事後処理

アイリス会長は男子生徒を魔法で拘束している。ミルルの時とは違い炎の剣が無数に刺さり、炎の鎖が体に巻き付いて身動き一つ出来ないみたいだ。


「主犯格は捕まえられなかったが二、三人外で気絶しているから、この子と一緒に生徒指導室に入れておいてくれ」


「はい」


 会長がそう言い指をパチンと鳴らすと男子生徒の拘束が解け気絶する。

 それをミルル達生徒会メンバーが運んでいった


「楽しい歓迎会がこんな形で終わってしまうのは誠に遺憾だが、今回は解散とさせて欲しい、すまない」


 会長の声を聞いた他の生徒が寮に帰って行く

 後の処理は任せようと俺もフレドンを背負って帰ろうとしたら止められた


「何帰ろうとしてるんだい? もちろん当事者には残ってもうよ?」

「デスヨネー」


 アイリス会長の笑顔が怖い

 その後は、会長につれられて生徒会室に移動した。連れて行かれたのは俺とマリナ、それと背負われているフレドンの三人である。


「それで? どうして、あの男子生徒と喧嘩したんだ?」


 あれを喧嘩と言って良いのか分からないが、会長からしたら子供の喧嘩レベルなのかもしれない


「それはーーー」


 マリナの証言によると、フレドンと口喧嘩をしていたら、近くにいた男子生徒が睨みながらブツブツと文句を言っていたらしい

 それを聞いたマリナが「男ならハッキリ言いなさいよ!」と啖呵を切ると、粋なり掴みかかってきたのだそうだ。

 それを止めようとしたフレドンが捕まり、後の話は俺が見ていたのと同じ内容だった。

 話を聞き終わると会長は顎に手を当てて少し考え込んで答えた


「これは人工的に暴走させられた可能性があるかもしれない」

「まず、魔力暴走ってなんですか?」

「そのまんまだよ、体内にある魔力の制御が出来なくなり意識が飛び潜在能力を限界以上に引き出す。

 しかし、魔力切れを起こし正気に戻った際は悲惨だよ。何せ限界を越えるんだからね、死にはしないが日常生活を普通に送ることは出来ないだろう」


 会長の話を聞いていると誰かがドアをノックした


「入ってもよろしいですか?」

「あぁ、構わない」


 会長が入室の許可を出すとミルルが入ってきた


「会長、やはり薬物反応がありました」


 仕事モードなのかミルルがすごく仕事が出来る人に見える


「そうか」


 会長とミルルが真剣に話しているが、ここからでは良く聞き取れない


「さっきはありがとな」


 俺は暇だったので隣のマリナに話しかけた


「別に」


 相変わらずにツンツンしているが、男子生徒の攻撃を二度も助けてくれていたので、やはり根本は悪い奴ではないのだろう。こいつは少しプライドが高いおバカさんなだけだ


「マリナは怪我して無いのか?」


 フレドンを助けようと動いてくれていたし、これでも俺なりに心配しているのだ。


「・・・」


 マリナがキョトンと見てくる

 何か変なことでも言ったのか?取り合えず、良く分からない時は謝るに限る


「何か気に障ったのなら、すまん」

「・・・・呼んだ」


 マリナが何か言ったが良く聞き取れなかった。俺は難聴系主人公では無いんだがな


「何だって?」


 そう言うとマリナがキッと睨んで来た


「初めてマリナって呼んだ!」


 あぁ~、そういえば名前で怒っていたな、少しは悪いと思っているが、粋なり喧嘩を売ってきたマリナにも非があると思うがな

 そんな今朝の出来事を思い出していたら


「最後はありがとう」


 少し遅れて感謝の言葉を言ってきた。恥ずかしいのかマリナは目をそらし、頬を赤くしている。


「じゃ、じゃあ、お互い様だな」


 そんな反応をされると俺も少し照れるじゃないか

 これからは、マリナとも仲良くやっていけるかもと思っていると、会長との話が終わったのかミルルが話しかけてきた


「勝さん! これお返ししますね!」


 ミルルが渡してきたのは男子生徒に刺した万年筆だった。血とか付いているかと思っていたが汚れ一つなかった


「今回は仕方がないとしても、次からは人を刺したりしないで下さいね!」

「申し訳ない、次からは気を付ける」


 ミルルがプリプリと怒っているのが妙に可愛くて全然怒られている気がしない


「なるほど、そういうことか」


 万年筆を見た会長がそう呟いた

 何が「なるほど」なのか? 万年筆が何かあるのだろうか、俺が疑問に思っていると会長が答えてくれた


「いやね、私が来た時には動きが鈍かったから不思議に思っていたんだよ。

 この万年筆は銀製なんだ、吸血鬼とっては弱点になるからね。」


 偶然が重なって俺は助かっていたのか、運が良かった


「まぁ、今回は君たちが悪い訳ではないから、刑罰pの加算は無い、黒幕に関しては予想は付いているが証拠が無いからな、捕まえることは出来ないんだ。すまないな」


 生徒会と敵対している組織があるって事なのかな?そんな物があったとしても俺には関係ないから別に気にしなくてもいいか


「じゃ、俺たちは帰りますね」

「ああ、構わない」


 会長に許可をもらい生徒会室から出ようとしたらミルルに止められた


「少し待って下さい! フレドンさんを起こしちゃいますね!」


 そういうとミルルは掌をフレドンにかざした

 するとフレドンが薄緑に輝き始め、十秒ほどで目を覚ます。


「む・・・ここは?」


 フレドンは状況が理解出来ていないらしい、周りをキョロキョロしているが今ここで説明するのも面倒なので後からにしようと思う


「じゃ、今度こそ帰りますね」

「はい! 気をつけて下さいね!」


 ミルルと会長に別れを告げて寮に戻る。その帰り道で混乱していたフレドンに掻い摘んで説明してやると、微妙な表情になり「ありがとう、すまない」と言っていた。


 時刻はすでに20時を回っており、外も真っ暗になっていた。寮の中はやけに静かで、他の生徒は寝てしまったのかもしれない、俺たちはそんな静かな廊下をあるいて、それぞれの部屋に戻った

 しかし、俺はベットの中に入ると、ふと思った


 (おかしくないか?)


 入学式の前にミルルと仲良くなるのも、町で会長達と会うのも、そこで万年筆を貰うのも、しかも、それがたまたま俺たちに襲いかかってきた吸血鬼の弱点だって? ここまで来ると必然を疑いたくなってくる。

 俺は疑問に思ったが、思っただけだった。面倒だし眠かったので寝た。


 そして次の日には、すっかり疑問に思ったことは忘れていた

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