一日目1
皆落ち着かないのか、ガヤガヤと周りがざわついている。汗が首筋に垂れて気持ち悪い、外で待たされるのは嫌いだ
隣にいるアーガも額の汗を拭い、だるそうに目をしかめている
今日から夏期合宿だ
「いつまで待たせるんだろうな」
俺は誰に言うでもなく呟く、集合時間はすでに過ぎており、集められた生徒が友達とお喋りをしている。こういった場で話すのは、どこも同じなんだな
「すまん、すまん、少し遅くなった」
全然申し訳なさそうな態度をしていない担任がダラダラと歩きながらやってきた
あー、先生が担当なのかな
「私が第二世界を担当するから、問題は起こすなよー、後は生徒会に任せるから、ちゃんと言うこと聞けよー」
そう言うと担任は俺たちの一番後ろの移動し、気だるそうに腕を組んだ。別に良いのだが、ここの先生は生徒会にまかせすぎじゃないか?
そんなことを思っていると小柄な生徒が前にやってくる
「えー! 私が三日間皆さんのサポートさせていただく二年生のミルルです! よろしくお願いします!」
そう超絶可愛い子が言った。え? 過大評価しすぎだって? いいんだよ価値観は人それぞれだ
まぁ、そんな俺の考えはどうでもいい、それよりも学食での変な笑顔はこれを知っていたからか、ミルルがサポートとは面倒くさそうな合宿が楽しくなりそうだぜ! フォウ!
真顔でテンションが高まっている俺を置いてミルルの話は続いていく
「軽く合宿の説明をさせてもらいますね! まず、この合宿の目的は疑似的に異世界を体験して頂くことです。別にこれで転生先が決定する訳ではありませんので安心してくださいね」
ミルルの少しぎこちない説明は応援したくなるな
「今日は、疑似異世界に到着しだい四人一組の班を作ってもらいます。既にメンバーはこちらで決めさせてもらいました。この四人は三日間一緒に行動しますので、仲良くしてくださいね。」
おいおい、四人組って知らない人と数日過ごすのか、コミュ症の俺にはキツいな
「くれぐれも、勝手な行動や危ない事はしないように! もしも、そんな生徒がいたら刑罰Pを加算いたしますので注意してください!」
刑罰Pか、今まで関わった事はないがPに応じて罰が与えられるそうだ。一番キツい罰が禁固刑らしい、いったい何処に監禁されるんだろう
「皆さんも暑いと思うので、そろそろ移動しましょうか」
ミルルがそう言うと、下の地面に魔法陣が展開した。行き成りのことで生徒が最初とは違う、ざわめきが起こる
「おーい、動くなよー、魔法陣から中途半端にでると体の一部がなくなるぞー」
担任が体にオーラをまといながら言った
「ちょ、粋なりす」
俺の言葉は最後まで言えずに消えた
そして、さっきまで騒がしかった約30人の生徒が誰もいなくなった。
グランドには、静寂とちょとした砂埃だけが残された
一瞬の暗闇が俺を襲ったかと思うと目の前が、キャンプ場になっていた。
「どこだよ」
俺は雲一つ無い青空を見上げながら呟く
さっきまで夏の暑さにまいっていたが春っぽい涼しい風が吹き心地よい、周りを見渡してみると、俺と同じように状況が今一掴めていない生徒たちが見て取れる
そんな中、ミルルの声が聞こえてくる
「先生! 行き成り転移させないで下さいよ!」
ミルルも想定外の出来事だったらしく担任に向かって怒っている
「すまん、すまん、次からは気を付ける」
担任が目を反らし、心の籠もっていない声で言う
こんなに反省の色が見えない謝罪は初めて聞いたな、それよりも早く指示が欲しい
「私よりも生徒に何か言ってやれ」
担任が俺たちの方を指差しながら言ってくる
ミルルも生徒たちが戸惑っている事に気がつき慌ててやって来た
「えー、皆さん行き成りの事で驚いたかも知れませんが、ここが合宿先の疑似異世界になります!
町が二つと村が四つの小さい世界ですが、立派に生活出来る空間となっておりますので安心して下さいね!」
予想はしていたけど、何か異世界に来たって実感がないな
「では、班を発表していきますので呼ばれた人は来て下さいね!」
ミルルが、何処からともなく書類を出し、生徒の名前を呼んでいく
幼女女神も使っていたが、あれって収納魔法なんだな、授業で試した事があるが俺には才能が無かった
自分の才能のなさを嘆いていると俺の名前が呼ばれる
「次は四班です! アーガさん、丸さん、勝さん、ジョーさん! 来て下さい!」
お? アーガと同じなのか、友達の少ない俺に気を使ってくれたのかも知れない、隣にいたアーガもこっちをみて「よろしくね!」と言いながら笑ってくる
俺たちは前に行き、ミルルの指示に従う
「四班の方々は四の数字が書かれているケビンを使用して下さい! 荷物は既に転移させていますので確認して三十分後、ここに集合です! 遅れない様にして下さいね!」
俺は他のメンバーを見る
早速アーガが話しかけており、自己紹介をしていた。フレドンとアーガってコミュ力高すぎない?
「僕はアーガ、見てわかると思うけど種族は獣人だよ!」
「うちは丸って言います。種族は魔人になります。よろしくお願いします。」
丸と呼ばれる女子が礼儀正しく黒髪のおかっぱ頭をペコリと下げた。見るからに堅そうな性格だな、委員長って感じだ。
てか身長高! 180ぐらいあるんじゃないか?
次に緑の髪が顔に掛かった幸薄そうな男の子が話してきた
「ジョー、種族は人間、よろしく」
ボソっと呟いて、それ以上は何も言わない、俺もコミ症だけど此奴も相当だな
最後に俺が自己紹をする
「俺は勝、種族はジョー君と同じで人間だ。三日間よろしくな」
そして俺たちは指定されたケビンに向かった。
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