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「城崎君ストップ!? 城崎君は奥の端っこにいて! わたしは扉側の端っこにいるから!」

「早瀬よ。そこまでオレ様が怖いか?」

「怖いよ! えーと、正方形のエレベータ室内は三平方の定理だと……1:1:ルート5?」

「ルート2だ。斜線が一番距離がある」

「…………」

「早瀬よ。試験前では、オレ様が数学を見てやる」

「……お願いしますっ」


 ひょんなことから、数学のヤバさがバレたり。


 狭いエレベータの室内。少しでも城崎君@女装と離れようと必死。

 たった1分ぐらいでも、逃げ場のない密室で男の人と二人っきりなんて恐ろしすぎるっ!

 たかが数センチの距離でも必死にもなりますよ。


「エレベーターの扉、閉めるけど……目的階のドアが開くまで絶対に動かないでね」

「オレ様は猛獣か何かか?」

「うぅぅ……ごめんね。それでもお願い……こうしてるのも無理なぐらいだから……」

「泣いてないで、さっさとドアを閉めろ」


 7階のボタンを押して、閉鎖をポチッ。

 チンッと音がして、徐々に閉まっていく自動ドア。


 完全な密室。男の人と二人っきり。

 …………

 ……

 …


「早瀬よ。なぜオレ様を睨む?」

「………ぅ」


 こ、声が出てこないっ!

 心臓はバクバクだし、汗はダラダラだし、胃から何かが湧き上がってきそう!

 ……でもっ。

 た、耐えてる……なんとか耐えてるっ!

 これまでのわたしなら絶対パニックになってるハズなのに、まだ冷静!

 怖くて動けないともいうけど……それでも平常心だけは保ってるっ!

 涙で滲んだ視線を動かして、増えていく階数表示を見据える。


  3階、

    4階、

      5階、

        6階、

          そこで、


 関東地方を震源とした、数百年に一度クラスの大地震が発生した。

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