合宿前準備1
「あちぃ~」
俺は教科書で仰ぎながら、愚痴る
入学式から三ヶ月たっており、季節は夏になっていた。あれからは何事もなく普通の日常を送っている。・・・授業で二、三回死にかけたが
「勝よ、少し怠け過ぎではないか?」
我が友フレドンが話しかけてきた。
フレドンは夏服とは言え、制服のボタンを上までキッチリと止めている。暑くはないのだろうか?
「あのな、俺の世界にはクールビスってのがあってだな、衣装を軽量化して体調を優先するんだよ」
と、フレドンに俺の都合の良い様に日本の話をしてやると、「ふむ」と何かを納得したように頷いて、制服の前ボタンを全て外した。やだ、かっこいい
そんな他愛の無い会話をしているとケモミミっ子が話しかけてきた
「こらこら~、フレドンに変なこと吹き込むんじゃないよ?」
茶色のショートヘアと犬耳を揺らしながら話に入って来たのは、ここ三ヶ月で知り合ったアーガである。アーガは授業中にボッチをしていた俺に話しかけてくれた心優しい奴で気さくな性格と何にでも挑戦する行動力が特徴だ。因みにこの性格から男子に間違えられる事があるが女子だ
「いいじゃないか、間違いじゃないし」
「そうなの? でもな~、影響されてる子がもう一人いるからホドホドにね」
アーガはそう言い、俺の後ろを見た
俺も視線の方に向く、すると俺たちの会話を聞いていたマリナと目が合う、その手はセーラー服のスカーフに手が掛かっており、これから取ろうとしているのが分かる
「な、なによ」
俺はニッコリと笑うとそのまま何事もなかった様に正面を向いた
「こらこら! あのね、マリナ? 女性がそれしちゃうと胸元が見えちゃうから」
マリナは胸元を見て、自分の姿がかなり攻めている事に気が付いたのか顔を真っ赤にして自分の席に戻ってしまった。
「あ~あ、すねちゃった」
アーガはマリナとも仲良くしてくれている、マリナにとっては初めての女友達でもある。
「お~い、席に着け~」
相変わらず、やる気のない担任が教室に入ってきた。先生の声と共に生徒達が席に戻って行く
先生とも長い付き合いになるが、未だに名前を知らない
「え~年間行事表どおりに来週から夏期合宿を行う」
そうえば、そんな事が書いてあったな、合宿って何するんだ?
これまでの授業では魔力操作や精密機械などがあった、どれも初めての事だったので新鮮で楽しめたが生前に読んだ小説物と大差なかった。
いや、種族の変化体験は凄かったな、特に機人種はヤバかった。何がヤバいかって全身機械なので生物として体の動かし方が違っていたのだ。もう一人の自分を自分で操作している感覚かな?それでいて全身の感覚はあるから脳が混乱したのを覚えている
授業の事を思い出していたら、先生が話を進めていく
「合宿は希望世界に行けるから、今から配る用紙に書いてくれ」
配られた用紙を見てみると、記入欄に世界、職業、種族とあった。
世界と種族はわかるが、職業って何があるんだろう?地球なら学生や運転手、ユーチューバーなどが思い当たるが異世界の職業って冒険者や商人?ぐらいしか思いつかない
俺が悩んでいると先生が思い出したように言った
「あ~そうだ、詳しい事は今から配るプリントを読んで決めてくれ」
先にプリントを配って欲しかった
そんな事を思いながら、プリントを受けとる
プリントには、その世界に住んでいる種族や職業などがビッシリと書かれており、どれも面白そうだ。
「勝はどうするのだ?」
俺が悩んでいると、フレドンが話しかけてきた。希望としては楽な所なら別段どこでも良いのだが、考えるのも面倒なのでフレドンと同じ世界でいいだろうと思っている
「フレドンと同じでいいかな」
するとフレドンは困った顔をしてしまう、俺と同じで都合が悪い事があるのだろうか。
まあ、フレドンの事だ、授業の一環なので真面目に考えているのかも知れない
「どうかしたか?」
「いや、我は勝の世界、第一世界に行きたいと思っていたのだ」
そうゆうことか、別に出身世界に行ったら悪いわけでは無いだろうけど、今更地球にいっても面白味がない、俺も行くなら別の世界にしたいな
「じゃ、今回は別々だな」
少し悲しそうな顔をしているフレドンを横目に、俺は改めてどこの世界に行くか悩んむ
「そこまで急がなくてもいいからな~、期限は明後日の放課後だ。
後、合宿は二泊三日だから、プリントの裏に書いてある物を用意しておけよ~、それじゃ、解散」
先生が追加説明をし、けだるげに教室から出て行く。もう慣れたが、あの態度は教員としてどうなのだろうか
プリントの裏を見てみると内容はいたって普通の事で日用品などが書かれていた。しかし、日用品と言っても、自分が行く世界の代物である。確かに違う世界の物を持って行っては合宿の意味がない
「町に行くかな」
周りの生徒が騒ぎ始めた頃、マリナとアーガがやってきた
「ねぇねぇ、一緒にどこの世界にするか決めない?」
アーガの提案に俺は了承し、町で決めようとしていた事を話した。
地球に決まっていたフレドンも誘うおうとしたのだが、バイトがあると断られてしまった。入学式当日に行ったハンバーガーショップが気に入っていたようで、通っているうちに店員からバイトに誘われたのだと話していたのを覚えている
「じゃ、行きましょ!」
マリナはいつもテンションが高いのだが、遊びになるといつも以上に高い、面倒な奴だ
俺たちは「どんな世界が良いか」、「どんな職業にしたいか」などを話しながら、転移門まで向かった
バイトのあるフレドンとはここでお別れだ。
「今日はどこにする?」
転移門の前までくると、どこの世界の町で話すか相談する
「う~ん、今日は第二世界でいいんじゃないかな?」
そう言いながら、アーガは第二世界のトビラに向かおうとしている。
あ、もう決定なのね。
第二世界はお世辞にも文明が高いとは言えないが緑が豊かで、座っているだけで心を癒してくれる心地よい世界だ。しかも、マリナの出身世界でもある。
アーガを先頭に俺たちは第二世界のトビラをくぐった。
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