紅色 ~傷~ 6
「好きな奴いるか?」
と
神無月が何か話題はないのかと訊いてきて、脳をフル回転させ、神無月も満足のいく話題を脳内ネットワークにアクセスする。
検索した結果、色々な話題の記事が次々に表示された。
『都市伝説!真夜中を歩き回る首無し!』
『今日も今日とて混沌としたこの街で、君が安全安心に過ごせるようにスタンガンをプレゼント!今なら送料無料!お☆得☆だね。お電話はこの私、ヤッカイさんにヨロ!』
『この人口都市で一番TUEEEE奴は誰だ!』
『約半年前に起こった失踪事件の被害者は現在どこへ?未だ明かされない事実』
『エロゲー「僕は明日死ぬから男の娘を今日も襲う」が半額ですよ〜!(マジで!?)』
『切り裂き魔事件の被害者──……』
『ちくわ大明神』
『唐揚げ食べたい』
etc──……
ん〜、途中から明らかに可笑しな内容の記事があった気がする。それと、『僕は明日死ぬから今日も男の娘を襲う』が半額セールになるの忘れてた。放課後そのまま買いに行くとするか。
脳内検索したお陰で、大事なことを思い出せたことに感謝しながら、今から話す
あ〜、こんな朝っぱらから物騒な話題は勘弁だし、一番TUEEEE奴とかエロゲーの話しとか興味なさそうだし、オレも今日のニュースはざっとしか観てないからな……。
すると同じクラスのある女子のことを思い出す。
あぁ〜……、これなら神無月も聴く耳持つんじゃないか。
そして、神無月に訊いた。
「好きな奴?」
言って想ったが案の定、神無月は難色を示していた。
そのことに苦笑するが、
「ああ。オレもさどんな話題がイイかな〜って考えてたんだけど、よくよく考えたらオレ達って現在高校二年生絶賛進行中じゃん?」
「よくよく考えなくてもわかるだろ、それくらい……。葉柱は僕を差し置いて高校三年生でもしてるのか?そう言うんなら、僕は葉柱のことを『
神無月は頬を緩めて葉柱に突っ込む。
その顔は悪い顔で、明らかに葉柱をおちょくっている。
「子供っぽいな」と内心で思いながら葉柱は話しを続ける。
「オレ達は現二年生。二年生こそ
「そうか?」
「そうだよ。考えてもみろ、高一の頃は周りが知らない奴らばっかりで一つのグループ確固として出来上がるのに三ヶ月ぐらいはかかってただろ。高一の体育祭は最初の雰囲気は悪かったけど
神愛乙女のという言葉に神無月がビクッと肩を
「高三はやれ受験、やれ志望校、やれ推薦、やれ将来みたいなやることなすことに一々意見入れてくるし、クラスの奴らも何やかんやでここの高校を受験して受かって入学して来た頭のいい奴らだからな、高三にもなれば必然に会話することも少なくなってくるだろうし」
葉柱はやれやれと肩を
これだから優等生は。馬鹿にはしてないが茶化すようなな口調で言う。
神無月も 「それもそうだな」と同意する。
「だろ?ならば、いつ青い春を感じるのか!」
「青い春……って」
「それは今だよ!今!現在!NOW!現在進行形なんだよ!高二の今この時が青い春をこの身全身に感じるの時なんだ!そして、青い春のメインと言えば──春……
「つまり、僕達は恋愛──青い春を感じるべきだと。そう言いたいのか?」
「Of course!greatだぜ神無月。わかってんじゃんよ。それでこそオレの親友」
「いきなり親友とか恥ずいこと言ってくるなよ。よくもそんな恥ずいことを真顔で言えるよな葉柱は」
神無月は葉柱のそういった言葉を恥ずかしげもなく言える度胸に感服する。僕ならこんな人目が沢山の場所で、それも面と向かって言うことはかなり度胸がいることだ。
「お、照れてるのか神無月〜。愛いやつのよの〜お主は。女装しても案外イケんじゃね?」
「だとしても、断固としてお断りさせて頂くよ。誰が好き好んで女装なんて男としての尊厳をなくしかねないことをしなきゃいけないんだよ」
「ま、そうだわな」
神無月の女装は気にはなるがそれを無理矢理したならば、神無月は当分葉柱とは口を聞いてくれなくなる。
