04/12
「おーとこーは、ぜーんぜーん、こーわくなーいっ」
「……おーとこーは……ぜんぜーん……こーわくない」
「おーとこのこーは、おそったーりしなーいっ」
「……おーとこのこーは……おそったーり……あのね、城崎君」
「早瀬よ、集中しろ。口に出して自分に信じこませるのだ。続けるぞ。おーとこはいつもー」
「…………」
わたしの鼻先のすぐそばで。
穴に糸を通した五円玉が、ぶーらぶらと揺れていました。
ぶらーぶらー。一定の周期でぶーらぶら。
これを見続けてると、確かにアタマがおかしくなりそう。
だけど、それ以上に状況がおかしいよ……
真面目なツラして五円玉を揺らす城崎君@女装に、あたしは質問した。
「今やってる自己暗示療法、本当に効果あるのかな?」
ぶらぶら揺れる五円玉を見ながら、わたしは問いかける。
このアホみたいな儀式は、
男性恐怖症☆克服計画その2『自己暗示で恐怖を和らげよう』
だった。
男性恐怖症のあたしは、男の人が怖いと思い込んでいる。
その認識を変えるべく「男は怖くなーい、男性を恐怖しーない」と暗示をかけて、心理的な要因が大きい男性恐怖症を深層意識から治していく作戦だけど……
「おーとこはー、おーまえをー、なぐったーり、しーない」
「…………」
おかげで、少し男性への恐怖が和らぎました。
極限を超えたバカらしさは、恐怖を和らげる効果があるみたい。
たぶん何の役にも立たない研究結果だけど、いつか学会で発表したいです。
「城崎のやつ、なにしてるんだ?」
「馬鹿なこと」
教室の端っこで、クラスメイトがいつもの会話をしていました。
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