合宿前準備2
第二世界に行った俺たちは、中世ヨーロッパ感のある「これぞ異世界!!」と言いたくなるような町並を眺めながら近場の喫茶店に入った。
喫茶店と言っても、ちょっとした飲み物と食事ができる程度の所でBGMなど流れていない、森の喫茶店って感じだ
コーヒーに似た飲み物を頼み席に座る
「で、二人はどこの世界に行きたいとか考えているのか?」
俺は全然決めていないので意見を聞こうと思ったのだが、二人も何も考えていなかったらしく曖昧な答えしか返ってこなかった。
「・・・私の世界は高度な技術が無かったから、文明が発達している所に行きたいかな」
ちょうど、頼んでいたコーヒーがきた時にマリナが窓の外を見ながら呟いた
確かに出身世界では出来ない体験がしたい、剣と魔法の世界で自由な旅をしたいものだ。
「そうだね、新しい経験をしたいね」
アーガも同じ様な事を思ったのか、マリナの意見に賛同する
「そうだな」
俺も返事をしながら、少し熱いコーヒーを飲んだ
それからは自分のした事のない体験を考えると、以外とすんなり決まった
俺はこの第二世界で冒険者をする事にする。やっぱり、異世界と言ったら冒険者でしょ!
マリナは日本と同じぐらいの文明レベルの第三世界でプログラマーをするらしい、アーガは俺と同じ世界で冒険者だ。
「あ、種族はどうする?」
職業と世界の話しか、していなかった俺たちはプリントに記入しようとしている最中に気が付いた
第二世界には王道のエルフやドワーフ、獣人などオーソドックスな種族でどれにしようか悩む
「僕は人間にしようかなー」
アーガは以外とあっさりと決めてしまう、俺とマリナはしばらく悩んだ末に、俺がエルフでマリナが人間にした
「マリナは人間でいいのか? 言っちゃ何だけど嫌いなんだろ?」
最初会った時はエルフ以外は嫌いって感じだったけどな
「まあ、以外と人間も悪くは無いかなって思ってね!」
俺たちと関係を持って心境の変化があったのだろうか?
でも、悪いことではないし、むしろ自分から進んで他種族になろうとするのは良いことだと思う
「じゃ、決まりだな!
俺はこれから合宿に必要な物を買おうと思っているけど、二人はどうする?」
「いいよー、僕も買いたかったし」
「いいわよ! 後で私の買い物にも付き合いなさいよね!」
マリナの買い物に付き合わないで帰ったら拗ねるだろうな、俺は帰るけど
こうして俺たちは合宿のプリントを仕上げて、買い物に出かけた
「腹減ったな」
買い物が終わり今は寮にいる。結局マリナの買い物に付き合うことになり、帰ったのは日が落ち、外で何の種類か分からない虫が鳴いている時間帯であった。時々思うことがある、この浮遊島には少なからず生物がいて独自の生態系を形成しているのだが、いったい誰が持ち込んだのだろうかと
そんなことは置いといて、買い物に夢中で昼食を取るのを忘れていた俺は少し早い夜ご飯にする事にした。
いつも通りに食券を買い、食堂の人気のない場所に向かう、すると先客がいた。別に俺が予約している訳でもないので、誰が座ろうと構わないし別の席にすれば良いだけである。しかし、そこにいたのは見知った顔だったので無視することも出来ない
「飽きないのか?」
そこには頬膨らませながら、大盛りのカレーを食べるミルルがいた。彼女はいつもカレーを食べており、食堂でカレー以外を食べている場面を見たことが無い
至福の時間なのだろう、いつもより一、五倍ほど笑顔が可愛い
モグモグ、ゴクンと口の中にある、幸せの欠片を喉に通らせたミルルが俺を認識する
「勝さん! 久しぶりですね! ・・・食べます?」
大盛りカレーを見ていた俺がカレーを欲しがっている思ったのだろう、スプーンに少しばかり乗せて聞いてくる。
「いや、自分のがあるから大丈夫」
可愛いミルルの幸せを奪うわけにもいかないので遠慮させてもらう。このまま違う席に行く理由もないので、晩ご飯のラーメンをテーブルに置きミルルの前に座った。
「晩ご飯には早いですよね? これからお出かけでもするんですか?」
「いいや、お出かけは終わったんだよ」
昼間の話をしながらミルルと晩餐を楽しむ、夏期合宿の話しになると「私の時はこうだった」「仕事が大変だった」などの為になる話を聞かせてくれた
「勝さんはどこの世界に行かれるんですか?」
「第二世界で冒険者をやるつもり」
俺がそう言うと、ミルルの表情が明るくなり、少し悪戯っ子の顔になった。
今凄く嫌な予感がしたのだが、ミルルの悪戯ならむしろご褒美だ。期待しておこう
それからは他愛ない会話が続き、ミルルは生徒会の仕事が待っているらしく、憂鬱そうにさっていった。
俺もラーメンの汁を最後まで飲み干し、自室に帰ったら今日の授業で出た課題でもしようと思いながら食堂を後にした。
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