それも青春の一ページかもしれないが、それはまだ先のことになりそうだ。
「話題提供者である葉柱幸太郎さんには、青い春ってのがあるのか?」
神無月は顔色を窺うようにこちらを見る。
恋愛経験が極端に少ない神無月は自分の周りで最もリア充に近い人間である葉柱に彼女がいるのか気になった。
もし、いるのならこれから会話する際のネタになるなと思いながら葉柱の
葉柱の目が大きく開かれる。
そして何かに思い耽るように窓の外を眺め、
「ッぷ、ハハハ。いないよ。今は」
どこか悲しそうな顔をしていて、とても印象に残るそんな乾いた笑いだった。
「そ、そうか。昔はいたのか……」
「ハハハ。そんな大層なもんでもないぜ。彼女っても、他の奴より仲が良かったり、一緒に出掛けたり、遊びに行ったりする程度だからな。彼女よりも、親友の分類に入るかも」
「それは彼女に入るのでは」と突っ込みそうになるのを自制した。この話はあまり茶化してはいけないものだと直感的に感じた。
神無月はこれ以上この話に踏み込んでいいものかと悩んでいると、
「神無月にはいないのか……好きな奴?」
話がそれ続けてやっと戻ってきた最初の話題を葉柱が神無月に問う。
面白そうに神無月を見るが、その顔には先程までのどこか疲れた顔が残っていた。
正直に言うべきだなこれは。
茶化したり、暗にふざけてイイ場面ではないことは鈍感な神無月にも流石にわかった。
「僕もいないよ。絶賛募集中だ。胸の大きさは問わないけど、僕が興奮するようなパンティーを履いている女の子がイイな」
茶化さないとは決めたものの、それでも場を和ますために軽い冗談めかして言う。
葉柱もそのことに気付き、そんな空気にした自分自身に僅かに責任を感じる。
「ほ〜、絶賛募集中か。オレも今はフリーだし、もうすぐ夏休みだしな。ちょつくらナンパでもしてくるか。神無月もどうだ?」
「このクラスでやるなら、それはナンパじゃなくて口説きだろ。後で痛い目にあっても知らないぞ、こんな朝っぱらから」
「大丈夫だって!オレはなんてったって、街中で美しい女子大生達をナンパしたら『アハハハハハハハハ。私達をときめかしたいなら〜、後10万年は遅いよこのフツ面』って言われたほどの将来有望な優良物件だぜ。朝っぱらからでも彼女達のハートを射抜いてみせるZ!」
「お前のそれはポディシブ過ぎて逆に恐くなるわ」
神無月の辛辣な言葉を意に返さず、クラスの内を見渡す。
ターゲットを探していると、教壇側のドアから子の教室に入ってくるとある女子を発見する。
葉柱は「おお〜」と感嘆の声を
「神無月!神愛乙女が来たぞ!」
葉柱のその言葉に身体が固まる。
イヤな感情がぐつぐつと湧き上がる。
背中に冷たいものを感じながら、神無月は神愛乙女を凝視する葉柱に冷ややかな視線を送る。
「よっしゃ!オレ、これから神愛乙女をナンパ……口説いてくるぜ!そして、彼女とワンダフォーな──」
「駄目だ」
葉柱の左手を神無月が掴む。
神無月の目がどこか必死で、色の付いた瞳が
神無月のその必死な姿に葉柱は後ずさる。
良く見ると掴んでいる右手も震えていた。
神無月……お前……。
「──は!?ご、ごめん。急に強く握って」
「ハハハ。イイってことよ。野郎に握られるのも悪くないもんだぜ」
「ホントにごめん。こんなつもりじゃなかったんだ。ただ葉柱にいつも通りに注意しようもしただけで…………」
頭を抱える神無月に葉柱は心配を寄せる。
「さっきのは葉柱ジョークだぜ!オレみたいなチャラ男が天下の神愛乙女を口説こうなんて身の程知らずことをするかよ」
「安心しなって」と言い、神無月の肩にポンと置く。
葉柱が苦笑いを浮かべているのに神無月は気付かなかった。
いつもの神無月らしくなかった。
何とも言えない空気が二人の中で流れる。居心地の悪い、ムシャクシャする、焦れったいそんな空間が覆う。
それと同時、2限目の開始の合図のチャイムが鳴った。
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