入学式前
目が覚めるとそこは知らない部屋だった。部屋の広さは八畳ほどで室内にはベット、机、タンスと必要最低限の物しかない。
「とりあえずっと」
幼女女神に言われた通りに資料を読もうとベットから起きてみると体に違和感があった。
「・・・軽いな」
記憶に残っているのは老体の時の事で、今の体は二十代前半ぐらいだと思われる。体を見てみると若々しくほどよい感じに筋肉が付いており、理想的な体をしていた。
若い体を動かしたい気持ちを押さえて、一通り資料を読んでみると、ここは学校の敷地内で今いるところは学生寮だとわかった。この学校は校舎、体育館、グラウンド、学生寮と日本の学校と変わらない。
敷地の外はどうなっているのか気になり窓を開けてみると
「すげぇな」
見渡してみると果てし無い雲の海が広がっており、浮遊島を彷彿とさせた。 落ちたらどうなって仕舞うのかと想像するだけで鳥肌が立ってしまう。
数分間、マチュピチュも真っ青な景色を堪能した俺は、予定表には入学式までには日にちがあると書いていたので寮外に行くことにした。
ちなみに時間、日付は全世界共通である、神々が調整したらしいが理由については長い説明であったため読み飛ばした。
そして外に出ようと扉を開けて立ち止まった。
「・・・」
何故ならば扉の前をエルフッ子が通過しようとしていたからだ。そして目が合うと
「ぶべらっ!!」
殴られた
エルフッ子の鉄拳で強制的に戻された俺は、何故殴られたのか考えた。
(あれだ異文化の違いってやつに違いない)
先ほど読んだ資料にも
『学校には全ての世界で転生を希望した者が入学しており、それゆえに文化の違いがある。』
と書かれていた。
そこで、外で何語か分からない言葉で騒いでるエルフッ子に紳士的な挨拶をしようと室外に出ると
「やぁ、ぐぼぉ!!」
また殴られた
顔を真っ赤にして怒っているエルフッ子に室内へと強制送還される。
(何故だ!?言葉が通じないのが悪いのか!?人間のいない世界から来ているのか?)
何を言っているのか分からないとらちが明かないと思い、資料に付属されていた異世界人の言葉が分かる指輪を着ける。
こんな便利な指輪があるなら転生時に持たせてくれたら良いのにと思うが、学校に通っている間の転生希望者は生物ではなく、脳の不可に耐えられるから問題は無いそうだ。
そして室外に出る
「やぁ、俺は斉藤 勝! よろし・・・うおっと!!」
また、殴られそうになったが今度は受け止めた
「いきなり殴るなよな、話会おうぜ」
俺が平和的な解決策を提示するとエルフッ子は怒鳴りながら答えた。
「その前に服を着ろ!!服を!!」
俺は産まれたままの姿だった
「何で貴方は服を着ていないのよ!!」
今にも火が出そうなほど赤面しているエルフッ子が指摘してくる。
「何故って言われても、起きたら服を着ていなかったからな」
前を隠さず堂々と答える。
(それより、このエルフ可愛いな)
歳は全種族16才で固定されているため肉体は若々しいが精神年齢はわからない、もしかすると100を越えている可能性もある。髪は腰まで長く銀髪で顔も整っている、目が若干つり目だが俺には許容範囲だ。
「クローゼットに入ってたでしょ!?着なさいよ!!」
「わかった、わかった」
今にも殴りかかって来そうなエルフが怖いので俺は部屋に戻って着ることにする。
「高校の制服と変わらないのなって知ら・・・いないし」
戻ってくるとエルフは居なかった。
「・・・貧乳だったが可愛かったな」
名前は今度会ったときに聞こうかなと思いつつ気を取り直して散策を始める事にする。
学生寮を出た俺は校舎内を見て回ることにした。
中に入れないかと思っていたが、鍵が掛かっておらず簡単に入ることが出来た。無用心だと感じるが理由があるのだろうか
「しかし、日本の高校と変わらないな・・・」
そんな事を呟きながら、しばらく歩いていると四つん這いになっている幼女がいた
「・・・・・・」
話しかけると面倒な事になりそうなので無視しようとしたら目があった
「困ったです~本当に困りましたです~」
下手な演技でチラチラこちらを見てくる。
