授業

教室も普通の日本の高校と同じで、生前に慣れ親しんだ机やロッカー、黒板などがある。

 散策の時は流石に教室に鍵が掛かっていたので内装はしっかりと見れていなかった。

 黒板に座席の指定が書かれていたので座る。


「お? お隣は人間種か?」


 席に座ると隣の人間・・・ではないな、トカゲ?竜?そんな感じの人が話しかけてきた。

 外見や声的には男だと思うが違ったらどうしよう


「そうだよ、人間だよ」

「おぉ、そうであるか! 我はフレドン・スンセ・ガール・クラッツである。気軽にフレドンと読んでほしい。種族は竜人種?となっておる」


 何で疑問系なんだ?


「俺は斉藤 勝だ、よろしくな」

「斉藤殿であるか、よろしく頼む。」

「勝でいいよ」


 隣との挨拶もすませ先生が来るまでは、窓の外を眺めていようと思っていたら

 ・・・隣から視線を感じた

 マリナが寂しくなって来たのかと思ったが違うみたいだ。

 フレドンがソワソワしてこちらを見ている。

 俺の席は一番後ろの端なので、こちらを見るのは俺に用事があるうのだろう


「なんだよ?」

「む? 不快にさせてしまったか?すまない。何分、我の世界には人間種がいなかったものでな」


 なんだ俺が珍しかっただけか、それに種族の時に疑問系だったのも種族の概念がそもそも無かったのかもしれない。

 でも、人間を寮に来てから一度も見ていない事はないだろう


「寮では珍しくはないだろ?」

「いや、そうであるが実際に話したのは初めてなのだ。勝の世界では竜人はいたのか?」


「俺の世界には人間種しかいなかったよ。でも、物語なんかには沢山でてたな。俺はその手の物が好きだったからな」


 フレドンは俺の話に凄く食いついてくる。そんなに気になる事なのだろうか


「なんと? 人しかいないのか? 人間種は魔力も腕力も非力だと聞いたが魔物とはどう戦っていたのだ?」

「魔物なんていねーよ」


 魔物なんていてたまるか、そのんなの存在してたら怖くてコンビニにも行けない

 そんな感じで異世界交流をしていたら、不意にドアが開いた


「おーい、席に着けー騒ぐなよー」


 やる気がなさそうに入ってきたのは担任と思われる長髪黒髪の女性のエルフだった。

 普通のエルフと何ら違いは無さそうだが髪はボサボサで目に隈はできてるしで、素材は良さそうなのに残念で仕方がない。

 普通と違うのは背中に黒い羽がついている事なのだが・・・

 先生は天使らしいが黒い羽って堕天使なんじゃないのか?

 そんなの俺の疑問は直ぐに解決する


「あー、よく聞かれるので始めに言っておくぞー、この羽はお洒落で黒くしているだけだ」


 お洒落って・・・この学校は大丈夫なのか?

 天使は清く正しい心を持った人間だった気がするのだが、担任といい、校長といい、やる気がない奴が多いな

 たまたま、この二人が特殊なだけだと思いたい


「えー、三つほど話す事があるが、聞いてなくても繰り返さないし、後で聞きに来ても教えないからなー

 まずは、入学式が終わった際に君らには5万ポイントが指輪に与えられている。これは、この学校生活においてのお金になる。確認したければ指輪に念じてやれば見ることが出来る」


 試しに念じてみた

 ・・・なにも表示されないし見えてこない


「あー、見えない奴がまれにいるが元の世界のお金や財布などのイメージを念じるときに入れて見ろ、それでもダメなら諦めろ」


 お金や財布ね、・・・おっ出来た出来た何々?


斉藤勝

 生活P 50000

 成績P 0

 刑罰P 0


 何か物騒なポイントもあるな、なんだよ刑罰って貯まったらどうなるんだよ


「見れた者はわかると思うが生活Pってのがお金の代わりになるものだ。

 それ以外のPはお前等はまだ知らないでいい、毎月5万Pは支給されるから安心しろ、それ以上ほしい奴はバイトしろ」


 バイトなんて出来るのか、どんなバイトが有るのだろうか・・・考えてもしょうがないか


「次に二つ目だ、今日はこれで授業は終了になるが、お前等の部屋に教科書が転送してある。不備がないか確認しとけよー」


 授業では教科書を使うのか、本当に日本の学校となんら変わりない、他の世界でもそうなのか?

 後でフレドンにでも聞いてみよう


「最後に町の説明だ、町では買い物が出来る。生活用品から娯楽まで、なんでもあるからな

 町には住人もいるし、それに天使学校の生徒も共通に使用しているが気にするな」


 気にするなって・・・気になるわ!住人って誰が住んでるんだよ、しかも天使もいるのかよ、いや?学生だからまだ天使ではないのか?

 それに、町なんてあったか?散策した時には、そんなもの見なかったが浮遊島の地下にでもあるのだろうか?


「では、これで解散とする。くれぐれも、町で問題を起こすなよー、私は助けてやらないからな」


 これで終わりなのか、なんか拍子抜けだ。

 てか、先生の名前聞いてないし

 異世界転生をするための学校だからもっと凄い事を想像していた。魔術で空を飛びながら授業や、未来的な技術とか期待していた。

 実はこれらのことを体験する事になるのだが、今の俺には知る由もない


 そんな未来が分かるわけもなく、寮に帰って寝ようと思っていたらフレドンに話しかけられた


 「勝よ、我と一緒に町へ行ってみないか? 隣になったのも何かの縁だ。 それに我は人間の友達がほしいと思っておるのだ」


 おいおい、いきなり遊びに誘うとかコミュ力が高すぎないか、生前はさぞかし友達が多かったのだろうな。

 まぁ嫌ではないけど

 フレドンの誘いは断る気はないが、町が何処にあるのか分からない


「いいけど、町にはどうやって行くんだ?」


 そんな疑問を投げかけるとフレドンは笑いながら答えた


「ハハハ、そんなの転移門から行くに決まっておるであろう? 資料に書いてあったではないか」


 あれま、資料に書いてあったのか適当に読んでいたから飛ばしていたかもな。それにしても、人生初の転移に心躍らされるな。


「そうなのか、あんまり真剣に読んでいなかったからな」

「勝は面倒臭がり屋なのだな」


 俺が面倒な事が嫌いなのを早めに知ってもらえて良かったよ


「じゃ、いくか」

「うむ」


 そうして、俺たちが教室を出ようとしたら名前も知らない担任が戻ってきた


「あー、言い忘れていたが放課後に生徒会主催の歓迎会があるから、自由参加だから出たくない奴は出なくて良いぞ

 それだけだ、じゃあな」


 それだけ言うと担任はやっぱり名前を言わずに教室を出て行った。

 歓迎会ねぇ、自由参加なら行かなくていいよな?部屋で寝たいし

 俺は行く気は更々なかったが、隣で目を輝かせている奴がいる。


「勝よ! 我と一緒にいかぬか?」

「まぁ、それよりも町に行くんだろう? 町で決めるのもいいんじゃなか?」


 面倒な事は先延ばしにするのが俺のやり方だ。そんな風にして俺は生前を楽しんでいた。

 そうやってフレドンと話していると不意に視線を感じた。

 ・・・マリナがチラチラとこちらを見てくる、見てくるのだが、こちらにくる様子もない

 多分だが友達がいないので唯一話したことがある俺を遊びに誘おうとでも思っているのだろう


「じゃ、今度こそ行くか」


 だが、俺は気が付かなかった事にして行くことにした。勘違いだったら嫌だしな

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