入学式

「ふぁ~・・・」


 欠伸をしつつ目覚めたばかりの目を擦る


「今日から学校か」


 今日は入学式である。寮に来てから五日間たっているが初日に散策した以外は基本的に部屋に籠もっていた。するこも無いしな


「・・・だるいな」


 学校に登校する独特の倦怠感に憂鬱になりながらも体を起こす。顔を洗い歯磨きをしトイレに行く、日本で生活していた時からの決まった行動をすると体が次第に起きてくる。


「よし、行くか」


 制服に着替えて食堂に向かう

 ここの食堂は一日に三回は無料で食べることができる。食券が出る機会に翻訳用の指輪をかざすと回数がカウントされるシステムになっており、飲食で困る事はない。


「今日は服を着ているのね」


 いつぞやのエルフが話しかけてきた


「なんだ?全裸が良かったのか?」


「違うわよ! それより退きなさいよ」


 エルフがツッコミながら言ってくる


「は? 何でだよ」


「あのね? 私はエルフよ?」


「それがどうした」


「人間種よりも優れたエルフに優れたエレフに譲るのが当然でしょ?」


 あー、あれだ。

 種族差別って奴だ。

 生前はイジメやら、差別になんら関心が無かったが実際に受けてみると不快なものだ


「お前の何が優れているんだ? 耳の長さか?」


 ムカついたので反抗する事にした


「違うわよ! それと私はマリナって名前があるのよ」


「それで? お前は俺よりも何処が優れているんだ?」


「ん~! また、お前って言ったわね!」


 マリナは顔を真っ赤にしながら怒っている


「教えてあげるわよ! エルフわね! 人間種よりも高い魔力と長い寿命を持っているのよ!」


「・・・配布資料読んでないのか?」


 資料にはこう書かれていた。学校の生徒でいる間は種族の差は見た目だけである。つまり、見た目がエルフで有ろうが無かろうが本当に優れていなけれあば魔力は皆似たような物なのである。


「資料なら読んだわよ! 読んだ上で人よりも優れているエルフが元の素質で劣るわけないでしょ!」


 マリナはどうしてもエルフが優れていると思っているらしく考え直す気はないみたいだ。多分だがこのエルフは頭が可哀想な子なのだろう。しかし、相手をするのも面倒なので少しからかってやろうと思う。


「わかった、ここを譲ってやってもいいだろう。しかし、エルフが人よりも優れている証拠をみせてくれたらな」


「証拠?」


 マリナは頭にクスチョンマークを浮かべてキョトンと首を傾げている、実に可愛らしい仕草だが気にしない、見た目よりも中身も尊重する男なんだ俺な!


「そうだな、エルフは知能もとても優れているんだろ?」


「もちろんよ!」


 自信満々に返事をするが、どうにも頭が良さそうには見えないし、とても優れているようにも感じない


「それなら、上り坂と下り坂どちらが多いか教えてくれ」


「ちょっ、ちょっと待ちなさいよ、えーと山があるから上り坂、いや村に行く時は下りのが多かったきが・・・ゴニョゴニョ」


 マリナは一人で考え込んでしまった。こんな問題にも答えられないようなら、やはり頭が弱いみたいだ。俺は考え込んでいるマリナをほっといて食券を買い、空いてるスペースで食事をとる。因みに料理は異世界の物もあるが俺は地球の料理しか食べていない、馴れたものが一番である。


