二日目1
俺は今猛烈に困っている。
ここはベットの中で俺が寝ているはずのベットだ。俺が寝ているのは良い、しかし何で上で寝ているはずのアーガがいるんだよ! 朝チュンか?朝チュンなのか?
何故このような状況になってしまったのか、冷静になって考える事にした。
「むにゃ、むにゃ、もう食べられないよ~」
考えようと思ったがアーガの寝言を聞いて、その気が失せた。こんな古典的な寝言は始めて聞くが本当は起きているんじゃないのか?
俺は雑にアーガを蹴り、ベットから突き落とす。
「フゴッ!」
女性らしからぬ声を上げて床に落ちたアーガが起る。此奴は女子力というものを持ち合わせていないのだろな。
「う~ん、もう少し寝たい」
アーガは打った頭をさすりながら俺のベットに戻ろうとした。
「まだ、寝ぼけてんのか、起きろ」
俺は寝ぼけたアーガを起こそうと鼻を引っ張る。
「う~、痛い痛い!」
やっとで目が覚めたのか、アーガは俺の肩をバシバシ叩きながら抵抗してくる。
「何するんだよ! って勝! 何で僕の部屋にいるんだい? はっ! 夜這い?」
此奴はまだ寝ぼけているみたいだ。
冷水でもぶっかけてやろうかと思っていたら、隣のベットから目線を感じた。
「何事ですか?」
「・・・」
俺達が五月蠅かったのかジョー君と丸さんが起きてしまった。
もう、起きても支障が無い時間帯なので、四人で朝食を済ませ、集合時間まで今日について話し合う事にする。
「今日は、合宿のメインと言っても過言ではない職業体験だけど魔物とか狩るのか?」
俺の浅はかな知識では冒険者=魔物狩りってイメージしかない、スライムやゴブリンといった有名な魔物を倒してお金を稼ぐのではないかと思っている。
「違いますね、あるのは間違いないですが、下手したら命を落としますので採集や町の雑用と言った感じになります」
流石は丸さんだ、ちゃんと予習しているみたいで詳しく説明してくれる。それとも、元いた世界にも冒険者がいたのだろうか。だけど、それだと退屈だな、日本でのバイトと余り変わらないのではないかと不安になってくる。
「あまり冒険しないんだな」
「冒険者は冒険してはならないって僕の世界ではよく言われてたな~」
アーガの世界には冒険者がいたらしいく懐かしそうに言った。
「そうなのですか? うちの世界では強い魔物に殺されてこそ冒険者の鏡って言われてましたね」
丸さんの世界には転生したくないな。強い魔物に殺されるって俺ならアンデットになりそうだ。
「それは置いといて今日は一日中、薬草集めや掃除なんかの雑用をさせられる訳か」
「そうなるねー」
「そうなりますね」
これは帰り際にお酒でも買って、晩酌でもしなければやってられなさそうだな
俺達は残り時間も少なかったので、さっさと準備をして集合場所に向かう事にした。
「皆さん! おはようございます! 昨晩はよく眠れましたか?」
ミルルの元気いっぱいの挨拶で、今日も一日頑張れそうだと思えてくる。
寝坊している生徒もいないみたいで、全員集合場所にはいた。もちろん先生は来ていないのであるが、ミルルも諦めたのか気にせず進行している。
「今日は希望職を体験して頂きます! では、一斑から順に来て下さい!」
呼ばれた一斑がミルルの所に行き、五分ほど話したら移動して行った。約二十分で俺達の番になる。
「勝さんの班は、ここから南西にある町で冒険者をしてもらいます!」
ミルルから地図を渡される。
南西ってことは昨日とは違う町になるのか、俺は地図とか読めないが大丈夫だろうか、そこは他のメンツに任せて問題無いと思いたい。
「冒険者は危ない職業になりますので、いつも以上に気を付けて下さいね! 町では問題は起こさないように! では、行って下さい!」
皆で返事をして町に行こうとしたら声をかけられた。
「おい、昨日のような問題行動はするなよ? 次は無いからな」
漸く起きたのか担任が出かける前に現れた。それよりも昨日のようなって、俺達は問題行動を起こしていないけどな。
他の誰かと勘違いしているんじゃないかと思ったが、どうも特定の一人に向けられた言葉だったらしくジョー君が顔をしかめていた。
あんまり面倒な事は勘弁して欲しいのだがな、少し不安を抱きながら俺達は改めて町に向かうことにした。
ケビンを出た俺達は町に着き、冒険者を体験して・・・いなかった。
それ以前に町にすら到着していないのである。
「どうするよ」
「どーしよーかねー」
「どうしますか」
「・・・」
だだっ広い草原を見渡しながら、俺達はこの問題の解決策を探す。
俺達四人は迷子になっていた。町に向かおうと出かけたのだが地図を読める者が誰もいなかったのだ。
「この道な気がするって言ったアーガの責任だぞ?」
「え? 僕の責任なの? 勝だって地図なんて無くても着くだろ? って言ってたじゃないか」
アーガと俺が責任の擦り付けあいをしているとジョー君と丸さんに哀れみの目で見られた。
「二人を信じた、うちが馬鹿でした」
おいおい、そんな目で見られたら興奮するだろ?
「戻ろうにも、帰り道が分からないしな」
俺は少し休憩しようと草原に座り込んだ。他の三人も疲れていたのか俺と同じように座る。
会話もなく三十分が立とうとした時に、丸さんが遠くの方を指さした。
「あれって人じゃないですか?」
確かに草原の奥の方に人影らしき物が見える。例えそれがNPCであっても町の場所くらいは教えてくれるだろうと思い、俺達は人影に向かって歩きだした。
しかし、歩いて近づくに連れて、それが間違であった事がわかる。
「あ?」
「ギャ?」
それと目があった。確かに二足歩行で歩いてはいるが、肌は緑色で片手には棍棒、そして衣服は腰巻きしかなかった。
そう、魔物と呼ばれる物である。
俺達はその場から離れようと四人揃って回れ右をして走り出す。初めて四人の息が合った瞬間であった。
しかし、走り出した時には魔物も獲物だと言わんばかりに追いかけてきた。
「うおおおお!!」
俺達も全力で逃げる。
予想以上に丸さんが遅かったので俺が抱えて走っているのだが、この子は見た目とは違って意外に重かった。
諦めたかなと思い後ろを向くと、魔物が一匹から三匹に増えていた。
「何で増えてんだよ!」
尚も全速力で逃げる俺達に魔物もキッチリと後を追ってくる。いつの間にか草原は終わり、辺りは森になっていた。
「あ、もう無理」
俺の体力が尽き、段々と減速していく。そして後ろから棍棒で殴られると思った、その瞬間に上から人が降ってくる。
「シッ!!」
魔物は振ってきた男によって一刀両断されてしまった。しかし、残りの二匹は健在で男に後ろから殴りかかろうとしている。
「サンダーボルト!」
張りのある女性の声が聞こえてきたかと思ったら残りの魔物が丸焦げになった。
俺達は一瞬の出来事に唖然として動けずにいた。
「おーい、生きてるか?」
片手剣を鞘にしまいながら中年の男が問いかけてきた。
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