異世界専門学校
宮沢しゅう
死後の世界
「・・・どこだ」
そこは真っ白で何も無く周りを見渡しても白い世界が永遠と続いているだけだった。
床に立っている感覚はあるので重力がない訳ではなさそうだ。
しかし、感覚はあるのに見下ろしても自分の姿は見ることは出来ない。
「透明人間みたいだな」
することも無く、じっとしてても暇だったので何もない空間を歩いてみる。しばらくすると間の抜けた声が聞こえてきた。
「すみませぇ~ん!! 遅くなりました~!!」
パタパタと小走りでやって来たのは観るからに女神って感じの服装をした金髪ロングヘアーの幼女だった。
「なんだ、ただの幼女か」
「よ、幼女じゃありませんよ!!失礼な!!」
「え、違うの?」
「違いますよ!!」
頬っぺたを膨らませて怒っているが、まぁどうでもいい
頭をボリボリとかきながら聞いてみる。
「で、死んだんだよな? 俺」
一瞬キョトンとした顔をした女神っぽい幼女は微笑んで答えた。
「そうです、斉藤 勝さん。貴女はお亡くなりになりました。」
俺はつい先程、病院のベットで死んだのである。
俺、斉藤さいとう 勝まさるは死んだ。
死因は寿命による衰弱死である。特にトラックに轢かれたとか、通り魔に刺されたなどの特殊な死に方はしておらず、家族に見守られて幸せな最後を迎えた。
生前にしたことと言えば研究室に篭り細胞の活性化を調べていた位である。
生前の記憶を思い出していた俺に女神は
「お分かりだと思われますが私は女神です。決して!ただの!幼女!などでは御座いません。」
先程の発言を根にもっているのか、やけに強調して言われた。
「勝さんには天国権、または転生権が与えられています。」
「天国権? 転生権?」
幼女女神によると
天国権とは清き心をした者が天使になり女神の仕事をサポートして天界で生活する権利
転生権とは人類に多大な貢献をした者が生前に生活していた世界と異なる世界に転生、つまり生前の記憶をもって異世界に生まれ変わる事が出来る権利
らしいのだが・・・
「質問いいか?」
「はい、どうぞ!」
ニッコリと答える女神
「二つの権利のことは理解したんだが、転生権は多大な貢献をした者に限ると?」
「そうです!」
清々しく答える女神
え?生前で多大な貢献をした覚え無いんだけど!細胞の研究してただけなんだけど!?
まさか、俺の研究していた細胞が後に人類に貢献することになるのか?そうなのか?
「ち、因みに俺が生前にした貢献ってなんですか?」
理由がわからず引きつった顔で質問する俺
「ちょっと、待って下さいね。う~んと・・・」
何やら書類を観ている女神をじっと見ながら答えを待つ、書類がどこから出てきたの? 女神なのに書類?とかは考えない、だって死後の世界だから
「あっ!わかりましたよ!21才の時にグワム旅行で蚊を殺したことですね!」
「・・・・・・」
幼女の続きを待つが、それ以上返事は帰ってこない
「・・・え?それだけ? つ、つまり俺が人類の三分の一を救ったと?」
「はい!ですから勝さんには人類に多大な貢献をした事になっております!」
幼女スマイルが眩しい
まさか自分が知らない内に人類を救っていたとは思いもよらなかった。
何か納得いかないが棚から牡丹餅って事で受け入れる事にする。
「それで? どちらになさいますか?」
幼女が上目遣いできいてくる、俺は特殊な趣味は無いので可愛いとは思わない・・・思ってないからな!
「じゃあ、転生権で」
俺は悩む間も無く答えた
だってねぇ?転生だよ?悩む必要はない。
若い頃に何冊も似たような物語を読んでいただけにこの先は予想が付く。
この幼女女神がチート能力を授けてくれて大冒険を繰り広げる、女神の下で働くよりも楽で楽しいに違いない。
「転生権を使用いたします。お間違えないですね?」
「はい!」
「では少々お待ち下さい」
チート能力を早く選びたくて俺は心弾ませて待っていた。すると女神は用事が終わったのか笑顔になって答えた。
「神々の認証が終わりました。では勝さんには入学手続きを行って頂きます。」
「はい!・・・・・・え?」
俺は何処かに入学することになった
「ちょ、ちょっと待ってくれ」
入学ってどうゆう事だ?俺は転生することが出来る筈では?てかどこに?
「勝さんには転生するために異世界専門学校に通っていただきます。」
戸惑っている俺にしれっと答える女神
「異世界専門学校?」
「はい、そうです」
当たり前の様に答える女神
自分が予想していたのと違う展開に焦っていると女神が説明してくれた。
「異世界転生するに当たって言語、常識を学び、そして適正する世界を見付ける為の学校になります。」
言語や常識を学ぶ?適正する世界?もう何がなんだか分からなくなってきた。
続けて女神が説明する。
「まず、転生して直ぐに記憶が戻る訳ではありません。約10才~15才の間に前世の記憶が蘇りますが、その時にそれまでの記憶は失われてしまいます。なので言語や常識はわからず困って仕舞われない為に学んで頂きます。
次に適正世界ですが異世界は合計で四つ存在しており、卒業する時の成績に応じて神々に生きていけるであろう世界を選んで頂くシステムになっております。」
「え?記憶は融合されたりとか、女神パワーで何とかしてくれないのか?しかも異世界が四つて・・・」
俺が読んでいた書籍の内容と異なる展開に戸惑っていると少し馬鹿にしたように幼女女神が答えた。
「ぷっ、記憶の融合なんてしたら脳が耐えきれないに決まってるじゃないですか。その他の世界については学校で学んで下さいね。」
「まじかよ」
自分が望んでいた異世界転生が遠いものになっていく感覚に落胆したが仕方がない。
だが、これだけは確認しないとならない事がある。
「でも、卒業後にはチート能力を授けてくれるんですよね?」
「そこは安心して下さい。ですが、授かる権利を得るには成績上位に入らなければなりません。皆に授けていたら世界の秩序が乱れて成り立たなくなりますからね!」
チート能力が無いと転生する意味が無いと思っていた俺は少し安心する。
「その他の質問は入学後に先生に聞いて下さいね!私も忙しいので貴方ばかりに構っていられませんから、意識が戻ったら机の資料に目を通して下さいね!」
「わかったよ」
「では、150名の同級生と競いあって成績上位を目指して頑張って下さい。」
俺は薄れ行く意識の中でこれからの事を考えると少し複雑な気分になっていた。
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