「勝さん、おはよう御座います! お隣いいですか?」


 食事をしているとニッコリとミルルが話しかけてきた


「ああ、どうぞ」


「ありがとう御座います!」


 そう言うと隣の席に座ってきた。足が床にとどいてないのが可愛い


「先程のエルフの方とは知り合いですか?」


「知り合いではないな、あの方は俺が気に食わないらしい」


 それを聞くとミルルは困った顔をして溜息を吐いた。


「はぁー、勝さんも知っての通り、あの子は先日も喧嘩をしていて既に先生方に目を付けられているんですよ。」


「そうなんですか」


 俺には関係ないのでマリナには近づかない事にしようと思いながら、朝ご飯のスランブルエッグを食べる。

 今日の朝ご飯はパンにスクランブルエッグ、それとコンソメスープだ。

 因みにミルルはカレーを食べている。地球のご飯が好きなのかもしれない


「いや、新入生が問題を起こすのは毎年の事らしいので良いのですが、私の時もありましたし・・・」


 凄く険しい顔をしていらっしゃる。

 ミルルの新入生時代ってことは去年のことか、何かとても嫌なっことがあったのだろうな


「じゃ、何が問題なんですか?」


 別にそれ以外に問題がなさそうなんだが


「それが、あの子は普通より魔力値が高いんですよ、それと言っちゃ悪いんですが、その・・・少しお馬鹿さんなんです」


 あれま、本当にマリナは優秀なようだ、でもオツムが悪いから面倒だと


「なので、勝さんと話している姿をみて友達が出来たのかと思って少し安心したんですが・・・違ったみたいですね」


「違いますね」


 あいつと友達なんてゴメンだな。ただでさえ面倒な性格をしているのに魔力値が高いって問題の臭いしかしない


「はぁー、勝さんに愚痴っても仕方ないですね。私は用事が有るので先に失礼します。」


 ミルルはまた溜息をついて席を立ってしまった。

 そもそも、何でそんなにミルルはマリナの事を気にかけるのだろうか、まいいか

 てか、食べるの早くね?早食いの特技でもあるのかもしれないな


「ちょっと! 上り坂も下り坂も同じじゃない!」


 あー、面倒なのが戻ってきた

 俺は適当にマリナをあしらって体育館に向かう事にする。

 体育館に移動すると、そこには多種多様な人々がいた。


「ふん! 獣臭いわね!」


 普通の日本人や、羽が生えた人、ロボっぽいのまでいる。


「あの角が生えてるのは何なの?」


 寮に籠もっていた時も人間以外も見かけていたがここまで集まっていると凄いな


「ちょっと!」


 俺のクラスはどこだ~?資料に書いてあったんだが、確か一年五組だったな


「ちょっと! 聞きなさいよ」


 痺れを切らしてマリナが肩をを掴んできた。

 さっきから後ろでうるさかったので、無視していたのだが諦めてくれなかったか、面倒な


「なんだよ? 俺まで可笑しい人だと思われるだろ?」


「私の話を聞きなさいよ!」


 顔を真っ赤にして、ご丁寧にプルプルと体まで震えていらっしゃる。種族をスライムに変えた方がいいんじゃないのか?


「嫌だ、それじゃあな。 お前も自分のクラスに行けよ」


「まぁ、そうね」


 さっさと自分のクラスの集まっているスペースに移動する。

 クラスのメンバーが集まっている所に移動したのだが・・・


「何でまだいるんだよ。 寂しがり屋か?」


 隣にマリナが立っている。何なの懐かれたの?


「ちっがうわよ! 私も五組なのよ!」


 だから、大声出すなよ。目立ってしょうがないな。

 ほら、周りがこっち見てるし、こいつらとは関わら無いようにしよって顔だあれ

 俺も同じ様な顔をするから良く分かる


「わかったから、静かにしてろよ・・・ほら、先生の話が始まるぞ?」


 マリナを黙らせつつ意識を舞台の方に向けさせる。

 

 「えー・・・新入生の皆さん私が校長のヤマハです」


 何とも、これぞ校長!って感じのスーツをきたダンディな人が出てきた。顔つきは洋風な感じだな。

 

「えー・・・皆さんは・・・あー・・・」


 ん?凄く気だるそうに喋るな


「面倒だな・・・紹介も終わったので、後は生徒会に任せます」


 え?終わっちゃったよ、しかも生徒会に丸投げって・・・この校長とは気が合いそうだな

校長が奥にはけると、今度は制服を着た五人の生徒がやってきた。

 この人たちが生徒会の役員なんだろうな、よく見るとメンバーの中にミルルがいた。

 なるほど、生徒会のメンバーならマリナを気にかけるのも可笑しくないな

 こちらに気が付いた様で愛くるしく隠れて手を振ってくる。

 可愛いなちくしょう!やはり可愛いは正義だ・・・え?見た目では判断しないんじゃないかって?それは、ほら、外見は中身の一番外側じゃん?

 五人の中で一番前を歩いていた女性が朱色の髪を揺らしながら前に出てくる。


 「私が生徒会長のアイリスです。この数日間で資料を読んでいると思われますが、これから学校生活での注意事項を繰り返し説明をいたします。」


 生徒会長は凛々しくモデルみたいな体型をしており、あまたの男子生徒を魅了してきたのがわかる。それほどに美しく気高いイメージを彷彿とさせた。


 「皆さん知っての通り、この学校は異世界転生を希望なされた全ての人が集められています。一年生の皆さんは一万年間で亡くなった転生希望者を募っています」


 一万年でこの人数は多くないか? 転生条件に人類に多大な貢献をしたものとなっていたが、ここにいる全ての人がそうとは思えないな

 いや、転生者が150名、世界が四つってことは単純計算で約250年に一人ってことか、まぁ妥当かな?そんなに世界に多大な貢献は出来ないだろうしな


「それゆえに世界で歴史に名を残した英雄と呼ばれる人がいたりしますが、その人たちは容姿、名前を変えて頂いております」


 おい、俺にはそんな話は無かったぞ、いや有名でも英雄でも無いけどさ・・・なんか悲しいな


「この学校は四年制で一年生の授業では、四つの世界を知ってもらい、二年からは希望の転生先を決めて頂き、専門的に勉強してもらう形になっております」


 生徒会長が淡々と説明していく

 この学校については、資料を読んで大体分かっているので、欠伸がでそうになる


「この学校での先生は天使学校を卒業した者を採用していますが、元は私たちと同じとなりますので万能というわけではありません」


 先生は本物の天使がしてくれる、先生以外の職員も全て天使学校の卒業生であるらしい、やはり天使にならなくてよかった。死んでまで働きたくはない


「最後に校内での暴力行為や犯罪行為は私たち生徒会が武力をもって制裁いたしますので絶対にしないようにお願いいたします」


 ん?生徒会が制裁ってことは、あのミルルに説教してもらえるプレイが出来るのか?これは一回試しに叱られに行かなければな

 などとアホなことを考えていたら、入学式が終わっていた。

 入学式と言っても、名ばかりで集まって少し話を聞いた程度である。

 どっちかと言うと朝の朝礼に近いかもしれない


「さて、次は教室に移動して担任の紹介か・・・早く帰りたいな」


「あの生徒会長なかなかの魔力ね!」


 マリナがバトル漫画のような事を言っているが俺は友達でもないし、ましてや中二病でもないのでほっといて先生の案内について行き教室に向かう

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