町2

「ミルルとアイリスさん?」


 先輩の誘いを断る訳にもいかないので、俺たちは同席することにした。


「先輩方は準備とか、いいんですか?」


 準備というのは今日の歓迎会の事である。生徒会主催と聞いていたが、こんな所で食事をしていて良いものなのか


「まぁ、問題はないかな、他の生徒会メンバーが頑張ってくれているしね。

 所で君たちは誰かな? ミルルの知り合いだろうとは思うけど」


 アイリス先輩は微笑みながら聞いてきた。

 やはり、この人は何かと気高い感じのオーラをまとっているな


「そうですね、俺は斉藤 勝って言います。 こっちはクラスメイトのフレドンです。ミルルとの関係は・・・関係は何だ?」


 一度ミルルを助けてあげた事があるのと、会話を数度かわした程度である関係だが友達ではないよな?学校の先輩?


「ひどいです! 勝さん! 二人で四つん這いになった仲じゃないですか!」

「どんな仲だよ! 別にただ捜し物を手伝っただけでしょ?」


 ミルルが頬に手を当て体をくねらせて言ってきた。絶対に面白がっているな


「ははは、君がミルルの言っていた気になる後輩って子か、私は入学式で知っていると思うがアイリスだ、よろしくな勝君」

「はい、よろしくお願いします。

 ん? どうしたフレドン」


 そんな会話をしていると、ふと隣が静かなのが気になった。フレドンの事だから、直ぐに話しかけて仲良くなると思ったのだが・・・凄く青い顔いてるぞ?大丈夫か?


「だ、大丈夫である、何でもない。我はフレドン・スンセ・ガール・クラッツである。よろしく頼む」


 やはり、どこか変だな緊張しているというよりは怯えている感じだ


「大丈夫ですよ! 問題を起こさなければ説教もありませんから」


 ニコニコとミルルが言っているが、フレドンはその笑顔が怖いのか顔をひきつらせている。


「ああ、君も知っているよ、転生当日に魔力爆撃を起こした生徒だね」


 おいおいフレドン君やい?魔力爆撃とか何やってんの?


「あれはエルフの娘がだな・・・いや、もう終わった事である」


 フレドンは思い出したくないのか話を途中でやめてしまった。


 その後は四人で食事を楽しんでいた。

 ハンバーガーは某会社の物と違いはなく、フレドンもその味が気に入った様で口の周りにソースを付けながら頬張っている。

 ミルル達とは、どの世界のお菓子が美味しいかなどの他愛のない話をして親睦を深めた。生徒会長とのコネが出来て嬉しい限りである。


「あ、勝さん! これあげますね!」


 ミルルはスカートのポケットから小さな箱を取り出した


「なんですか、これ? 開けても?」

「はい、いいですよ」


 箱の中身は、こった細工のしてある万年筆であった。細工をみる限りには凄く高そうに見えて仕舞うのだが大丈夫なのだろうか?


「いいのか? 凄く高価な物に見えるが・・・」

「遠慮なんてしないで下さい、こなだのお礼です」


 こないだのって捜し物を手伝っただけなんだけどな、それでも嬉しくて少し心が弾んでしまう


 それから、ミルル達は歓迎会の準備に参加しないと流石に不味いらしく二人で帰っていった。


「俺たちはどうする?」

「そうであるな、まだ歓迎会までに時間もある。案内してくれると助かるぞ」


 もちろん後ろの席では、マリナがハンバーガーを食べていた。あいつ少しずつストーカーになってきていないか?


 ミルル達とわかれた後は、ショッピングを楽しんだ。楽しんだといっても、五万pがどれほどの価値かピンとないので実際に買うことはなくただ店の中をうろうろしていただけである。因みにハンバーガーの値段は600pだった。

 ショッピングモールの中は異世界ならではの物珍しいものや、地球でよく見る物まで様々であったが、これと言って物欲を刺激される商品も見あたらない。

 俺たちは引き続きウィンドウショッピングを楽しみながら、今後について話していた。


「そろそろ、歓迎会の時間になるけど、一度寮に帰るか?」

「一度帰っても仕方無いであろう? そのまま行くとしよう」

「決まりだな、もう少し見てから行くか」


 それから、約一時間ほど、ショッピングモールだけでなく、町中も少し散策した。

 帰ろうと思っていた所に後ろから、何か焼けた香ばしい匂いとハムハムと食べ物を租借する音が聞こえた。


「はぁ・・・買いすぎじゃないのか?」


 俺は溜息まじりに、その匂いのする方に言った。


「う、うるさいわね! 私のかってでしょ!」

「あっそ」


 俺は素っ気なくマリナに言った。マリナは途中から、もう隠れる(隠れられてはいなかったが)のを止めたのか俺たちの数歩後ろを付いてきていた。

 そんな彼女は両手一杯に肉マンやら串焼きやらをもって歩きながら食べていた。一口食べるごとに幸せそうに頬を緩ませている。


「まったく、迷惑であるな」


 フレドンはマリナと知り合いだった。知り合いと言っても目覚めた当日に喧嘩をして寮で正座をさせられていた仲である。最初の方はフレドンも鬱陶しそうにして俺に愚痴を言っていたのだが、三十分もすると諦めたのか何も言わなくなった。


「俺たちは、もう歓迎会に行くからな」

「そうね! 行きましょ!」


 あ、もう一緒に行く感じなのね

 俺とフレドンの中央に仁王立ちし如何にも私がボスであるという雰囲気を醸し出している

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