安の怪異は特に甚し。

    當不復能久立。
     當に復た久しく立つ能わざるべし。

    吾既籠中之人,必無還理。
     吾は既に籠中の人、必ずや還るの理なからん。

    昔不能保守宗廟,致令傾喪若斯,
     昔、宗廟を保守する能わず、傾喪せしむることを致して斯くの若し。

    吾罪人也,不足復顧吾之存亡。
     吾は罪人なり。復た吾の存亡を顧るに足らざるなり。

    社稷不輕,勉建大業,以興復為務。
     社稷は輕からず、勉めて大業を建て、興復を以て務と為せ。

    可以吳王為相國,中山王為太宰、領大司馬,汝可為大將軍、領司徒,承制封拜。
     吳王を以て相國と為し,中山王を太宰と為して大司馬を領せしめ、汝は大將軍と為りて司徒を領し、封拜を承制すべし。

    聽吾死問,汝使即尊位。」
     吾が死問(訃報)を聽かば、汝は尊位に即け」と。

    泓於是進向長安,改年曰燕興。
     泓は是において進みて長安に向かい、年を改めて燕興と曰う。

    是時鬼夜哭,三旬而止。
     是の時、鬼は夜に哭し、三旬にして止む。

    泓謀臣高蓋、宿勤崇等以泓德望後沖,且持法苛峻,乃殺泓,
     泓の謀臣の高蓋、宿勤崇らは泓の德望の沖に後(遅)れ、且つ法を持すること苛峻なるを以て、乃ち泓を殺す。

    立沖為皇太弟,承制行事,自相署置。
     沖を立てて皇太弟と為し、行事を承制して自ら相い署置せり。



    以下、訳文にも少々。

    その宗族は我が庇護を受け、その兄弟は将として高位に就いた。
     「蒙宥」なので「庇護」より「赦免」されたが適切。
     納言は大納言みたく高級官僚、「将」より「将相(大将大臣)」がよさげ。

    その実態は飽くまで秦への帰属扱いである。
     「帰するが如し」は「家に帰るようなもの」の意ですね。

    賓客として遇するべき者らではなかったな
     「国士」なので、一角の人物の意ですかね。「国士」ままがよさげです。



    「長蛇」
    なるほど、包囲する軍勢が蛇ですか。面白い表現ですね。なるほどなあ。勉強になりました。

    基礎体力はつまり量ですから。『世説新語』はいい方法だと思いますが、惜しむらくは難しいですよね。内輪ネタ多すぎ。小説ネタの宝庫でもありますが。
    前も触れましたが、翻訳だけなら訓読は要らないですし。専門教育でやる理由は、文法だけでは教えられないから、過程を示させることで誤りを指摘しやすくなるくらいではないかと思いますね。楽しいからいいですけど(笑





    こんばんは。
    いささか補足をば。

    >心に簡なり

    『後漢書』の註に「簡心」があったようです。このように、いざとなれば用例を探して類推する根性が求められてしまうのです。ゲンナリ。


    〉竹東さんの訓読を拝見して、ここは「これを侍らす」の代字なのかな、と思いました。

    「待つ」は「待遇」から来ています。つまり、「遇する」と同義なのです。一筋縄ではいきませんね。


    >秦の數は~

    この數は命数から来ています。イメージ、大事です。


    〉ここの「復」は、なんであるの? って気がして仕方ないです。

    いい疑問です(池上さん風)
    復た〜ず、の構文は基本的にneverと考えてよいです。再びの意がありますから、その否定が二度と〜ない、になるわけですね。


    〉承制

    皇帝の代理権を持つの意ですね。承制封拝は人事権を意味し、承制行事は軍国の権を意味する、というくらいでいいと思います。

    質問は私も勉強になるのでありがたいです。意外と見落としているものですから。遠慮なく近況コメとかに書いて頂ければ、『大漢和』とかひっくり返して調べますよ。遅いけど。。。
    あと、指摘があったとかは本文では無視する方がいいですよ。読む人には関わりない、漢文好きの話ですから。

    作者からの返信

    ありがとうございます!

