歓迎会1
歓迎会は体育館で行われる、中に入ると既に多くの生徒が楽しんでいた。館内にはテーブルがいくつも並び、その上には、寿司やエビチリなど見知ったものから、見たことの無い野菜のサラダまで様々であった。
方式としては立食式で皆思い思いに会話と食事を楽しんでいる。
俺たちは指輪で受付をすませ、人混みの中に入って行きお皿に料理を乗せ邪魔にならない場所で談笑をする。
「結構人が多いな二年や三年がいたりするのか?」
「そのようであるな」
多分、他学年との顔合わせの意味のあるのだろう。人が多く集まる落ち着かない独特の空気に俺は少し顔をしかめていると壇上に生徒会長の姿があった。
「今回は私たち生徒会主催の歓迎会に参加してくれてありがとう」
生徒会長が話し始めると騒がしかった館内が静かになっていく、会長はそれを確認すると再び話を再会させる
「一年生の皆さんには気楽に楽しんでいただきたいと思ってます。」
会長は微笑みながら場の空気を緩和し、その一言一言が一年生の緊張を解いていく
それから、五分ほど挨拶をし最後に軽く礼をして会長はさっていった。
和んだ空気の中で上の学年が一年生に話しかけており、ほのぼのとした場面が多々みることができた。
そんな雰囲気に身をゆだねていると一人の男子生徒に話しかけられる。
「やぁ、君たちは昼間に会長達と話していた子だよね?」
その男子生徒は高身長のエルフであった。男にしては長めの金髪を綺麗にセットしており、赤色の瞳を煌めかせながら俺たちの前に現れた。クソイケメンだな
「そうですけど? なんですか?」
イケメンは全ての独り身男子の敵であるので、俺は少々不機嫌になりつつ返事をした。
「そんなに嫌がらないで下さいよ。 私は生徒会書記の佐々木 一郎と言うものです」
日本式の名前を聞いて少し親近感を覚えてしまうが、外見とのギャップに違和感を拭いきれない
「自分は斉藤 勝です」
「我はフレドンである」
佐々木さんは三年生で話しかけてきたのは、入学早々に会長たちと話していたのが気になっていたからであるらしい
三人で食事を楽しみながら、話していると後ろから誰かにつつかれた
「三人で何の話をしているんですか?」
振り返ると、ちょっと顔を赤らめたミルルが立っていた。
ミルルは副会長として周りの生徒たちに挨拶をすませてから、こちらに来たみたいだ。
「佐々木さん! 何か変な事言ってないですよね!」
「さぁ~それはどうかな」
佐々木さんはミルルをからかうのが楽しいのか、俺たちと話している時とは違う笑顔になっている。
生徒会長はどうしているのかと思い辺りを見渡してみると一際人が多い場所があった。その中心が会長であることがわかる、生徒会長になるくらいだし他の生徒からの人気もあるのだろう。それに、あの容姿だ男子は女子とは違う意味で近づいてもおかしくない。
俺が会長をみていると佐々木さんが話しかけてきた
「アイリス会長は人気者ですからね、こちらに来るのはもう少し後になると思いますよ」
「そうですか」
「人気ですからね、狙うならそれ相応の覚悟が必要になりますよ」
こいつは何を勘違いしているのか、俺が会長に好意があるものと思っているらしい
確かに会長は美しいし、彼氏になったら薔薇色の学園生活を送れるのは間違いないだろう。しかし、俺は会長よりも、こっちの元気があるミルルみたいな子がタイプなのだ。
「なんですか? 勝さん」
こちらに気が付き上目ずかいで首をかしげてくる。まぁ、ミルルの身長なら誰に対しても上目ずかいになってしまうのだが
かわいいな~うん、俺は間違っていないぞ、うん
「いや、なんでもない」
ミルルの可愛さを確かめていると、フレドンが飲み物を渡してくれた。気が付くとグラスが空になっていたみたいだ。
「ありがとう」
「気にするな、我は少しここを離れて他の生徒と交流を深めてくる」
そう言うとフレドンは人混みの中に消えていった。フレドンの事だ直ぐに友達を作って仲良くなるだろう
マリナ?あいつは受付をすませると料理を食べに行ってから帰ってこない、どこかで問題を起こしていなければよいのだがな
俺は、もらった飲み物を飲むと俺は顔を歪ませる
「これ、お酒じゃないか」
お酒自体は嫌いではないのだが、学生なのに飲んでも良いものだろうか、よく見ると少し顔が赤い生徒がいるのがみえる。
前世ではあまりお酒を飲む事は無かったのだが、久しぶりのお酒も悪くはない
久々のアルコールで喉を潤しつつ、食事を楽しむ、すると生徒会長がやってきた
「やぁ、楽しんでいるかな?」
「それなりに楽しませて貰っています」
アイリス会長は多くの人との会話で疲れたのか元気がないようだ。
そんな会長をミルルと佐々木さんが気にかけてねぎらいの言葉をかけている。
俺は会長の飲み物を取りに行き会長に渡した。
「すまない、ありがとう」
相当疲れていたのか、シャンパンを少し飲み溜息を吐いた。
「人気者は大変ですね」
「そうでもないさ、彼ら一人一人のおかげで生徒会の仕事も問題なくこなせるているからね」
苦笑いをしつつ、会長は肩を竦ませる
自分の功績が他人の協力があっての物と考えられるのも会長の美徳なのだろう
その後も恙なく歓迎会は進行していった。
しかし、お酒の飲み過ぎで回復魔法をかけて貰っている生徒が出始めるほど場が盛り上がっていた場面でそれは起こった。
ガッシャーン!
まるで開始の合図の様にお皿が割れた音と男子生徒の怒号が鳴り響く
辺りが一気に静かになり、そして何が起こったのかと再び周りが騒がしくなる。それと同時に俺の隣で談笑をしていた生徒会メンバーが動きだした
「ミルルは中心で何が起こっているのか確認を、佐々木は生徒が近づかない様にしてくれ、他の生徒会メンバーが来たら協力し生徒の安全を、多少の力の使用は許可する、私は外の魔力反応を対処してくる」
「はい!」
「わかりました」
会長の迅速な対応とミルル達の行動の早さにビックリしたが、それよりも外の魔力反応ってなんぞ?え?結構ヤバい感じ?ただ、酔っぱらいが喧嘩してるだけじゃないの?
俺も気になり野次馬をかき分け音の鳴った方に向かう。そこには見知った顔と羽が生えた男子生徒がいた。
見知った顔と言うのはマリナとフレドンで二人とも今にも噛みつきそうな顔で男子生徒を見ている。男子生徒はニタニタと笑いながらフレドンを踏みつけ、マリナはそれを睨みつけている形だ
遠巻きには苦虫を潰したような顔をしたミルルもいた
おいおい、マリナは何かしら問題を起こすだろうと思っていたけどフレドンもかよ
俺はどうしようもなかったので、取りあえず持っていたグラスを傾けお酒を空にした。
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