「あ~、心優しい人が助けてくれないかな~です」
「俺は心優しい人じゃないからな」
そのまま、通りすぎる
「ちょ!ちょっと待って下さいよ!!」
「何だよ」
鬱陶しそうに振り替えって答える。
「女の子が困ってるんですよ!?普通助けませんか!?」
「困っていたのか、そうゆうプレイかと思って」
「四つん這いで校舎を回るプレイってなんですか!?違いますよ!!捜し物ですよ!捜し物!!」
幼女が怒りながら捲し立ててくる
「私は落とし物をして困っているんですよ!」
「そうか見つかるといいな、それじゃ」
また、立ち去ろうとすると幼女が腕を掴んできて
「そこは助けようよ!!事情を聞いたからには助けようよ!!」
「わかった、わかった」
これ以上やってても疲れるので仕方なく助けることにする。
「それで?何を探してるんだ?」
結局、捜し物を手伝うことになってしまった
「捜し物の前に名前を教えてくれ」
お互いに自己紹介をすることを提案した
名前を知らないとやりずらいしな
「そうですね!私の名前はミルルです。種族はドワーフになります。」
「俺は勝だ、種族は人間になる」
こんなに小さいのに制服を着ていたので人ではないと感じていたが、ドワーフだったのか
茶色のショートボブにドングリ目をしていて実に可愛らしい見た目である
「で?ミルルは何を探してるんだ?」
自己紹介も程ほどにして本題に入る
「そうです!!腕時計を落としてしまいました」
「腕時計って・・・どうやって落とすんだよ」
腕に着けてるのに落とすのも考えられないが、さらに無くしてしまうのは救いようがないな
「落とした場所とか時間は覚えてないのか?」
ミルルと同じ様に四つん這いになりながら、少しでも情報があれば見つけるのも効率的になると思い質問する
「そうですね~、多分落としたのはこの辺りで時間は昨日の夕方ぐらいです!」
なるほど、一日ほど時間が過ぎているのか・・・ん?何で昨日からいるんだ?
「ミルルは昨日に目覚めたのか?」
それに言語翻訳の指輪以外に配布物なんて無かったような気がするが
「あ!斉藤さんは新入生なんですね!私は二年生なんですよ!」
先輩さんでしたか、それなら昨日からいてもおかしくないな
多分、腕時計も何処かで買ったのだろう、お金の概念が存在するのか知らないが入学したら教えてくれると思う
「そうなのか、敬語とか使った方がいいのか?」
「いえ!私は大丈夫ですよ!ですが種族や世界によっては上下関係を気にする方もいますので、そこは気を付けて下さいね!」
そうか、種族、又は世界によっても文化は異なると言うのは日常生活にも影響するよな
「教えてくれてありがとな」
「いえいえ!」
「それにしても、この格好は膝が痛いな」
俺は一回立ちあがる
延びをしたり、腰を捻ったりとストレッチしていると、廊下の端にある消火用散水栓に目が行く
あの学校によくある誰もが一回は押したくなる火災が起きた際に押す奴だ
正確には、その上にあるものだが
「・・・これは違うのか?」
銀の腕時計を手にミルルに見せる
「それです!よく見つけましたね!」
ミルルの身長では見えない位置にあったので仕方ない
「誰かが拾って置いといてくれたんだろな」
「助かりました~!このご恩は何時か返しま」
ミルルの言葉はいい終えることは無かった
なぜなら、外で爆音が響いたからである
「な、なんだ!?」
俺は窓に行き、音のした方をみる
すると遠くの方で先ほど俺を殴ったエルフと竜人?っぽいのが何かしていた
「はー、またですか!これだから新入生は!」
「私は行きますね!ありがとうございました!」
そう言うとミルルは三階の窓から飛んでいった
いや、飛び降りた訳ではなく空を飛んで行ったのである
「え~・・・ファンタジーだな」
魔法?もあるみたいだ
向こうがどうなったか気になったが面倒なので、その日は散策も程ほどにして帰ることにした
因みに、その日の夜に学生寮の廊下にエルフと竜人が正座させられていた
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