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小雨の降る街並みを。
傘もささずにとぼとぼと歩く、ハイテンションな女の子を眺めながら。
わたしは、決して届くことのない声で語りかけます。
――辛かったですよね、と。
―――泣きたかったですよね、と。
――――これで良かったんですよね、と。
何度も言いましたけど、天使の声って皆さんには聞こえないんです。
モノに触れて現実世界に干渉することはできても、文章や音で意思を伝えることは天使の就業規則で禁止されているんです。
だけど、少しぐらい、個人的な感情で人の運命に干渉してもいいと思うんです。
愛の天使なら分かる、新たな恋の種ぐらい撒いてもいいと思います。
新たな恋が始まるキッカケを、彼女にプレゼントしてもいいと思うんです。
――PLLLLLLL
「はい、もしもし……ふむふむ、クラスの連絡網? 明日の授業が変更になったの? そういえば電話番号教えておいたっけ? ……いやいや、逆に助かるわ。担任の浮気が奥さんにバレて夫婦喧嘩で全治一週間? 担任の家に『天使新聞』とかいう怪文章が投げ込まれたせいで、浮気が発覚した? なにその怪奇現象? 誰が犯人かしら……え? 泣いてないわよ。泣いてるわけ…………泣いてるわよ。バレバレなら、白状してやるわよ。あたしだって、ちっと泣きたくなることぐらいあるし……長くなるわよ。うん、けっこう長い話。それも全然面白くない話よ。おっけー。誰かに無性に話したい気分だから、本気モードでべらべら行くわよ。女が愚痴を言い始めたら、男は黙って聞いて、相槌を打って、同意してりゃいいのよ。最初から答えなんて求めてないし、共感して貰いたいだけだし、つまり黙って聞きなさい。さっき怪奇現象とか呟いたけど、これもいわゆる怖い話に分類してもいいのかな? まあ、ジャンルの問題はスルーして始めるわよ。
――あたしの通っていた中学校には、とある怪談が伝わっているの」
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