    と言うかこうやって読み下して頂けてると、
    基礎体力の違い的なものを感じます。
    いや本当、訓読文にするのすっごく青色吐息で……
    (訳文にするのは結構楽)
    デイリー世説新語で、基礎体力つくといいなあ。

    そうやって考えると、やっぱり
    「祭已畢焉」ごっこのためには、
    もっと訓読力訓読体力が必要ですね。


    さて、訓読比較はまた改めてさせて頂くにして、
    先に訳文の方はご指摘を受けて修正しました。
    「納言」かぁー……という。
    そんな単語すっかり抜け落ちてた。

    そして、一点だけ。

    >垂為長蛇於關東
    この時、慕容垂は鄴を包囲しています。
    もしかしたら包囲のイメージに「蛇がとぐろを巻く」
    ってのがあったのかもしれません。





    お世話様です。
    遅ればせながら、比較考察をさせて頂きました。


    >幹紀
    これはそのまま慕容側の動きとして拾っておくべきだったんですね。

    >納言
    既に先だって反応はしましたが、「納めて言わば」で、「所謂」的用法と思い込んでいました。うぬぬ。納言なんて言葉、ありましたねぇ……

    >猖悖すること此の若からんや
    こちらの方がカッコいいです。自分の奴だと、なんかたどたどしい。

    >殆ど
    変に「たいに」とか読み下しても仕方ないですね。ひたすら分かりづらいだけでした。

    しかし、べし、なりはやっぱり開かないと無駄に重いですね。

    >叩頭して血を流し、
    対句的用法ですし、読み下しも照応させるべきでした。

    >云えらく
    この言い回し、インプットします。言う、より明らかに字面が締まりますね。

    >心に簡なり
    ここの解釈は難しいな、と思いました。が、あんまり深く考えず「まーええねん、赦したる」だけで拾ってしまって、それ以上考えないようにするのも手なのかな、とかとか…w
    まぁこういうところの字釈で悩まずして、なんのための訓読ごっこか、と言うところでもあります。


    >之を待つこと初めの如し。
    ここ、自分の訓読では飛ばしちゃってますね。お恥ずかしい。結構悩んだ記憶はあるんですが。
    竹東さんの訓読を拝見して、ここは「これを侍らす」の代字なのかな、と思いました。


    >暐に命じて
    この方が文意が通りやすいですね。うーん、自分の中に中途半端にできあがりつつある訓読パターンに振り回されているようです。柔らかいうちにちょくちょく焼き直ししないと。

    >秦の數は~
    自分の読み下しが棒読みすぎて怖ろしくなりました……いやいや、いくらなんでも……

    >當に~べし
    推量か。確かにその方がしっくり来ますね。


    >還るの理
    「理」の扱いに物凄く困りました、ここ。そうか、こう言う形に出来たんですね。

    >致して斯くの若し
    この「斯くの若し」は、どこにあるとカッコいいのかな、という感じですね。自分の感覚だと自分の方なんですが、竹東さんの方が読み下しっぽい気がします。
    ……というかこの辺りの自分の読み下し、たどたどしいなあ。お恥ずかしい。

    >復た吾の存亡を顧るに
    ここの「復」は、なんであるの? って気がして仕方ないです。ただ、これまで読んできて、晋書の文章における意図の忍ばせ方は半端ないので、やっぱり無視してはいけないんだろうな、とも。深い、深すぎます。

    >吾が死問を聽かば、
    なんつーか、「hearing my dying,~」構文過ぎて、すごいな、とw

    >法を持すること苛峻
    なんでしょう、カッコいいかどうか、と言う基準で、のたうち回っています。正しいのだろうし、カッコいい。ぐぬぬ。

    >行事を承制して自ら相い署置せり。
    この専門用語ラッシュは、大人しく専門用語を勉強しろよ、的なお達しのように思えました……。

    うーん、割と訓読できてきたんじゃね、的鼻っ柱が思い切りへし折られた感じです。この、すぐに調子づいてフワフワした解釈を始めちゃうのは危ういな……。


    ここはオーブンな場ですし、訓読文については、より完成度の高いモノを提供すべきなんでしょうね。「どう俺が間違ったか」なんてのは、ローカルに残しておけばいい。

    明日がようやく休みなので、ガッツリ訓読文に手を入れていきたいと思います!

    編集済